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【ティアドロップ物語】Vol.3 ピン・EYE2「独創的な形状が実はティアドロップの源流だった?」

TEXT&PHOTO/Yoshiaki Takanashi(Position ZERO)

現在主流となった「ティアドロップ」型のウェッジは、どのようにして誕生し、受け継がれてきたのか。連載第3回目は、ピンゴルフの名器「EYE2」ウェッジ。一見ティアドロップ型とはかけ離れた形状に見えるが、実は現代のウェッジに通じる考え方のもと生み出されていた。

1982年
ピンゴルフ
EYE2

1982年に発売されたアイアン「EYE2」は、17-4ステンレスの鋳造ヘッドで鍛造アイアンとは一線を画すキャビティヘッドだった。10年間に100万セット以上販売されたという逸話もあり、6、7種類のマイナーチェンジが施されているSW

ロジャー· クリーブランド、ボブ· ボーケイといったツアーウェッジデザインの巨匠たちとは別の流れを作ったのが、ピンゴルフの創始者カーステン・ソルハイム。彼が取り入れたのは“寛容性”をアップさせるためのクラブデザイン。独自の“ヒール・トウ・バランス”理論から生み出された「ANSER」パター、そしてキャビティバックデザインの「EYE2」アイアンと、ヘッドの外周に重さを配分した、今でいう“高慣性モーメント”なヘッドデザインをゴルフ界にいち早く導入したのだ。ミスに対する寛容性をベースにヘッドを考えていくと、オーソドックスなプロ用とは自ずと違うゴルフクラブになっていく。ウェッジもそうだった。

80年代~90年代に空前の大ヒットとなったのが「EYE2」アイアンだが、そのウェッジはシェイプ、バックフェースデザイン、溝、ソール形状、そのどれをとっても斬新で伝統的ではなかった。やさしさ、スピン性能、ソールの抵抗すべてを一から考えたからこその独創性が「EYE2」ウェッジを生んだのだ。その特異性は一目瞭然。やたらトウ先の尖った台形のようなシェイプは、丸型が多いウェッジデザインのなかではかなり異質である。このウェッジの形状を見て、「ティアドロップの対極にある」という見方をするゴルファーも多いだろう。しかし、実はこの「EYE2」こそが、ティアドロップデザインの源流なのかもしれない。その根拠は低いヒールに対し、より高く設計されたトウにある。

SWのヒール下からトウ上の対角線に重量を分散させる「EYE2」デザイン。その対角線中央付近にヘッド重心を設定しているという事実が、この独創的な形状が緻密に計算された“意図したデザイン”であることを教えてくれる(※フェースのマーキングがフェース面上の重心点)

ヘッドの慣性モーメントは、ヘッド重心からなるべく遠くに重量を配分することで大きくなっていくが、カーステンはアイアンやウェッジでも「ANSER」パターと同じくヒールとトウに重さを振り分けることでミスヒットに対する寛容性を高めようとした。その答えが“低いヒール”と“尖ったトウ”で成り立つ「EYE2」ウェッジのシェイプだった。確かに「雫」のような曲線デザインの「ティアドロップ」形状とは完全に違うもののように見える。だが、ロジャー・クリーブランドが生み出したティアドロップの始祖「TA588(第1話に登場)」以前のウェッジは、「箱型」や「円盤型」のヘッド形状で、どれもヒールに高さがあった。ところが、「EYE2」も「TA588」もヒール側が低く(軽い)、トウが高い(重い)ヘッドデザインであることには変わりがない。この“低いヒール”であることが、「雫型」の出発点になっていたと考えられるのだ。

「EYE2」は1982年に発売され大ブレーク、「TA588」は88年に完成と、時代的にも符合する。カーステン・ソルハイムが60年代からアイアン・ウェッジに組み込んでいたヒール下~トウ先の対角線方向の慣性モーメントを上げるデザインを、美しい曲線でつなぎツアープロに認められたのが 「ティアドロップ」デザインの本質だと言えるのではないだろうか。

そして、今から約40年前に生み出された、この「EYE2」の、トウがより高く設計されたデザインは、ここ数年“ハイトウ”という名称で呼ばれ、現在の主流である「ティアドロップ」形状と同じく、様々なウェッジブランドからニューモデルが発売されている。

現在はティアドロップ型とEYE2
両デザインをラインナップ

ピンゴルフ

グライド3.0 EYE2

「ホーゼル」「オフセット」「ハイトウ」、そしてバンカーから優れた性能を発揮する独自のソール形状。今も受け継がれるEYE2デザイン

ピンゴルフ

グライド3.0 SS

オーソドックスなティアドロップシェイプだが、ややヘッドを大きく、そしてバックフェースデザインで周辺重量配分を大きくしたピンゴルフらしい許容性の高いツアーウェッジ

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月7日号より