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【ドライバー“素材”進化論】<前編>パーシモンからメタル、チタン、カーボンへ。素材の変遷を振り返る

2022年、クラブ開発をリードするテーラーメイドからカーボンフェースのドライバーが登場。ドライバーの進化は新たなステージへ向かうのか? そこで今回はドライバーのヘッド素材として注目されるチタンとカーボン、それぞれの強みと今後の進化を探ってみた。

PHOTO/Tomoya Nomura、Hiroaki Arihara、Tsukasa Kobayashi

解説/松尾好員

小誌連載「ヘッドデータは嘘つかない」でおなじみのクラブ設計家。セベ・バレステロスをはじめとするトッププロのクラブを手掛けた。ジャイロスポーツ主宰

素材の変化がクラブ設計に
革新をもたらしてきた

現在のドライバーは460㏄の大型ヘッドが当たり前だ。だが、ここにたどり着くまでにさまざまな進化を遂げてきた。素材だけで見てもパーシモン(木製)からメタル(ステンレス)へと変わり、チタンやカーボンへと移行している。ドライバーにおける素材の役割とは何か? クラブ設計家の松尾好員氏に聞いた。

「素材の変化はクラブ開発においてとても重要です。素材が変わることでヘッドの大型化が進み、設計技術(デザイン)や製造技術が大きく進歩してきたからです」

ここでドライバーヘッド素材の歴史を振り返ってみよう。まずは1980年代に入るタイミングで起きた「メタル(ステンレス)時代」だ。1979年にメタルヘッドを発表したのがテーラーメイド。海外で火がついた「ツアープリファード」が日本でも大ヒット。全米オープン2連覇のC・ストレンジ、尾崎将司など、トッププロが多数使用したことで有名に。


1980年代前半は、まだまだパーシモン全盛であったが、そのタイミングで日本メーカーのヤマハ、ダイワ、ミズノの3社から「カーボンヘッド」が発売された。実はカーボンウッドは日本が元祖なのだ。その後、1990年にブリヂストン「J‘sメタル」が発売。マスターズに出場していた尾崎将司が使用したことで注目が集まり、当時のニューヨークタイムズに記事が掲載され、大きな話題となった。同年にはミズノから世界初のチタンヘッドが登場し、いよいよチタンの時代に突入していく。松尾氏が当時を振り返る。

「テーラーメイドのメタルヘッドはプロが使用し、スピンが大幅に減ってかなり飛距離が伸びましたね。そしてチタンヘッドの時代へ。200、250、300㏄と体積がどんどんアップ。Sヤードやグレートビッグバーサは、アマチュアにとても人気でした」

国内男子ツアーでは97年にチタンヘッド全盛に

国内男子ツアーのヘッド素材別構成比を見ると1997年に大きな変化が見られた。チタンヘッドが主流になった指証しといえる。同年の日本プロ、日本シリーズを制した丸山茂樹はブリヂストン「プロ230チタンエイト」を使用していた

チタンメタル
1996年64%35%
1997年90%9%

1995年に登場したキャロウェイ「グレートビッグバーサ」が世界的に大ヒット。そして2000年代へ。チタンドライバー全盛の時代に登場したのが、新素材として投入され始めたカーボンだ。時代を牽引するキャロウェイが2002年にカーボンヘッドを発売。チタンヘッドよりも10~15g軽量化されたドライバーはヘッドスピードが上がり、飛距離が伸びるとの触れ込みだった。実際、アニカ・ソレンスタムが使用して優勝したモデルでもあったが、市場ではあまり受け入れられなかった。

そして2003年。プロギアから初のチタン+カーボンのコンポジット(複合素材)ヘッドが発売された。現在と変わらない「カーボンクラウン+チタンボディ」という構造で、クラウンのたわみを利用することでスピン量が減るという「高打ち出し&低スピン」を実現。このモデルがきっかけとなり、カーボンのよさ(軽さ)とチタンのよさ(強度と打音)を組み合わせた「カーボンコンポジット」の時代へと移行していった。

だが、2000年以降、クラブ製造に関する規制が次々と設けられた。ヘッド体積は460㏄が上限、ドライバーの反発係数は0.830が上限などなど。クラブ開発における方向性が変化していったのだ。松尾氏は、

「チタンやカーボンなど、素材が変わったことでヘッドが大型化したり、設計の自由度が増したわけですが、現在は規制で体積も反発性能も制限があります。ですので昔ほど、素材によって劇的な進化を出しづらい状況といえます。それでも、今年発表されたテーラーメイドのカーボンフェースは軽量で強度も高く、チタン並みの反発性能を備えるなど、いい仕上がりです。今後もヘッドの反発性能アップ、ボール初速アップ、シャフト性能アップなどが、各メーカーの大きなテーマになるでしょう」

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