慣性モーメントは高いがしっかりつかまる! テーラーメイド「シム2 マックスD」
多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はテーラーメイドの『SIM2 マックスD』ドライバーを取り上げる。
つかまった高い球が打ちやすい
テーラーメイドの最新ドライバー「シム2」シリーズは3モデルがラインナップされているが、そのなかでもっともアベレージゴルファー向けとされているのが、今回紹介する「シム2 マックスD」だ。ヘッド後方に配した“ヘビー バックウェイト”は22gと比重が重く、スライスを抑制するだけでなく高弾道を打てるように改善された。また、ヒールに近い位置への「スプリット マス ウェイト」の配置でヘッドを返りやすくした。
クラブを計測していこう。数値はすべて実測値になる。クラブ重量は299gと標準的だが、クラブ長さが45.375インチとやや長く、スウィングウェートもD2.4とやや大きいので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントが291万g・㎠とやや大きくなり、この数値だとドライバーのヘッドスピードが45m/sくらいのゴルファーがタイミングよく振れる設計といえる。
Point.1 スウィングウェートがD2.4とやや大きい
Point.2 ヘッド重量が200.7gと重い
Point.3 重心距離が40.7㎜と長い
適度なスピンが入り高弾道が打てる
ヘッドの雰囲気は「シム2」や「シム2 マックス」と同じように感じられるが、明らかに「シム2」や「シム2 マックス」と違ってフックフェース設計で、球がつかまるイメージが出ている。そして、「シム2」や「シム2 マックス」と違い、ヘッドのトウ側が高く、57度というライ角以上にアップライト感が出ているので、アドレスでは想像以上につかまるイメージが湧く。
試打クラブは10.5度で標準の「TENSEI BLUE TM50(Sフレックス)」仕様だったが、シャフトは軟らかめの設定なので、ヘッドスピードが40m/sくらいのゴルファーなら、Sフレックスで十分扱えそうだ。それ以上のヘッドスピードがある場合は、このシャフトだとヘッドのパワーにやや負けている感があるので、リシャフトをオススメしたい。「シム2」や「シム2 マックス」と同様にヘッド後方が高いハイバック形状なので、インパクト付近でのアッパーブロー感はなく、むしろレベルなスウィングで厚いインパクトができるはずだ。
「シム2」と比較すると、重心深度が深く、より大きなヘッド慣性モーメントで、スイートスポット高さも高いので、適度なスピンが入って弾道は安定しそう。ヘッドのネック軸周りの慣性モーメントが8221g・㎠と非常に大きいので、基本的にはダウンスウィングでのヘッドの返りは緩やか。フックフェースと「シム2」よりも小さなフェースプログレッションによって球をつかまえようとしており、適度なスピンが入ったストレート系の高弾道が打ちやすい感じだ。
「シム2」や「シム2 マックス」といった兄弟モデルよりも球をつかまえたいゴルファーにオススメできる。
テーラーメイド
SIM2
<試打モデルスペック>※メーカー公表値
●ヘッド素材/チタン[911 ti]製ミルドバックカップフェース、グラファイト・コンポジット・クラウン&ソール、アルミニウムリング(鍛造)、ヘビーバックスチールウェイト
●ロフト角/10.5度
●ライ角/56度
●長さ/45.75インチ
●シャフト/TENSEI BLUE TM50(S)
●総重量/約299g(S)
●価格/8万3600円
クラブ&ヘッドデータ(実測値)
クラブ長さ | 45.375インチ |
クラブ重量 | 299.0g |
スウィングウェート | D2.4 |
クラブ慣性モーメント | 291万g・㎠ |
ヘッド重量 | 200.7g |
ヘッド体積 | 459㏄ |
リアルロフト角 | 11.3度 |
ライ角 | 57.0度 |
フェース角 | フック1.0度 |
重心距離 | 40.7㎜ |
重心深度 | 40.1㎜ |
フェース高さ | 55.8㎜ |
スイートスポット高さ | 36.1㎜ |
低重心率 | 64.7% |
ヘッド慣性モーメント(左右方向) | 5127g・㎠ |
ネック軸周り慣性モーメント | 8221g・㎠ |
松尾好員
まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰
週刊ゴルフダイジェスト2021年6月1日号より