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Dr.クォンの反力打法 Vol.31 パワーを倍増するよりもモーメントアームを2倍に!

スウィングスピードを高めるためには、前後軸の回転=体の縦回転を重視すべきとクォン教授。では、その縦回転の力を効率よく高めるには……?

【語り手/クォン教授】
ヤン・フー・クォン。テキサス女子大学教授。専門はバイオメカニクス。生体力学的に理に適ったスウィングを研究。教え子にタイガーの元コーチ、クリス・コモらがいる

【聞き手/吉田洋一郎プロ】
よしだ・ひろいちろう。D・レッドベターをはじめ、世界の名だたるコーチのもとを訪れ、最新理論を直接吸収。日々探究・研鑽に余念がないゴルフスウィング研究家

吉田 回転力の強さは「地面反力の大きさ」×「モーメントアームの長さ」で決まると以前伺いましたが、地面反力とモーメントアーム、どちらを重視するのが効果的でしょうか?

クォン どちらも大切だが、モーメントアームを長くするほうがより効果が高いと思う。

吉田 ナットを回す時のスパナの柄の長さがモーメントアーム、スパナを押す力が地面反力でしたね。スパナを強く押すよりも、柄の長いスパナを使ったほうが効率的だと。

クォン そのとおり。なぜなら、1人の人間がダウンスウィングの初期の段階で生み出すことのできる地面反力の大きさには限度があるから。ダウンの初期段階では、地面反力の大きさはゴルファー間で大きな差がない。一方で、モーメントアームの長さは大きな差が出る。たとえば、あるゴルファーが他のゴルファーの2倍も強い地面反力を生み出すことは不可能だが、2倍の長さのモーメントアームを作り出すことはできる。

吉田 モーメントアームの長さのほうが、より改善の余地が大きいということですね。

クォン 逆に、ダウンの初期段階に限って言えば、地面反力はそこまで大きくないほうがいいと思う。

吉田 え? 地面反力も回転力に関わる以上、大きければ大きいほどいいのでは?


切り返し直後は地面反力は小さいがモーメントアームは長い。

切り返し直後は地面反力は小さいがモーメントアームは長い。切り返し中のBの段階では、地面反力は体重よりも小さいが、左足の踏み込みにより、地面反力の傾きが増し、モーメントアームが大きくなる

Dの段階で地面反力が最大になり、体が回転する

クォン 地面反力のベクトルを、横成分と縦成分に分けて考えてみよう。横成分の力が同じ場合、縦成分の力が大きくなると、モーメントアームの長さはどうなる?

吉田 矢印の傾きが垂直に近くなるから、モーメントアーム(r)は短くなりますね。

クォン では、縦成分の力が小さくなると?

吉田 モーメントアーム(r)が長くなった!

縦方向の力が小さいほどモーメントアームは長くなる

モーメントアーム(r)は体の重心(G)から反力のベクトル(F)までの垂直距離。縦方向への反力が小さいほどモーメントアームは長くなるのがわかる。これにより、小さい力で強い回転力を生み出すことができる

クォン つまり、積極的に体重を下方向にかけないほうが、モーメントアームは長くなるということだね。

吉田 なるほど。ダウンのいちばん初期の段階では、まだ体重はそれほどかけずに、モーメントアームを長くすることで強い回転力を生み出す。でも地面反力のベクトルが体の左サイドを向いたままだと、体が左に流れてしまうから、途中で下方向へのプッシュに切り替える。こうすれば、ある程度の回転力を維持しつつ、体が左に流れるのを防ぐことができますね。

Vol.32へ続く | 反力打法TOP

Dr. クォン&吉田洋一郎
『驚異の反力打法』

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