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300万円のトラックマンは買えないけど…10万円以下の弾道測定器ってどうなの? 6モデルをテスト

TEXT/Kenji Oba PHOTO/Tadashi Anezaki
THANKS/新富ゴルフプラザ

いまやプロは当たり前のように弾道測定器を使用し、その効果が証明されているが、本格的な機器ともなるとかなりの高額。そこで今回はお手頃な弾道測定器をピックアップし、商品テストを敢行。その使い方、賢い利用法を探ってみた。

解説/永井延宏
06年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。試打経験が豊富でギアの構造に詳しく、クラブと体の両面から最新スウィングを的確にアドバイス

弾道測定によってプロの
技術レベルが格段に上がった

弾道測定器はプロにとって必需品になりつつあるが、実際、プロやゴルフ界にどんな影響を及ぼしたのか。スウィング理論はもとよりギアにも精通する永井延宏コーチにその効果を教えてもらった。

「スウィング改造や飛距離アップの試みは、これまで感覚的に行われてきました。ですが弾道測定器の登場であらゆる弾道データが数値化されました。これにより効率の良いスウィングの追求が、科学的に可能になったわけです。プロの飛距離やショットの精度は飛躍的に高まり、米ツアーでは350Y以上のドライバーショットが珍しくなくなりました。その効果はドライバーだけではありません。ショートゲーム(アプローチ)での正確な飛距離、適正なスピン量やヘッドの入射角などが可視化されたことは、プロにとっても大きな影響を与えました」

数値化された弾道データによってどこを改善し、またどこを強化すべきかが明らかになったのだ。永井コーチによれば、その結果、選手たちは明確な目的をもってスウィング改善に取り組めるのだという。

トラックマンは300万円!
プロにとっては安い投資?

ダスティン・ジョンソンをはじめ多くのプロが使用している「トラックマン」をはじめ、ブライソン・デシャンボーが使用する「GCクワッド」、松山英樹が使用する「フライトスコープ」など、最先端の弾道測定器は軒並み200万円超。それでもプロにとっては十分に元が取れる価値がある

松山英樹のマスターズ制覇という快挙についても永井コーチは、弾道測定器なしにはありえなかっただろうと語る。

「弾道データは医療現場にたとえるならMRIやレントゲン画像のようなもので、あくまでデータでしかありません。これを分析・活用できるコーチを迎えたことが、松山選手の成長に大きく寄与したことは間違いないでしょう。多くのアマチュアは、自分のリアルな実力(データ)を理解していません。その意味でも自分のデータを数値として知ることは、上達への第一歩になるはずです」

もっともトラックマンやフライトスコープといったプロ御用達の機器は200~300万円もするため、アマチュアが簡単に手を出せるものではない。そこでアマチュアでも手が届く、お値打ちな弾道測定器をテストしてみた。

山下美夢有はトラックマン効果で初優勝
19年に高校生でプロとなった山下美夢有は昨年夏にトラックマンを購入。「キャリーを3Y刻みで打ち分けられるようになるのが目標。その効果が出始めています」と語っていた通り、4月のバンテリンレディスで見事初優勝を飾った

10万円以下の弾道測定器6モデルをテスト

「300万円出さなくても
十分にレベルアップできます」

そもそも300万円もする弾道測定器とはどんなものか。その代表格である「トラックマン」で考えてみよう。トラックマンはミサイルを追尾するドップラーレーダーの技術をもとに開発されたもので、ヘッドの動きとボールの動きをとらえながら弾道データのすべてを実測値として計測できる。それだけデータの精度が高いからこそ、多くのプロが使うのだ。だが、あまりに高額すぎるのも事実。そこで今回は10万円以内の弾道測定器をピックアップしたが、この値段の違いは計測精度の違いにある。実測値が出せるトラックマンに対し、10万円以下のモデルは蓄積した試打データによる推測値も利用して算出されているからだ。

まずは2万円以内の2機種からテストしてもらった。

「2機種とも計測項目はヘッドスピード、ボール初速、飛距離(キャリーとトータル)、そしてミート率で、弾道計測の初歩としては十分なデータです。コンパクトで持ち運びも便利。また電源を入れ番手を設定したら、あとはボールの後方にセットするだけですから機械が苦手な人でも扱えます」

プロギア
レッドアイズポケット HS-130

価格/1万9800円

飛距離データがリアルな数値に近い
「飛距離データのリアルさには脱帽です。一方、ミート率は少し厳しい印象です。簡易測定器はスピン量や打ち出し角の推定値をもとに飛距離を表示していますが、アイアンよりウッドのほうがより正確な飛距離が出ていました」(永井・以下同)

<測定項目> ヘッドスピード、ボール初速、ミート率、飛距離(キャリー)、飛距離(トータル)、番手設定、使用ボール設定
●ピッチング計測など野球モードもある
野球のピッチング、バッティングのボールスピードが計測できる野球モードもある。コスパからいえば、かなりの高機能といえよう。電源は単4電池4本使用のため、充電の必要がなく使い勝手がいい

ユピテル
スイングトレーナー GST-7BLE

価格/1万6500円

ヘッドスピードの計測精度が高い
「ミート率とヘッドスピードでほぼリアルな数値が出ました。ダフリやトップした時のミート率の低下、ヘッドスピードの低下もきちんと出ています。とくにヘッドスピード主体で使うのがよさそう。飛距離の誤差もそれほどないので問題ないです」

<測定項目> ヘッドスピード、ボール初速、ミート率、飛距離(キャリー)、飛距離(トータル)、番手設定、使用ボール設定
ゴルフナビやスマホでデータ通信が可能
同ブランドのゴルフナビ(YGブレスレットBLE)やスマホと相互通信が可能で弾道データを管理できるし、実際にラウンドしながらデータを確認することもできる

予算を10万円まで上げると選択肢も広がる。ガーミンの「アプローチ80」とボイスキャディの「スイングキャディSC300」は機器単体で使用できるタイプ。一方、フライトスコープ「ミーボ」とラプソード「モバイルトレーサーMLM」は、スマホやiPadと連動させるタイプ。後者はネット設定が必要になるため、スマホが苦手な人には、機器単体で使えるほうがラクかもしれない。

「値段が高くなるとデータ項目が増え、高機能になりますからそれだけ精度も高くなります。とくにスピン量や打ち出し角といった飛距離に直結するデータが計測できるモデルは利用価値も高いです」

ガーミン
アプローチG80

価格/6万5780円

ゴルフナビとしてラウンドでも使える
「キャリー、トータル飛距離、ミート率、ヘッドスピードは、ほぼトラックマンのデータに近いことに驚かされました。自分のフィーリングに合ったリアル感です。データ項目は少なめですが、GPSゴルフナビとして使えるのは、大きな魅力でしょう」

<標準機能> ヘッドスピード、ボール初速、ミート率、飛距離(キャリー)、飛距離(トータル)
メトロノームのようなテンポ練習が可能
メトロノームのようにテンポやリズムをとりながらの練習モードがある。またターゲットプラクティス、バーチャルラウンドなど、ゲーム感覚で使える設定もあり、楽しみながら上達できる

フライトスコープ
ミーボ

価格/7万1500円

スピン量も計測できる
「スピン量が出るのが大きな特徴であり、最大のメリットです。レベルアップ、飛距離アップに威力を発揮するはずです。スマホとの連動さえクリアできれば、機器は小さいので持ち運びが便利で、計測もボールの後方に置くだけで簡単です」

<計測項目> ヘッドスピード、ボール初速、ミート率、飛距離(キャリー)、飛距離(トータル)、番手設定、打ち出し角、弾道の高さ、弾道図、スピン量
滞空時間の計測も可能
弾道図や打ち出し角がわかり、ボールの滞空時間も計測できる。ボールの飛び方が可視化されることで、より鮮明なショットイメージが描ける。スマホと連動で動画撮影も可能

ボイスキャディ
スイングキャディ SC300

価格/8万7780円

スマホと連動でスピン量も表示
「大画面で操作できるのが便利です。機器単体で計測できるので操作も簡単。ただスマホと連動させないとスピン量が分からないのが残念。弾道の高さが出るので、止める技術の習得にも役立ちます。オレンジの画面は視認性も高いです」

<計測項目> ヘッドスピード、ボール初速、ミート率、飛距離(キャリー)、飛距離(トータル)、番手設定、打ち出し角、弾道の高さ、弾道図、スピン量
アプリを使えば平均データが分かる
ショットデータを積み重ねることでクラブ別の平均飛距離が出せる。専用アプリを使えば、練習モード、ターゲットモードなど、さまざまな使い方も可能になる

ラプソード
モバイルトレーサー MLM

価格/6万9850円

動画上にボールの軌道が表示
「スマホとセットで使用するモデル。動画撮影が自動でできるのが魅力で、弾道をトレースする機能があり、3次元でイメージしやすいです。弾道データもリアルに近い。クラブヘッドをカメラに見せるだけで番手設定してくれるのには驚きました」

<測定項目> ヘッドスピード、ボール初速、ミート率、飛距離(キャリー)、飛距離(トータル)、番手設定、打ち出し角、打ち出し方向、弾道図
SNS上でドラコン大会などもできる
打ち出し方向(左右)と打ち出し角も計測可能。SNS上でドラコン大会を開催するなど、スマホユーザーにマッチする、最新の技術を搭載した最先端の測定器といえる

「キャリーで60、50、40ヤード。
まずはこの打ち分けから始めよう」(永井)

「弾道測定器を活用できれば、プロと同じ質の高い練習が可能です」と永井コーチ。では、どこに注目して弾道データを活用すればいい? 永井コーチが最初に挙げたのが飛距離だ。

「何より番手ごとの飛距離を知ることが大事ですが、飛距離はすべてキャリーで把握するようにしましょう。というのもランは状況で変わるからです。キャリーが把握できるようになれば、グリーンを狙うショットの成功率も上がります」

さらに飛距離については、平均値で把握することだ。とかくアマチュアはナイスショットの最大飛距離をイメージしがちだが、

「ナイスショットはそうそう出るものではありません。飛距離はバラつくのが当たり前。だからこそ、平均飛距離が重要です。たとえば同じ番手で10球打った平均を出してみると意外に飛んでいないとなるかもしれません。でもそれがリアルな飛距離なんです」

次に距離感。アマチュアが苦手なのがコントロールショットだが、弾道測定器を使えば、その距離感も正確に身につけられる。

「たとえば40Yと60Yは、どんな力感、振り幅で打ち分けるのか。感覚とデータをすり合わせることで、リアルな距離感が生まれてきます。距離を決めて打つという練習は、目的なしにナイスショットばかりを求めるアマチュアにとって、もっとも大切な練習法のひとつといえるでしょう」

プロは100ヤード以内を数ヤード刻みで打ち分けるが、データを確認しながら10Y、5Y刻みで打てるようになれば、距離感の精度は飛躍的に上がる。

「弾道測定器はヘッドスピードを上げるための実験器具としても活用できます。脱力はアマチュアにとって難しい技術ですが、ヘッドスピードは力んだほうが上がるのか、それとも脱力したほうが上がるのか。実験を繰り返すことで、ヘッドスピードが出やすい体の使い方が見えてくるはずです。練習の目的を明確にし、意図をもってボールを打つ。そして試したことが結果として表れるのか、その場で答え合わせをする。これが弾道測定器の賢い使い方です」と永井コーチは締めくくった。

永井コーチおすすめ
弾道測定器活用術

<活用術1> 番手別のキャリーを把握

最初にやるべきは、番手別の飛距離の把握。飛距離はナイスショットの最大飛距離ではなく、平均値が大事。飛距離がバラつくアマチュアは平均値で判断することでミスの確率を減らすことができる。もうひとつがキャリーの距離を把握し、キャリーでコースマネジメントするクセをつけることだ

<活用術2> 距離感を磨く

力感や振り幅、体の使い方や力を入れるタイミングによる飛距離の変化を確認。とくにコントロールショットとなる30~60Yの距離は、データとすり合わせることで精度アップが可能だ。ショートゲームの技術も飛躍的にアップする

<活用術3> ヘッドスピードの変化をチェック

力んだ状態と脱力した状態で、ヘッドスピードがどのように変化するのかをチェック。頭では理解していても、どうしても力任せにヘッドスピードを上げようとする人が多いが、どの力感で振ったときにヘッドスピードが最大になるか、計測器を使用すれば一目瞭然だ

<活用術4> ミート率をチェック

トップやダフリのミスは明らかに分かるが、芯でとらえた、少し芯を外したという微妙な違いは、アマチュアには分かりづらい。弾道測定器でミート率をチェックすることで、それが明確にわかる。パワーが伝わるナイスショットの感触を覚え込ませよう

<活用術5> 飛びの3要素をチェック

飛びの3要素はボール初速、打ち出し角、スピン量だが、高機能モデルになると打ち出し角やスピン量が計測できる。さらなる飛距離アップを目指すのなら、打ち出し角とスピン量に注目し、最適なデータを見つけ出そう

週刊ゴルフダイジェスト2021年6月8日号より