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パーが拾えるピッチ&ラン。寄る秘密は“入射角”と“初速”にあった

PHOTO/Hiroyuki Okazawa、Kazuo Iwamura
THANKS/太平洋クラブ御殿場コース、よみうりカントリークラブ

セカンドでグリーンをとらえられなくても、アプローチを寄せることができればパーを取ることができる。そのためには、基本のピッチ&ランをしっかりとマスターすることが不可欠。そしてピッチ&ランを確実に成功させるためのキーワードは「入射角」と「初速」を常に一定することだという。アプローチに一家言持つ宮本勝昌・武藤俊憲両プロに話を聞いた。

宮本勝昌
みやもとかつまさ。藤田寛之プロとともにチーム芹澤を牽引するいぶし銀。ツアー通算12勝

武藤俊憲
むとうとしのり。ドライバーからアプローチまで計測器を使用したスウィング作りに余念がない

「“入射角”と“初速”がいつも同じ」
これが寄せの最重要ポイント

――プロが考えるアプローチで重要なことは何ですか?

武藤 毎回イメージ通りの球が打てることです。そのためには、いちばんオーソドックスなピッチ&ランで「入射角と初速」をそろえることが大事になります。この2つの数値が毎回そろっているということは、クラブとボールの当たり方がいつも一緒だということです。

宮本 僕も同じ意見だね。データを見てもわかるけど、アマチュアの人はクラブが上から入ることもあれば下から入ることもある。つまり打ち方がバラバラ。それだと、たまたま寄ることはあっても、寄らないことが多くなっちゃうもんね。

武藤
 宮本さんは入射角はどれくらいをイメージしていますか?

宮本 数値はそこまで意識しないけど、結果的には3度前後上からになっているね。緩やかなダウンブローでボールをとらえているということ。初速はHSとほとんど変わらないくらいの数値になるといいかな。ただ、あまり数値にこだわらず、“毎回そろっている”ことを大事にしてほしいね。

武藤 みなさんは、練習のたびに数値を測ることは難しいと思うので、出球の高さがそろっているかチェックするのがいいですね。

宮本 そうだね、高さがそろうということは入射角と初速がそろっていると思っていい。

武藤 そろわない理由は大きく分けて2つあります。1つが手先を使うこと。手を使うとクラブが急加速や急減速してスウィングスピードが一定になりにくい。だから初速に大きな差が出てしまうんです。もう1つが、「寄せたい」や「ミスしたくない」といった気持ちの部分。この気持ちが強く働くと、打ちにいったり、合わせにいったりして入射角が安定しません。

宮本 そういう意味でもスウィングを固めることが大事だね。

武藤 そうですね。これから2人で“寄るピッチ&ラン”の打ち方をじっくり説明していきます。

30Yをピッチ&ランで5球打ってもらった結果……
プロは入射角・初速ともほぼ一定!

プロ2人とアマチュア50人に、30Yのアプローチをピッチ&ランで5球ずつ打ってもらい、弾道計測器でデータをとった。クラブは全員、こちらで用意した58度のウェッジを使用。すると、プロのデータは下記のとおり、入射角・初速の数値がほとんど変わっていなかった。入射角は2人とも3.5度前後のゆるやかなダウンブローであることがわかる。

宮本プロの場合

1球目2球目3球目4球目5球目
入射角3.3度3.5度3.2度3.8度3.6度
初速23.0m/s23.8m/s22.9m/s23.9m/s23.5m/s

武藤プロの場合

1球目2球目3球目4球目5球目
入射角3.6度3.5度3.2度3.5度3.1度
初速23.4m/s23.5m/s24.0m/s23.6m/s23.1m/s

一方、アベレージゴルファーに挑戦してもらうと……
入射角・初速ともにバラバラ!

アマチュアゴルファー50人のうち、5球中の入射角の誤差が1度以下だったのはわずか2人。半数以上が2度以上誤差があり、5度以上誤差がある人も9人いた。初速に関しても同様にバラバラ。いかにアプローチにおいて入射角・初速が安定していないかがわかる。

小林広平さん(28歳・平均スコア100)の場合

1球目2球目3球目4球目5球目
入射角6.8度3.8度1.2度5.8度-2.1度
初速32.3m/s24.4m/s18.9m/s29.8m/s15.3m/s

入射角をそろえるには
「右手首の角度キープ」が重要

安定したアプローチをするためには「入射角と初速」をそろえることが重要だと2人のプロは口を揃える。まずは宮本勝昌プロに「入射角」のそろえ方を教えてもらった。

「入射角がバラつく一番の原因は、手先を使うこと。手先を使わないためには“右手の角度”を保つことが大事です。アドレスでややハンドファーストに構えると右手が甲側に折れて角度ができます。そこから体の回転だけで打っていくと、手首の角度を保ったままボールをとらえることができます。これだけで、入射角が安定し出球がそろうようになるんです。そして、このイメージづくりに効果的なのが、ボールをゴミ箱に入れる練習。ポイントはスウィングと同じように右手の角度をキープして行うこと。すると、手先を使わずに打つ感覚が養えます」

「ゴミ箱ポイ」で右手首を
キープする感覚を養おう

実際に打つときは
次の3つのポイントを意識しよう

<point1>ややハンドファーストに構える

ボール位置は体の中心。左手が左の股関節前に来るようにハンドファーストに構えることで、右手が甲側に折れる。この角度をアドレスで作ることが大事。またスタンスをややオープンにすることで、クラブの通り道ができ、体が回りやすくなる

<Point2>左足体重をキープ

左右の体重移動が多いと、ボールを打ちに行く形になり、手首の角度が崩れやすい。アドレスからフォローまで左足体重にすると体重移動を抑えられ、右手の角度もキープしやすい

<Point3>力を入れるのは腹筋だけ

手先を使わずアドレス時の体とクラブの関係を崩さずに、腹筋を中心に体を回す。腹筋に力を入れることで手先が余計な動きをしなくなり、手首の角度がキープできる

宮本プロのピッチ&ラン

動画もチェック!

初速をそろえるには
「胸の目」を常にヘッドに向ける

もうひとつの重要項目である「初速」。出球のスピードをコントロールするのはハードルが高そうだが、武藤プロは「難しく考える必要はありません」と話す。

「初速をそろえるのに大切なことは、リズムを変えずに一定のスピードでスウィングすることです。手先や腕を使いすぎるとスピードは一定になりません。そこでオススメなのが“胸の目”を意識することです」

胸の目とは……?

「胸に目があるイメージを持ち、アドレスからフォローまで胸の目がヘッドを見続けるように体を動かすことです。クラブを持っているのは腕であり、上半身。そしてその中心となる胸に意識を持つことで手先を使わずに振れるんです。左右の腕で作った三角形を崩さずに胸を回していくことで、急加速や急減速がなくなり、初速が安定します」

クラブを持っている上半身の中心である胸を意識し、胸がスウィング中にヘッドを見続けるように振っていく。こうすることで、手先を使わず、一定のスピードで振ることができる

振るスピードが整う3つのポイント

<Point1>肩の力を抜いて構える

肩に力が入ると、上半身に力みが生じ、クラブが減速しやすい。アドレス時にヘッドをストンと落とすと肩の力が抜ける

<Point2>軸を傾けずに回転

背中の軸が左右にブレるとインパクト時のロフトが変わりやすい。構えたときの背中の軸を意識してその場で回転しよう

<Point3>フォローで胸を飛球線に向ける

クラブを持っているのは腕であり上半身。だからこそ、その中心となる胸を意識して回していくことが重要

武藤プロのピッチ&ラン

これで完璧!
入射角と初速をそろえるドリル

打ち方はわかったが、実際にどんな練習をすればいいのか? 武藤プロは「片手打ち!」と即答。

「片手打ちは地味ですがとても効果的です。大事なのは、利き手と逆の手を使うこと。理由は、使い慣れていない手は、自らの意思ではうまくコントロールが利かないため、余計な動きをしやすいから。片手打ちのポイントは、アドレス時の腕とクラブの関係性を崩さず、腹筋に力を入れて振ること。イメージは腕からクラブまで一直線に保ったまま打つくらいがいいです。10球打って半分以上同じような出球が出れば合格です」

武藤プロおすすめ
初速安定ドリル「片手打ち」

使い慣れていない利き手と反対の手でコントロールができるように鍛える。握る強さはペンを握る程度の強さでOK。体の大きな筋肉である腹筋を意識して振ることが大事。

宮本プロおすすめ
入射角安定ドリル「コイン置き打ち」

ボールの約8cm後方にコインを置き、コインに当たらないように打つことで、適度なダウンブローで安定してボールにコンタクトできるようになる。自分のヘッド軌道に合わせてコインを置く位置を変えるようにしよう。

月刊ゴルフダイジェスト2021年3月号より