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【イザワの法則】Vol.33「サイドベンドは確かに飛ぶかも。でも1つの理論が万人に合うとは限りません」

ゴルフの世界では、日々、新しい「理論」が生まれて、流行したり廃れたりを繰り返している。どの理論が自分に合っているか、見極めるのは至難のワザ。伊澤プロは、新しい理論にどう向き合っているのだろうか?

TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)

前回のお話はこちら

「誰にでも効く」という
万能薬的な理論を期待しないこと

巷にはたくさんの「スウィング理論」があふれているので、「どれが自分に合うんだろう」と、迷っているアマチュアの方も多いと思います。ある程度キャリアを重ねると、自分の「やり方」が確立されてくるので、そこで何か新しいことにチャレンジするのは割と勇気がいることかもしれません。練習して、せっかく当たるようになったのに、少し変えたら「また当たらなくなるかもしれない」という不安が大きいことは想像できます。

そもそも、ゴルフのスウィングには、「こうすれば必ず飛ぶ」みたいな、誰にでも効く特効薬はないと思っていたほうがいいでしょう。理論的には正しいやり方であっても、それをやるのが人間である以上、体格とか柔軟性などの違いから、人によって効果もばらばらになるほうが普通だからです。見た目には理にかなったスウィングに見えても、思ったほど飛ばないとか、その逆もよくあることです。

シニアツアーには、個性的なスウィングの選手がたくさんいますが、以前、一緒の組になったことがあるアマチュアの方で、打ったあとに右足が1歩前に出ちゃうスウィングの人がいました。その方はそれでも結構、飛ばしてましたし、最終的にはベストアマになっていましたので、流行の理論とは異なっていても、自分が「これ」と思ったやり方を突き詰めていくというのも、ひとつの正しい方法だと思います。


スウィングのベースは大きく変えずに
要素を足すやり方もある

新しい理論を試す場合に、1から10まで、その理論に従わなければいけない、ということもありません。何か少しだけエッセンスを抜き出して、自分のスウィングに取り入れるというやり方でも、十分に効果が出ることは多いです。

例を挙げると、「サイドベンド」(側屈)というスウィング要素を入れるか入れないか、入れるとしたらどのくらい入れるかというのは、その人次第でいいと思います。PGAツアーのプレーヤーには、とくにダウンスウィングのときに、右サイドをギュッと強く縮める(右側屈)タイプが多く、それが飛距離に関連しているのは間違いないと思うのですが、その動きを強く入れるようとするほど、筋力と柔軟性も必要になります。

実を言うと、自分ももう少し、右のサイドベンドを入れたほうが飛ぶかもしれないと思って、並行してストレッチもやりながら、「実験中」です。今のところ、思った通りの動きができたときは少し飛距離が伸びるのですが、もっと強く縮めるのか、縮め方は今のままで他のところをどうにかするのか、さらに実験は続きます(笑)。

右サイドを「縮めよう」と意識しても、わき腹の部分を普段、意識的に動かすことは少ないですから、スウィング中の一瞬ではうまくできません。練習するなら、「ハイボール」をイメージして打つと、自然な形で右サイドが縮んでくれるはずです。ただ、中年を過ぎると、自分が思っているより柔軟性が落ちていますから、練習前のストレッチは忘れないでください。

今、サイドベンドと一緒に少しだけ意識しているのが、左手首の「掌屈」(手のひら側に曲げること)です。きっかけは、無意識にたまたま掌屈が入ったときに、ものすごく飛んだからなんですが、まだ意識してやるとスウィングがばらばらになっちゃう(笑)。こちらは、もう少し研究と実験が必要なようです。

「何を求めるかで必要な理論は変わる。
自分の筋力や柔軟性と相談しながら
少しずつ採り入れるのが賢いやり方」

伊澤利光 スイング理論
スウィングの世界的潮流 伊澤利光

どの理論も一長一短がある

普段よりも高い弾道のボールを打つ練習をすると、自然にダウンスウィングで右サイドを縮める動き(サイドベンド)の練習にもなる(写真左)。それに加えて、左手首の掌屈(手のひら側に曲げる)も使って打つのが(写真右)、スウィングの世界的潮流

伊澤利光

伊澤利光

1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中

月刊ゴルフダイジェスト2023年8月号より