スピンが多く吹き上がる人はコレ! コブラ『キング ラッドスピード』ドライバー
多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はコブラの『キング ラッドスピード』ドライバーを取り上げる。
プロトタイプをデシャンボーが使用
“ゴルフ科学者”を自称し、いまや世界一の飛ばし屋としても知られるブライソン・デシャンボー。今年のマスターズで彼が使用していたプロトタイプドライバーの市販モデルがこの『コブラ キング ラッドスピード』だ。
このクラブの特徴は16gの固定ウェートと8gの可変ウェートで、ボール初速と低スピン性能をアップ。さらにフェース面にCNCミルド加工を施し初速を引き上げた。
さて、クラブ計測に入ろう。数値は実測した値になっている。クラブ長さが45.0インチ、クラブ重量は298.0gとどちらも標準的で、スウィングウェートもD0.3と小さめなので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ慣性モーメントが285万g・㎠に抑えられ、ドライバーのヘッドスピードが42m/sくらいのゴルファーがタイミング良く振れる設計になっている。
Point.1 ネック軸周り慣性モーメントが6918g・㎠とやや小さい
Point.2 クラブ長が45インチと長すぎない
Point.3 左右方向のヘッド慣性モーメントは4212g・㎠と小さい
浅重心で低スピンの強い球が出る
では、ヘッドを見ていこう。コブラらしいやや三角形型の輪郭で、兄弟モデルである「ラッドスピード XB」よりもヘッドの横幅が狭く、やや小ぶりな感じがする。米国モデルではあるもののフェース角が1度オープンとそれほどオープンフェースではなく、バルジ(フェースの丸み)が少ない平らなフェース面になっている。これらを総合すると球をつかまえるイメージが出ている。
さて、実際に試打してみたところ、まずアドレスでは三角形型のやや小ぶりなヘッドは、ヘッドスピードが上がるようなイメージを持てる。59度と標準的なライ角だが、ヘッドのトウ側が高いためアップライト感があり、アドレスでは球をつかまえるイメージがわく。
試打クラブは10.5度でオリジナルスピーダーEVO for RADSPEEDのSフレックス仕様だったが、軟らかめのシャフトなので、ヘッドスピードが40m/sくらいのゴルファーならSフレックスで十分だろう。また、クラブ長が長すぎないので、ミート率も高くなり、アベレージゴルファーでもしっかり振り切ることが可能だ。
ヘッドのフェース側にウェートが多く配置されて重心深度が浅くなっていることが大きな特徴で、アッパーブローではなくレベルにスウィングしやすく、厚いインパクトをしやすくなっている。また、ヘッドのネック軸周り慣性モーメントは6918g・㎠とやや小さめなので、操作性が良く球をつかまえやすい。浅い重心深度で、決して大きなヘッド慣性モーメントを狙った設計ではないが、スイートスポット高さを低めに設計しており、小さなリアルロフトとも合わせて、中弾道でスピンも少なめの強い弾道を打ちやすいクラブ。普段スピンが多いゴルファーが飛距離を伸ばせそうだ。
コブラ
キング ラッドスピード
<試打モデルスペック>※メーカー公表値
●ヘッド素材/11チタン鋳造+カーボンファイバーラッピング(ボディ)、611チタン鍛造CNCミルドインフィニティフェース(フェース)
●ロフト角/10.5度
●ライ角/58.5度
●長さ/45.5インチ
●シャフト/オリジナルスピーダーEVO for RADSPEED(S)
●価格/7万1500円
クラブ&ヘッドデータ(実測値)
クラブ長さ | 45.0インチ |
クラブ重量 | 298.0g |
スウィングウェート | D0.3 |
クラブ慣性モーメント | 285万g・㎠ |
ヘッド重量 | 198.0g |
ヘッド体積 | 457ml |
リアルロフト角 | 9.8度 |
ライ角 | 59.0度 |
フェース角 | オープン1.0度 |
重心距離 | 39.8㎜ |
重心深度 | 35.6㎜ |
フェース高さ | 54.3㎜ |
スイートスポット高さ | 33.2㎜ |
低重心率 | 61.1% |
ヘッド慣性モーメント(左右方向) | 4212g・㎠ |
ネック軸周り慣性モーメント | 6918g・㎠ |
松尾好員
まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰
週刊ゴルフダイジェスト2021年5月4日号より