多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はタイトリストの『T200』アイアンを取り上げる。

見た目のカッコよさとやさしさを両立

前作に採用されたバックフェースのコア（シリコンポリマー）を進化させ、さらに中空構造にすることでカッコよさとやさしさを両立させた『T200』。トウとヒール側にタングステンを配置。コンパクトなヘッドながら挙動を抑制し、高い飛距離性能を実現した。

では、いつもどおり7番アイアンを計測していこう。数値はすべて実測値だ。クラブ長さが37.0インチと標準的だが、クラブ重量は軽量スチール仕様で424.0gとやや重いので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントが271万g・㎠と大きくなり、この数値だとドライバーのヘッドスピードが45㎧くらいのゴルファーにとって、タイミング良く振れる設計になっている。

Point1　クラブ重量は424.0gとやや重い
Point2　左右方向のヘッド慣性モーメントが2597g・㎠とT100より小さい
Point3　ネック軸周り慣性モーメントが5097g・㎠とやや小さい

上級者が好む形状でスクエアに構えやすい

ヘッドを見ていこう。形状はオーソドックスで、ネックはストレート、フェースは兄弟モデルの『T100』よりも微妙に大きいがそれでも小さめな部類に入る。ツアーモデルである『T100』の雰囲気を残しながら、少しやさしさを加えていて、中～上級者を意識しているのがわかる。そのやさしさの部分は、構造でいえば『T100』よりもソール幅が広く、またヘッド背面は樹脂プレートで蓋をされており、中空ヘッドの雰囲気を出しているところだろう。

実際に試打したところ、まずプロモデルらしくフェースの長さは短めで、アドレスではラインに対してスクエアに構えやすい。

試打クラブは7番アイアン、シャフトは『NSプロ 105T（フレックスS）』で、先側のしっかり感があり、ある程度ダウンブローに打っても耐えてくれる。ロフト角は31度と『T100』よりも3度ストロングロフトの設定で、少し飛距離を出したくなるロフトセッティングだ。それでも、シニア向けモデルのような超ストロングロフトではないので球は上がりやすく、また、軟鉄よりも硬いフェース材（SUP-10）なので打感は硬めだが、球の弾き感はいい。

小ぶりなヘッドは重心距離も『T100』同様に35.7ミリとやや短めなので、結果ネック軸周りの慣性モーメントも5097g・㎠とやや小さくなりヘッドの操作性が良く、インテンショナルにドローやフェードを打ち分けやすい。また、『T100』と同じくフェースが短いのでラフからのヘッドの抜けもいい。ただし、ソールのバウンス角は0.5度とほとんどなく、普段フェアウェイでターフをほとんど取らないスイープなスウィングのゴルファーに向いている。ヘッドは小さくてもフェースの真ん中で打ちやすいので、『T100』まではいかなくてもアイアンの原点に帰るには良い選択となるだろう。

【クラブ&ヘッドデータ実測値】

タイトリスト

T200 アイアン

松尾好員

まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰

週刊ゴルフダイジェスト2021年10月5日号より

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