【ヘッドデータは嘘つかない】Vol.41 強い球で飛ばせる「エピック マックス LS」ドライバー
多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はキャロウェイの『エピック マックス LS』ドライバーを取り上げる。
男子ツアーで人気の低スピンモデル
史上最年長でメジャーを制したフィル・ミケルソンが使用するのは「エピック スピード」だが、兄弟モデルで国内男子ツアープレーヤーに人気なのは今回紹介する「エピック マックス LS」だ。その名のとおり「エピック マックス」の低スピンモデルで、高慣性モーメントのやさしさと、低スピンモデルの強弾道が魅力といえる。
さて、クラブ計測に入ろう。数値はすべて実測した値を記載する。クラブ長さは45.25インチと長すぎず標準的で、クラブ重さも303.3gと標準的だが、スウィングウェートがD3.0と大きいので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントが290万g・㎠とやや大きくなり、本来はドライバーのヘッドスピードが44~45㎧くらいのゴルファーがタイミング良く振れる設計になっている。試打クラブのロフト角は9度。シャフトは純正TENSEI GREEN 55のSフレックス仕様で、軟らかめの設定ながらも適度なしっかり感があり、このスペックならヘッドスピードが42~43㎧くらいあれば十分扱えるだろう。
Point1 クラブ長さは45.25インチと長すぎない
Point2 スウィングウェートがD3.0と大きい
Point3 ヘッド体積は454ccと標準的だが三角形型で兄弟モデルと一線を画す
球をつかまえつつ、低めの弾道が打ちやすい
さて、ヘッドから見ていこう。「エピック スピード」や「エピック マックス」の形状とは違い、全体にやや三角形型に見える。また「マックス」同様にヘッドの後方が低いシャローバック形状なので、アッパーブロースウィングをイメージさせている。
実際に試打したところ、まずアドレスでは「エピック スピード」や「マックス」に比べてフェースが長く、アドレスで全体に三角形型に見える輪郭形状が特徴で、さらに米国モデルらしくオープンフェース設計で、アドレスではフェースがまったくかぶってみえず、スクエア感が大事にされている。
そして、「エピック スピード」や「マックス」に比べて、非常に小さなフェースプログレッション設定であることが大きな特徴だ。アイアンのグースネック効果みたいなもので、球をつかまえながらも低めの弾道が打ちやすくなっており、「マックス」よりもランが出やすくなっている。また、37.8㎜と浅めの重心深度なので、インパクト付近をレベルにスウィングして厚いインパクトがしやすいと感じた。
バックスピンは「マックス」よりも少なく、「LS」の文字に偽りなしだ。そして、「エピック スピード」や「マックス」と比べるとややスイートスポットがトウ寄りの設計で、かつライ角度もフラットなので、小さなFP値で球をつかまえながらもフェード系弾道が打ちやすくなっている。浅めの重心位置設計なので、ヘッドの慣性モーメントやネック軸周りの慣性モーメントが大きくならず、「エピック スピード」と「マックス」の中間的な位置付けといえよう。
キャロウェイ
エピック マックスLS
<試打モデルスペック>※メーカー公表値
●ヘッド素材/811 チタンボディ+トライアクシャル・カーボンクラウン&ソール + ペリメーター・ウェイト(ボディ)、鍛造 FS2S チタン(フェース)
●ロフト角/9度
●ライ角/57度
●長さ/45.75インチ
●シャフト/TENSEI GREEN 55 for キャロウェイ(S)
●総重量/約303g(S)
●価格/8万4700円
クラブ&ヘッドデータ(実測値)
クラブ長さ | 45.25インチ |
クラブ重量 | 303.3g |
スウィングウェート | D3.0 |
クラブ慣性モーメント | 290万g・㎠ |
ヘッド重量 | 199.1g |
ヘッド体積 | 454㏄ |
リアルロフト角 | 9.1度 |
ライ角 | 57.0度 |
フェース角 | オープン1.5度 |
重心距離 | 41.2㎜ |
重心深度 | 37.8㎜ |
フェース高さ | 56.9㎜ |
スイートスポット高さ | 35.8㎜ |
低重心率 | 62.9% |
ヘッド慣性モーメント(左右方向) | 4940g・㎠ |
ネック軸周り慣性モーメント | 7863g・㎠ |
松尾好員
まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰
週刊ゴルフダイジェスト2021年6月15日号より