【通勤GD】迷ったとき、ユハラに帰れ! Vol.20 ソール幅はやさしさの目安 ゴルフダイジェストWEB
今週の通勤GDは「迷ったとき、ユハラに帰れ!」。前回までのSWの活かし方に続けて、「フェースを開閉して使うSWだけじゃなく、どの番手にも、バウンスがスウィングに大きな影響を与えることを知っておくべき」と湯原は言う。バウンス機能を正しく理解するだけで、ナイスショットはおのずと増える。彼のゴルフ理論のひとつでもある。
前回、第19話のお話
【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。
【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。
番手が長くなるにつれてバウンスは小さくなる
湯原 まず、バウンスがあるのはウェッジだけじゃありません。バウンスはロングアイアンほど小さくて、短いクラブほど大きくなる傾向があります。
GD 確かに、メーカーによってはロングアイアンのバウンスはマイナス(スクープソール)になっているところもありますね。
湯原 クラブが鋭角に入るか、鈍角に人るかでバウンスの働きは違ってきます。そしてバウンスというものは、ヘッドが地面に当たった瞬間にフェースの向きをある程度修正してくれる役割があるんです。だけど、地面に対してフラッ卜に人れる(ヘッド軌道がゆるやか)場合は、バウンスが大きいとボールの手前で地面に当たってクラブが跳ねてしまうので、逆に邪魔になってしまうんです。
GD だから、比較的鋭角な軌道になる短いクラブはバウンスが大きくて、番手が長くなるにつれてバウンスが小さくなってくるんですね。
湯原 大ざっぱに言えば、打ち込んで打つタイプの人は、バウンスが大きめのほうがいいし、クラブを払うように球を拾っていく人は、バウンスの影響を受けにくいので、小さめのバウンスを好む傾向があります。
7Iで比較 同じ番手でもソールのカタチはこんなに違うんだ
アマチュアにはバウンスが大きいクラブがおすすめ
GD では、ターフが取れない、ダウンブローに打てない人は、バウンスが小さいほうがいいと。
湯原 いや、それはまた違う話ですよ。そういう人は、すくい打ちをしているだけです。あくまでも、いま話しているのは、ノーマルにボールを打つ人を前提にしています。プロほどのヘッドスピードはなく、ボールにきっちりとコンタクトできない、アベレージレベルのアマチュアでしたら、私は相対的にバウンスが大きいクラブをおすすめしますね。
GD 多少、ダフリ気味でもソールが滑って当たるし、ソールが滑っている間にフェース面の向きも矯正してくれるからですね。
湯原 そのとおりです。いま、プロのなかでもロングアイアンの代わりにユーティリティ(UT)を入れる選手が増えていますよね。どこにロングアイアンとUTの差があるかと言えば、最も大きな違いはソールの幅なんです。ソール幅の広いUTは、多少曖昧に打ち込んでも、ソールが滑ってロフトを確保してくれます。
湯原 ソール幅の狭いロングアイアンの場合は、もっとシビアにボールとコンタクトしなければなりませんし、ヘッドスピードも必要になります。もっとも、最近のロングアイアンは昔と比べて、ソール幅が随分と広くなっていますけどね。UTとロングアイアンは、ソール幅の違いでやさしさに差が生まれているわけです。
GD クラブ設計家の喜多和生さんは、「バウンスは角度の数値で表示されているけれど、本来はソール全体のボリュームで機能を判断するべきだ」と言っていました。ロングアイアンとUTは、ソール全体のボリュームからすると、UTのほうがバウンスとしてのソール機能が大きいということですね。
湯原 そうです。バウンス角が12度と大きめのSWでも、ソール幅が狭かったらバウンスの機能は少なくなってしまいますから。
GD クラブのカタログでは、ソール全体のボリュームについての表記はほとんど見かけませんね。買うときはカタログデータだけに頼らず、実際に手に取って試してみないとダメですね。
身の丈に合ったクラブを選ぼう
湯原 私も、年齢とともにヘッドスピードが落ちてきて、微妙なクラブの操作が難しくなってきました。だから、以前はハウンスがほとんどないアイアンを使っていましたが、今では多少、バウンスがあるアイアンに替えています。さらに、ウェッジはソール幅を広くしています。たとえば、PWでもバンカーショットが打てるぐらいにハウンスを大きめにしています。
GD 湯原プロの場合、アイアンとウェッジでは、ソール形状が違うんですか?
湯原 前に説明したとおり、重心距離やバランスなどは統一していますが、ソールに関しては、それぞれの機能を発揮できるように、アイアンとウェッジで分けて考えています。
湯原 昔はSWで50~60ヤードの距離を打つとき、クラブをポンッと落とすだけで対応できたんですが、年齢とともに同じ打ち方では難しくなってくるんですね。それで、ある程度ソール幅がある52度とかPWで対応するようになってきたんです。
GD それは、やはりボールにシビアにコンタクトしなくても、幅広ソールの持つ矯正機能でカバーできるからですか?
湯原 ええ。アイアンも昔に比べれば、ソール幅が倍ぐらいになっています。それだけソールが滑りやすいので、ダフリに対しての許容量が増えているわけです。それなのに、ウェッジだけが昔のままではナンセンスですからね。ところが、アマチュアの方は、どうもツアープロが使っているという理由だけで、難しいツアーモデルを選んでしまう傾向があるんですね。
湯原 ロフト58度のSWや60度のロブウェッジは、なるべく地面からの抵抗を受けないように設計されているし、極力飛ばないように作られているから、アマチュアには難しいはずなのに。
GD かなりの練習量がないと使いこなせない、難しいクラブなんですね。それに、60度のウェッジは基本的にハウンスがあまりついていませんよね。
湯原 だから60度のLWを人れているプロは、バンカーよりもグリーン周りで使うことを想定しているんです。高く上がって距離が出ないし、地面が硬くてもボールが拾いやすいようにリーディングエッジが出ています。
GD 下が硬いとバウンスは邪魔になってしまいますものね。そして、リーディングエッジはいわゆる出っ刃になっているんですね。
湯原 アメリカのトーナメントコースは、どんどん難しくなってきています。まずはグリーンが硬くて、速い。さらにグリーン周りも、昔は深いラフだったのが、今はツルツル状態に刈り込んで、グリーン上で止まらなかったボールが転がり落ちていくようになりました。フェアウェイもやはり、短<刈り込むために硬くなっています。こういうコースセッティングのときに初めて、バウンスが小さくて、リーディングエッジが出ているプロ仕様のLWが活躍するんです。
GD 我々が日ごろプレーしているコースでは、そんなセッティングは考えられません。
湯原 フィル・ミケルソンに代表されるようなロフトの寝たLWを使う選手は、かなり特殊な技術を磨いて、それを使いこなしているんです。ボールが硬い地面の上にあって、落とし場所も硬くて速い。しかもピンはすぐ手前に切られている。そんな超高難度の状況はアメリカツアーにしかない。そこで勝つために、彼らはその状況に合った道具を選び、テクニックを磨いているんです。
湯原 アマチュアがそういう場面に遭遇することはまずないし、ここまで極端に難しくなくても、自分のレベルにとって難しい状況がめぐってきたら、グリーンに乗せるだけで十分だと考えるべきです。
フィル・ミケルソンのロブショット
GD でも、ミケルソンが使っているというだけで、やっぱりバッグに入れたくなるのが、我々アマチュアの心情でもあるんですよ。
湯原 それは私がどう言っても仕方ありませんけど(笑)。プロアマでアマチュアの方と回っていると、「私はSWのアプローチができないんです」と言っている人に限って、60度のLWとか58度のSWを持っているんです。「SWが使えない」というより「使えないSWを持っている」と言ったほうがぴったりでしょう。
週刊GD2013年より
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