【ヘッドデータは嘘つかない】低スピンで強い球! タイトリスト「TSi4」ドライバー
多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はタイトリストの『TSi4』ドライバーを取り上げる。
TSiシリーズの低スピンモデル
タイトリストの「TSi」シリーズでは直進性の「TSi2」、操作性の「TSi3」が先行して発売された。その後、「TSi1」と同時に発売されたのが今回紹介する「TSi4」だ。このクラブは“低スピン”モデルで、「TSi3」よりも250回転少なく、前作「TS4」よりも130回転少ないという。
さて、クラブを計測していく。すべての数値は実測した値になっている。クラブ長さが44.75インチとやや短いが、クラブ重量が318.7gと重く、スウィングウェートもD3.6と大きい。それにより、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体慣性モーメントが293万g・㎠と大きくなり、本来はドライバーのヘッドスピードが46~47m/sくらいのゴルファーにとって、心地よく振れる設計になっている。「TSi4」はメーカー標準シャフトはなく、すべてカスタムシャフトで、試打クラブは「ツアーAD DI-6」のSフレックス仕様。約10年前に発売されたシャフトだが、しっかりめでインパクトの再現性が高く、この組み合わせはやはりHSが45m/s以上は欲しいところだろう。
Point1 クラブ慣性モーメントが293万g・㎠と大きい
Point2 ヘッド体積が431ccで最近のクラブとしてはかなり小さい
Point3 リアルロフト角が9度と小さい
やさしくないがハマる人は必ずいる
では、ヘッドを見ていこう。全体に輪郭が丸く、431㏄と小ぶり。また、「TSi2」や「TSi3」と同様に強いオープンフェース設計だ。重心深度は浅く、スイートスポット高さが低いのが大きな特徴で、「TSi2」や「TSi3」と比べてフェースプログレションが大きく、球が上がりやすい構造といえる。
実際に試打してみたが、まずアドレスではヘッドが小ぶりで、操作性が良く、球をつかまえやすいイメージが浮かんでくる。また強めのオープンフェースなので、フェースがかぶらないスクエア感を大事にしていることがわかる。打ってみると、やはりイメージどおりヘッドの操作性が良く、球をつかまえてストレート系の弾道が打ちやすいと感じた。また、スイートスポットの位置がフェースの中央からややトウ寄りなので、フェース中央に当たるとどちらかといえばフェード系弾道になりやすく、操作しやすいのでシングルハンディのゴルファーが「試してみたい」と思うクラブといえる。浅い重心深度によりスイートスポット高さが低いので、ほかのクラブよりも有効打点距離が長く低スピンになりやすい。試打クラブのロフト角が9度だったからという理由もあるが、中弾道で強い球が打ちやすかった。
ヘッドが小さいため、左右方向の慣性モーメントが4239g・㎠と小さく、ミスに強いモデルとはいえないが、スピンが多く、アゲンストの風で飛距離が出にくいゴルファーにとっては、一度チャレンジしてみる価値のある低スピンヘッドだ。
タイトリスト
TSi4
<試打モデルスペック>※メーカー公表値
●ヘッド素材/チタン
●ロフト角/9度
●ライ角/58.5度
●シャフト/ツアーAD DI6(S)
●価格/10万1200円~
※タイトリスト セレクトストア限定品。シャフトはカスタムのみ
クラブ&ヘッドデータ(実測値)
クラブ長さ | 44.75インチ |
クラブ重量 | 318.7g |
スウィングウェート | D3.6 |
クラブ慣性モーメント | 293万g・㎠ |
ヘッド重量 | 203.5g |
ヘッド体積 | 431㏄ |
リアルロフト角 | 9.0度 |
ライ角 | 58.5度 |
フェース角 | オープン1.5度 |
重心距離 | 36.9㎜ |
重心深度 | 36.5㎜ |
フェース高さ | 53.5㎜ |
スイートスポット高さ | 31.7㎜ |
低重心率 | 59.3% |
ヘッド慣性モーメント(左右方向) | 4239g・㎠ |
ネック軸周り慣性モーメント | 6564g・㎠ |
松尾好員
まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰
週刊ゴルフダイジェスト2021年6月8日号より