【ゴルフ野性塾】Vol.1769「飛距離とは、体の動きの速さ」
古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。
今日2月2日、
木曜日
本稿、福岡市中央区赤坂の15階マンションの居間で書いております。
現在時午前11時35分。
窓の外、厚い黒っぽさと白銀混じりし雲が横一面に広がっている。20分前、東と南の空はそうだった。
360度同じ空模様かと気になったので、西と北の空を見に行った。
同じだった。空一面、雲の色、入り混じっていた。
カラス二羽、飛んで来た。
横一線、縦一線で飛ぶ二羽のカラス。夫婦ガラスとゆう気はした。
穏やかな日だ。
昨日は暖かかった。今日も暖かくなるとテレビの予報が言っていた。
これより福岡市内天神へ行きます。
行きはバス、帰りもバス。
天神で何をやるかと申せばカフェラッテ飲むだけ。気楽気儘な日々を送っています。
体調良好です。
それでは来週。
後頭部に両手を当てて、回転30回。
野球経験者の友人がとてつもなく飛ばして、軽く50ヤード以上置いていかれます。飛ばしのコツを聞くと、腰を入れて打つそうですが、野球経験のない自分はその感覚がわかりません。友人と同じとは言いませんが、250ヤード飛ばすための練習法はありませんか。(神奈川県・佐々木隼人・32歳・ゴルフ歴3年・飛距離220ヤード)
何事にも人それぞれの領分あると思うが、感覚も人それぞれは存在すると思う。
体型も違えば育った環境も違うのだから当り前と申せば当り前の話じゃある。
均一の育成と均一の結果求めるは無理なる話だ。
人の生きる途は舗装道路じゃない。
人、生きる途は舗装無し、均した跡無しの地ベタ道だと思う。
だから人それぞれだ。
貴兄は友人と同じ感覚を模倣しようとするのか。
体が違う。考えが違う。これ迄、生きて来た中で得た経験が違う。
型の摸倣は出来る。
何故なら型の摸倣に感覚は要らないからだ。
スウィングの摸倣に感覚を入れてはいけないと思う。
入れれば人の進化は止る。
入れなければ模倣相手を超えて行く事は出来る。
多くの方は模倣に感覚を入れようとした。そして挫折だ。
断り置くが、挫折と失敗は同じじゃない。
挫折は同じ目標に対して再びの工夫と挑戦力を持つが、失敗は新たな生き様を見つけねばならぬ性質のもの。
混同は駄目だ。これ迄、挫折と失敗の混同は多かった。
私の指導を受けた者、幾人いるか分らないが、プロテストに通った者は120名を超していると聞いた。
ジュニア塾生、塾生以外の者を含めた合格者数であるが、挫折と失敗の違いを体で教えて来たのが、120名に達したのではないかと思う。
私はそれ迄、繰り返して来た体の鍛え様とスウィング指導、修正しなかった。
同じ鍛え様とスウィング指導、球の叩き様を繰り返させた。
この繰り返しは挫折した者の日々に自信を与えた。
変化すれば変化に対しての不安、疑心、そして自己否定が生じる。故に私は変化を与えなかった。
この頑固さ一徹さがプロテストへの一直線の途を彼等に与え、120名の合格者が生れたと思う。
順調にプロテスト通った者は120名中5名迄であったと記憶する。
120名中の5名を目指すのか、120名中の115名を目指すのかは人それぞれなれど、115名はやる気、負けん気、へこたれん気とゆう覚悟を持ち続けて来た者であった。
現在、女子ツアー界、塾出身者でシード持つ者は上田桃子、笠りつ子等3名。
ツアー参戦中の者は10名いると記憶するが、皆、諦めの悪い者ばかりである。
諦め悪きは美徳と私は考え、教えもした。
私自身が諦め悪き男である。
私は引退なる言葉、一度も使った事がない。原稿に於ても講演会に於ても友人知人との会話の中に於てもだ。
生涯現役なる一言、美しく逞しく、背筋の伸びた言葉だと思う。
私は陶器磁器に興味を持つが、作品の持つ力強さに一番強い興味持って来た。
私の知る限り、練り上げ、造型し、色を与え、焼き上げて来た作品に私の好む力強さを持っていた作陶家は4名。
石川県九谷光崖窯(くたにこうがいがま)の高明と聡文親子。
岐阜美濃北斗窯の塚本治彦。
熊本小代焼(しょうだいやき)ふもと窯の井上泰秋の4人だ。
彼等と会うのは楽しかった。
4人に共通するのは人の善さであった。
その人の善さが力強さを生んでいる様な気はした。
そう多くの窯に行った訳じゃないし、旅の途中、街中の陶器磁器店の作品を見て、力強さを感じた時、陶工を訪ねて窯元に行った。そして窯元で彼等の作品の前に立ち、陶工とも出会ったが、4人は人に与える安らぎを持っていた。
街中の店に展示してある作品、4人以外の作陶家も力強さと美しさと気品持つ人ばかりだったが、私の欲する力強さじゃなかった。
好みも人それぞれ、相性も人それぞれ、出会いの縁とその後の付き合いも人それぞれであろう。
私は縁に恵まれ、運に恵まれたと思って今を過す。
私は生れ変れるものならば和菓子職人かプロゴルファー、そして物書きになりたいと思う。
しかし、生れ変るなんて事はあり得ない話だ。夢想ですな、夢想。
でも和菓子職人かプロゴルファー、そして物書きになりたい。
私の父は和菓子職人だった。
プロゴルファーは私が選んだ職業であり、物書きは人の出会いが与えし幸運だった。
作陶家はどうだ? との疑問もあると思うが、私にとっての陶器は眺め、手に持って力強さを感じるものであり、4人との出会いは彼等の作品に引き付けられた幸運であったと思う。
感覚だ。
人の縁も世間との縁も感覚が存在するのではと考える。
250ヤード、腰を入れる、あるいは腰を切るとの感覚で打つは球技経験者に出来る事。
経験なしの方に出来る体の使い様ではないと思う。
肩を使いなさい。
肩を使えば体重移動と回転態が得られる。
バックスウィングでは右肩の回しを意識し、ダウンスウィングでも右肩の動きを意識し、フォローでも右肩の動きの速さへの意識が要る。
肩の動きにスピード生じればスウィングは速まる。
飛距離はクラブヘッドのスピード。そのスピードは体の動きの速さが与えてくれるもの。
貴兄は220ヤードから250ヤードを目指す人。
30ヤードは生半可な気構えで得られる距離ではない。一途一徹は必要だ。
組んだ両の手を自分の頭の後頭部に強く当てる。
スタンスは肩幅の半分。
そして両の手で後頭部を強く押したまま、体の上半身を右、左へと回す。腰と膝は上半身の動きに任すだけ。
右肩と左肩は距離は変えないで回す。30回で充分。30回以上は必要ない。沢山やりゃいいとゆうもんじゃない。
大きな数で大きな結果を望むより少ない数で少ない結果を求めるが上達のコツと考えて貰いたい。大が大を生み、小が小を生む事は多い。
スウィングスピード増すには30回あれば充分だ。
それ以上だと30回が与えし体の動きを壊してしまうと思う。
やり過ぎはよろしくない。
それで体の回転力は増す筈だ。
まずは3ヤードの飛距離増を目指して貰いたい。
私の経験で申すが、そこから先はその時が教えてくれた。
以上です。
坂田信弘
昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格
週刊ゴルフダイジェスト2023年2月21日号より