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【クラブ・ノンフィクション】外ブラ人気にストップ! 国内メーカー逆襲の戦略

GDライブラリ
2020.09.18

テーラーメイド、キャロウェイ、ピン、タイトリスト、米国4大ブランドが市場をリードする現在。苦戦を強いられているのが“ジャパンブランド”である。海外ブランドと同じ開発の方向性で勝負するのか、独自路線で生き残りをかけるのか? 岐路に立つ国内ブランドの本音を直撃した。

日本の“分”の悪さ

このところクラブ市場では“海外ブランド”の人気が高い。昨年来、ドライバーの売上を伸ばしてきたピンは 「慣性モーメント」をいかに大きくするかをすべての製品開発の基本に据えてきた。同じ方向性でクラブ作りを行なってきたことが実を結んだのだ。

キャロウェイはご存知のとおり、ヘッド軽量化に取り組み、ヘッドの大型化や最適な重心設計を可能にしてきた。それが近年の「GBBエピック」人気につながった。テーラーメイドは、弾道の最適化による飛距離と方向性の向上を追求。

そのために生み出した独自構造「MWT(動かせるウェート機構)」と「FCT(シャフトスリーブの可変機構)」は全ブランドの標準装備となり、日本では“カチャカチャ”と総称されている。

米国ブランドの開発哲学を見ると、それがそのまま世界中のブランドが追求する理想のドライバー像になる。では、国内メーカーはどうか? 08年に高反発規制(SLEルール)が施行されると、それまでの日本式の飛ばし方(高反発)は頓挫する。

ルール上限の反発をフェースの広域で発揮させる“広反発”に開発の方向性をシフトせざるを得なくなったのだ。ここで大きな遅れを取ることになった。このまま米国ブランド優位の土俵で勝負を挑んでも日本は“分”が悪すぎる。「独自路線を模索し極めるべきだ」。

米ツアーのプレーオフシリーズ、BMW選手権で優勝争いを演じ、3位タイに入った松山英樹。その松山が4年ぶりにスリクソンのニュードライバー「ZX5プロト」を使用。国産のヘッドが大きな注目を集めた。果たして日本メーカー反撃の狼煙となるのか!?

本間は匠のモノづくりで世界へBSはタイヤの技術で復活を狙う

多くの国内メーカーがそう考え、独自路線を目指し、逆襲の戦略に打って出始めた。酒田工場でシャフトも含めたクラブ開発を行う本間ゴルフ。その財産は職人技である「匠」の成型技術。どんなクラブでもモックアップから始めるのがこだわりだ。

「本間ではアドレス時の顔の見え方をもっとも重要視しています。その意味でモックアップからスタートすることが“本間らしさ”でもあるんです。当社はシャフトメーカーにも負けないカーボン技術も持っています。どんなニーズにも応えられる、それが本間の強みです」(本間ゴルフ・鈴木さん)

本間ゴルフの戦略
「モックアップから始まる本間らしさで世界進出」

本間ゴルフが一貫して行うモノづくりのスタートが「匠(マスタークラフトマン)」による形状出し(柿の木を削ったモックアップ)にあります。まず美しいシェイプを作り出すことで顔のよさ、構えやすさをイメージ化し、アドレス時の弾道イメージを鮮明に、また安心感を生み出すことを目指しているのです。これはウッドだけでなく、アイアンも同様です。モックアップをベースにシェイプをCADに取り込み、反発性能の向上や重心設計など、具体的な設計に入り、そのなかで細かい数値目標をクリアしていく。数値目標を達成するためのシェイプであってはならない。そこを自社の強みとしていきたい。日米共同開発の「TRシリーズ」で世界市場への進出を目指します(商品企画部・鈴木隆弘さん)

一方、ブリヂストンは世界トップシェアをもつタイヤメーカー。そのテクノロジーを応用することで、復活を狙っているという。

「まずは日本を中心に戦うこと。もう一度、ブランド力を盛り上げる。そこを念頭においています。当社の強みはタイヤの技術です。タイヤと路面における“接点の科学”をクラブ作りに応用。フェー
スセンターに近い1点を支えること(サスペンションコア)で、高初速エリアが拡大しました」(ブ
リヂストン・堀井さん)

日本らしい匠のモノづくりを軸にする本間ゴルフ。他分野の技術を融合し新たなテクノロジーを生み出すブリヂストン。ともに新製品を発表したばかりだが、反撃の糸口となるか、注視したい。

ブリヂストンの戦略
「タイヤの技術による新たなテクノロジー」

対象ゴルファーに合わせ“飛びの3要素”をいかに最適化していくかを開発の中心に据えています。「ツアーBX」はプロの使用を念頭に、「JGR」は幅広い一般ゴルファーが対象、「ファイズ」は飛距離アップしたいアマチュアにとことん寄りそう。そのうえで国内の満足度を徹底的に高めていきたいと考えています。ブリヂストンタイヤとの共同研究“ 接点の科学”を取り入れることで他ブランドと差別化できる独自技術も生まれています。「ツアーBX 」に搭載した“サスペンションコア”がその一例です。モノとモノが触れ合う場所で起こるコトを研究することで、新たなクラブ作りが可能になるのです(クラブ商品企画2ユニット・堀井大輔さん)

日本製シャフトは世界で大躍進
孤軍奮闘のゼクシオに続け!

世界的なクラブ開発の一元化で、日本メーカーが脚光を浴びている分野がある。それがシャフトの世
界。この分野ではとくに『ベンタス』が絶好調のフジクラ、『ディアマナ』が好調の三菱ケミカル、
そして根強いファンが多い『ツアーAD』のグラファイトデザインと、米ツアーで日本製シャフトが圧倒的な支持を得ている。

日本製シャフトの人気は90年代にアーニー・エルスがフジクラの『スピーダー757』を使い始めた頃から始まったが、ここ数年での使用率アップは凄まじい。

たとえば、8月に行われた『ザ・ノーザントラスト』では国内メーカーがドライバーシャフト使用率の上位を独占(フジクラ27・6%、三菱ケミカル26・8%、グラファイトデザイン13% ダレルサーベイ社調べ)。

3社で67%ものシェアを獲得している。この国内シャフト人気の背景にあるのが、ドライバーヘッドの高慣性モーメント化である。猛者揃いの米ツアーでもドライバーシャフトは60㌘台が当たり前になっている。

慣性モーメントの大きいヘッドに振り負けないようシャフトを軽くして振りやすさのバランスをとったのである。シャフトの軽量化については日本メーカーに大きなアドバンテージ(経験・技術)があった。

ご存知のとおり日本国内では長らく超軽量シャフトの需要が高く、軽量化と強度キープを両立するカーボン素材の開発と設計、そして精度の高い生産技術がシャフトメーカーには蓄積されていたのだ。

慣性モーメントの大きいヘッドの時代は、米国ブランドが切り開いたが、それを「使える道具」として羽ばたかせたのは、実は日本製シャフトの「軽くてしっかり」という二律背反を覆す進化したカーボンシャフト技術があったからといっても過言ではないだろう。

国内シャフトメーカーの
飽くなき挑戦

国内のクラブメーカーでは孤軍奮闘するゼクシオの存在が大きい。日本、韓国、台湾でトップシェアを誇るゼクシオは、初代から変わらぬコンセプトを貫いている。

「これまでのゼクシオユーザーのフィードバックをつねに反映させています。昔はハガキでアンケートを回収していましたが、今はネットが使えますので質問も細分化でき、ユーザーのフィーリングを詳細に収集できます。まずはゼクシオファンに対して、よりよいモノづくりがベースになっています」(住友ゴム工業・山元さん)

他ブランドにおいても独自の視点や技術で、ニューモデルの開発に力を注いている。国内シャフト
メーカーにも負けない、海外ブランドに対抗できるクラブは、果たして生まれるのだろうか。

今回、国内メーカーの逆襲というテーマで進めてきたが、勝ち残るブランドの条件は日米お国柄対決! などという範疇では語れないものだ。

本当の信頼は自らの信じた道をやり続けるブレない開発マインドから生まれるからである。米国ブランドのやさしいヘッド開発、国内シャフトメーカーの軽量化への飽くなき挑戦こそが、“継続”することの大切さを証明しているのではないだろうか。

高い使用率を誇る
日本の3大シャフト

【三菱ケミカル】
04年にタイガーが使用しPGAツアーで広まった

04年に来日したT・ウッズがディアマナを使い優勝。そこから米ツアーに広まりました。06年に米国の拠点を作り、本格的な販売&サポートを開始。当社はカーボンメーカーですので原材料からシャフト開発が可能。どんなに振ってもブレない剛性の強さが特徴です(広報部・伊藤成就さん)

【グラファイトデザイン】
品質の高さと開発力が幅広く認知された

米ツアーのトップ選手が使用してきた実績が現在の信頼に結びついています。最近ではウルフ、シャウフェレなど、元気な若手が使用していますので、その影響も大きいです。すべて日本で製造していますので、さまざまな個性を作り出せるのがポイントです(企画部2課・小林直樹さん)

【藤倉コンポジット】
米ツアーでシェア3割“日本製”の信頼感

日本製という信頼感、品質の高さは選手だけでなく、一般ユーザーにも認知してもらえています。94年から米国に拠点を置き、米国市場用モデルの開発も現地で行っています。「ベンタス」もそのひとつで多くのトップ選手が使っています(プロモーション・飯田浩治さん)

クラブメーカーは
独自の視点で勝負!

【ゼクシオ】
クラブをトータル設計トップシェアは譲らない

初代ゼクシオから変わらないコンセプトが“クラブをトータルで設計する”ことです。慣性モーメントや反発係数など、特定の数値にこだわるのではなく、設計値を踏まえたうえで、クラブ全体で性能を高めるのがゼクシオのこだわり。最新のイレブンもグリップにウェートを入れることでヘッド
スピード向上を狙ったものですが、ただ重くするだけでは、シャフトの重量やバランスは変わってしまう。クラブ全体で設計することで意図する性能を引き出しています(ゴルフクラブビジネスグループ・山元健さん)

【プロギア】
芯を外しても飛ぶギリギリの高反発

プロギアは創業時から「アマチュア目線」でのモノづくりを徹底しています。アマチュアゴルファーがいかにやさしく、安定して飛ばせるかをつねに考え、その結果としてゴルファーに笑顔を提供できれば、という考え方です。「RS5」は歴代RSで培ったギリギリ性能に“快心の一撃性能”
を加えたことにより、芯を外しても初速が落ちない、芯でとらえたらもっと飛ぶクラブ。性能面では他社に負けていない自負があります(マーケティング部/大久保和幸さん)

【ミズノ】
世界が認めた軟らかい打感の追求

もともとアイアンは米ツアーでもいい評価をいただいていました。2016年から契約フリーの選手がミズノアイアンを選んでくれたこともあり海外でのシェアが拡大。19年でいえば米国で5位、英国で4位につけています。ミズノの象徴でもある打感の評価も高く、元世界王者のL・ドナルドも
「ミズノのアイアンは唯一無二の打感」と絶賛してくれています。今後は商品と合わせたフィッティングを強化していきたいです(ゴルフ事業部マーケティング課・片山直さん)

【ヤマハ】
楽器技術の応用で外ブラに真っ向勝負

「UD+2」で飛び系アイアンのジャンルを確立できたのは大きいです。昨年発売した「RMX220・120」は慣性モーメントを増大させるという海外ブランドと同じ土俵で真っ向勝負したモデル。この差別化した2つのブランドで幅広い層にアピールしていきます。ヤマハの強みは振動の科学。楽器研究の応用ですが、ボールとヘッドがぶつかった時の振動をどう処理するか。気持ちのいい音でエネルギーをロスさせない振動の軽減。これを日々研究しています(ゴルフHS事業部マーケティング・柴健一郎さん)

TEXT /高梨祥明(Position ZERO) 

PHOTO / Takanori Miki

週刊GD9月22日号より