最新ヘッドは本当に進化しているのか? 新旧モデルを“同じシャフト”で打ち比べてみた
PHOTO/Tadashi Anezaki、Tomoya Nomura
THANKS/ゴルフ5 プレステージ 広尾店
新製品が出るたびに、どのメーカーも「前作よりも飛ぶ」、「ミスに強くなった」などとパフォーマンスの向上をアピールする。しかし、それは純正シャフトも含めたクラブ全体としての進化かもしれない。カスタムシャフトを使用しているゴルファーが知りたいのは、ヘッド単体での性能。そこで、新旧モデルを同じシャフトで比較試打。実力を比べてみた!
試打解説/後藤悠斗
雑巾王子こと武市悦宏プロとともに広尾ゴルフインパクトでレッスンを行う。ギアへの造詣も深い。今回は、ボールはキャロウェイ『クロムソフト』、弾道計測器は『GC2』を使用。5球打ったうち、ナイスショット3球の平均をとった
打ち比べ#1 キャロウェイ
エピック フラッシュ(旧)vs エピック(新)
まずは、最新の「エピック スピード」と旧モデルの「エピック フラッシュ」から打ち比べた後藤プロ。
「2種類のシャフトで打ちましたが、『スピード』はどちらのシャフトで打ったときもHSが上がりました。ヘッド後方を持ち上げたような空力ボディのおかげなのでしょう。フェースの弾き感がよく、球も明らかに強い。ただ、若干ですがボールが上がりにくく感じたので、どちらかというとパワーヒッターのほうがより恩恵を受けやすそうですね」
続いて、ロースピンモデルの「エピック マックス LS」については「こちらも初速が上がって球の強さを感じます。さらにシャローフェースのおかげで、球が上がりやすい。低スピンモデルは難しいと思っている人でも試してみたほうがいいですよ。使いこなせる人の幅が広がったと思います」(後藤プロ)
エピック フラッシュ(旧)
vs エピック スピード(新)
エピック フラッシュ エピック スピード
「弾道調整できる可変ウェートを廃したのは慣性モーメントを大きくしてミスに強くするため。実際に打ってみると、確かにそれを実感できました」
<計測結果>
「エピック スピード」はヘッドスピードが上がる
エピック フラッシュ | エピック スピード | |
---|---|---|
HS | 42.8㎧ | 43.3㎧ |
初速 | 62.0㎧ | 62.8㎧ |
打ち出し角 | 10.4度 | 9.8度 |
スピン量 | 2343rpm | 2454rpm |
キャリー | 223Y | 225Y |
総飛距離 | 250Y | 251Y |
エピック フラッシュ | エピック スピード | |
---|---|---|
HS | 42.8㎧ | 43.7㎧ |
初速 | 62.0㎧ | 63.4㎧ |
打ち出し角 | 10.6度 | 8.6度 |
スピン | 3221rpm | 2698rpm |
キャリー | 217Y | 223Y |
総飛距離 | 238Y | 251Y |
エピック フラッシュ サブゼロ(旧)
vs エピック マックス LS(新)
エピック フラッシュ サブゼロ(10.5度) エピック マックス LS(10.5度)
「『マックスLS』はフェース高が低くなり、重心位置が下がっている。旧モデルより球が上がりやすく、やさしいだけでなく飛距離もアップ」
エピック フラッシュ サブゼロ エピック マックス LS
「構えてみると『マックスLS』のほうが投影面積が大きいので、芯に当たりやすい安心感がある。またトウに丸みがある“逃げ顔”なので、左を恐れずに思い切り振れる」
<計測結果>
「『マックスLS』は球が上がりやすい」
エピック フラッシュ サブゼロ | エピック マックス LS | |
---|---|---|
HS | 43.3㎧ | 43.2㎧ |
初速 | 63.0㎧ | 62.6㎧ |
打ち出し角 | 9.6度 | 10.2度 |
スピン量 | 2567rpm | 2223rpm |
キャリー | 224Y | 227Y |
総飛距離 | 251Y | 257Y |
エピック フラッシュ サブゼロ | エピック マックス LS | |
HS | 43.0㎧ | 42.7㎧ |
初速 | 62.4㎧ | 62.0㎧ |
打ち出し角 | 8.9度 | 9.9度 |
スピン量 | 2389rpm | 2364rpm |
キャリー | 220Y | 222Y |
総飛距離 | 251Y | 252Y |
打ち比べ#2 テーラーメイド
シム(旧)vs シム2(新)
試打シャフト2:ディアマナZF60(S)/中元調子
「『シム』『シム2』シリーズも2種類のシャフトで打ちましたが、とくに『シム2マックス』は明らかに曲がりにくくなっています。真っすぐ強い球で飛距離も出る。これなら安心して叩きにいけます」
「ドローバイアス設計の『マックスD』は、新旧どちらも構えただけではつかまる感じがしないのに、打つとつかまる。『シム2』のほうがネック近くに重量があるぶん、ヘッドが返りやすく、よりつかまる感じ。フェードが持ち球の僕でもドローしか出ませんでした(笑)」
「両モデルとも構えたときの顔はほとんど変わっていません。しいて言えばクラウン部の白と黒のコントラストが強くなった程度なので、旧モデル愛用者なら違和感なくスイッチできるでしょう」
シム マックス(旧)
vs シム2 マックス(新)
シム マックス(9度) シム2 マックス(9度)
「『シム マックス』は芯が広いと評判でしたが、『シム2 マックス』はより広くなった印象。トウ寄りに当たったときでも、『シム』はドロー、『シム2』はストレートと直進性が高くなっている。上級者が叩きにいきたいと思うヘッドです」
シム マックス シム2 マックス
「フェースの反発性能を調整する『スピードインジェクション』の樹脂の注入口がフェース面の2カ所からトウの1カ所に変更されたためか、弾き感が強くなり、強弾道で飛距離が伸びた」
<計測結果>
「初速&打ち出し角がアップ」
シム マックス | シム2 マックス | |
---|---|---|
HS | 43.3㎧ | 43.3㎧ |
初速 | 62.0㎧ | 62.7㎧ |
打ち出し角 | 7.5度 | 9.8度 |
スピン量 | 2233rpm | 2464rpm |
キャリー | 209Y | 223Y |
総飛距離 | 245Y | 250Y |
シム マックス | シム2 マックス | |
---|---|---|
HS | 42.7㎧ | 43.4㎧ |
初速 | 61.9㎧ | 62.5㎧ |
打ち出し角 | 10.8度 | 11.8度 |
スピン量 | 2159rpm | 1897rpm |
キャリー | 225Y | 231Y |
総飛距離 | 256Y | 259Y |
「どちらのシャフトで打っても『シム2』のほうが初速が速くなり、打ち出し角も高くなって、よりやさしく飛ばせた。例えるならライナー系から大きなアーチの本塁打が打てるようになった感じ」
シム マックスD(旧)
vs シム2 マックスD(新)
シム マックス-D(9度) シム2 マックス-D(9度)
「『シム マックスD』でつかまらなかった人でも『シム2 マックスD』なら必ずつかまるはず。逆に前モデルでしっかりつかまっていた人は、『シム2 マックスD』にするとつかまりすぎるかも。そういう人は『シム2 マックス』にするのがおすすめです」
シム マックスD シム2 マックスD
「師匠である武市悦弘プロの『ツイスト打法』では、手を返すことが重要なポイントですが、『シム2 マックスD』はヘッドが勝手にその動きをする。クラブがスウィングを助けてくれます」
<計測結果>
「数値はほぼ同じだが
つかまり度は『シム2 マックスD』」
シム マックスD | シム2 マックスD | |
---|---|---|
HS | 43.9㎧ | 43.9㎧ |
初速 | 63.7㎧ | 62.6㎧ |
打ち出し角 | 7.3度 | 9.0度 |
スピン量 | 2730rpm | 2142rpm |
キャリー | 218Y | 218Y |
総飛距離 | 248Y | 250Y |
シム マックスD | シム2 マックスD | |
---|---|---|
HS | 42.7㎧ | 43.0㎧ |
初速 | 61.9㎧ | 62.5㎧ |
打ち出し角 | 8.0度 | 8.3度 |
スピン量 | 2319rpm | 2473rpm |
キャリー | 213Y | 215Y |
総飛距離 | 248Y | 253Y |
「新旧『マックスD』は計測データとしてはそれほど大きな違いは出なかった。ただ、つかまりは明らかに『2』のほうがよくなっている。球がつかまらない人は絶対に『2』がオススメ」
打ち比べ#3 PING
G410(旧) vs G425(新)
試打シャフト2:ツアーAD XC-6(S)/中元調子
G410 プラス(旧)
vs G425 マックス(新)
G410 プラス G425 マックス
ピンのドライバーの特徴はミスに強く、直進性が高いこと。そのなかでもシリーズ最大の慣性モーメントを誇るのが『G425 マックス』。大ヒットとなった『G410 プラス』の後継モデルだ。
「『G410 プラス』も決してスピン量が多いわけではないのですが、『G425 マックス』のほうが、より適正スピンになり、飛距離が出ています。ただ、弾道は思ったほど高くないので、ある程度のパワーがある人のほうが、このヘッドの性能を最大限に引き出せると思います」(後藤)
G410プラス G425マックス
『G410プラス』はヘッド後方の可変ウェートが16gと重く、当時はシリーズ最大の慣性モーメントだったが、『G425マックス』はウェートが10g重くなり、さらに大きな慣性モーメントを実現
「G425マックス」のほうがつかまり度が高い
「『直進性は高いけど、つかまりづらい』というイメージだったのですが、『G425 マックス』(写真上)はトウに丸みがなく、つかまる顔に。振ってみてもイメージどおりの球が出て、ミスに強くてつかまるヘッドに進化しました」
<計測結果>
「スピン量が減って飛距離もアップ」
G410 プラス | G425 マックス | |
---|---|---|
HS | 43.3㎧ | 43.3㎧ |
初速 | 62.7㎧ | 62.7㎧ |
打ち出し角 | 9.6度 | 8.0度 |
スピン量 | 3002rpm | 2457rpm |
キャリー | 220Y | 224Y |
総飛距離 | 244Y | 251Y |
G410 プラス | G425 マックス | |
---|---|---|
HS | 42.8㎧ | 42.6㎧ |
初速 | 62.1㎧ | 61.8㎧ |
打ち出し角 | 11.4度 | 9.6度 |
スピン量 | 2944rpm | 2524rpm |
キャリー | 218Y | 225Y |
総飛距離 | 244Y | 249Y |
「今回試打で使用したシャフトはどちらも元調子ということもあり、『G425』は球が上がりづらい結果に。HSが遅めの人は、先調子のシャフトを組み合わせると高弾道・低スピンになりやすいでしょう」
G410 LST(旧)
vs G425 LST(新)
G410 LST G425 LST
「『G425』は『G410』よりもクラウンに配された突起(タービュレーター)がなだらかになり、アドレスしても前モデルほど気にならず、小ぶりのヘッドで構えやすくなっています。ヘッド体積が若干小さくなったにもかかわらず慣性モーメントは大きくなり、操作性がいいのにミスにも強く進化しました。自分でボールをつかまえられる人なら、スピンの少ない強い球が打てるでしょう。打音は前作より低く締まった音になっています。これは好みもあるので実際に打って確認してみてください」
G410 LST G425 LST
「G410 LST」は打ち比べた4モデルの中では最もソールに丸みがある。ヘッド後方を短くして浅重心にすることで低重心化している。「G425 LST」はヘッド体積がさらに小さくなり445ccに。操作性が上がっている
より振り切れるヘッド形状に
「『G425』シリーズの中でも投影面積はひと回り小さく、操作性のよさを感じる。より低・浅重心になったが、低スピン性能は前モデル並み。ただし初速は確実に上がっているので、しっかり叩いていける人なら、確実に飛距離は伸びるし、曲がり幅も少なくなる」
<計測結果>
「さらにハードヒッター向けになった」
G410 LST | G425 LST | |
---|---|---|
HS | 41.9㎧ | 41.8㎧ |
初速 | 60.7㎧ | 60.6㎧ |
打ち出し角 | 12.3度 | 9.3度 |
スピン量 | 2430rpm | 2199rpm |
キャリー | 212Y | 220Y |
総飛距離 | 245Y | 251Y |
G410 LST | G425 LST | |
---|---|---|
HS | 42.1㎧ | 43.0㎧ |
初速 | 61.0㎧ | 62.3㎧ |
打ち出し角 | 9.7度 | 9.2度 |
スピン量 | 2776rpm | 2828rpm |
キャリー | 213Y | 217Y |
総飛距離 | 239Y | 244Y |
「『G425 マックス』と同様に、今回試打したシャフトの場合、やや球が上がりにくい傾向に。よりハードヒッター向けになった感じがする」
打ち比べ#4 タイトリスト
TS2(旧) vs TSi2(新)
試打シャフト2:スピーダー661エボリューションⅤ(S)/先中調子
PGAツアーでも数多くの選手が使用し勝利しているタイトリスト『TSi』シリーズ。4モデルあるが、今回は標準モデルといえる「2」で新旧比べてみた。
「タイトリストといえばアスリート向け、というイメージを覆したのが前作『TS2』。2018年の発表時に試打したのですが、そのやさしさに驚いたことを覚えています。今回はそれに輪をかけて、大幅な進化だと思います。『TSi』の『i』には『イノベーション(革新)』『インパクト(衝撃)』などの意味があるそうですが、その革新的な進化には本当に衝撃を受けました。『TS2』に比べ1g重いだけなのに振り心地はまったく違う。とくに先中調子のシャフトでは完全に別モノでした」(後藤)
TS2(旧) vs TSi2(新)
TS2(10.5度) TSi2(10度)
TS2 TSi2
「『TS2』はタイトリストっぽくない顔で、つかまるイメージが強かったのですが、『TSi2』はタイトリストらしい逃げ顔なのに、打ってみると『TS2』並みにつかまりがいい。やさしさは変わらないまま、叩けるし、飛距離が出る。『TS2』もよかったけど、打ち比べると『TSi2』に軍配」
<計測結果>
「『TSi2』はソフトな打感ながら初速が出る」
TS2 | TSi2 | |
---|---|---|
HS | 41.9㎧ | 42.2㎧ |
初速 | 60.8㎧ | 61.2㎧ |
打ち出し角 | 11.0度 | 9.4度 |
スピン量 | 2345rpm | 2373rpm |
キャリー | 216Y | 223Y |
総飛距離 | 246Y | 251Y |
TS2 | TSi2 | |
---|---|---|
HS | 42.6㎧ | 43.1㎧ |
初速 | 61.8㎧ | 62.6㎧ |
打ち出し角 | 9.4度 | 9.8度 |
スピン量 | 2597rpm | 2521rpm |
キャリー | 218Y | 224Y |
総飛距離 | 244Y | 252Y |
「弾き感のいい新素材チタンフェースは、初速が出るのに、実にソフトで気持ちのいい打感。球が上に上がるというよりは、前へと進んでいくようなイメージの強弾道が打てます」
打ち比べ#5 スリクソン
Z785(旧) vs ZX7(新)
昨年の国内男子ツアー再開後の5試合で3勝を挙げた「ZX7」。「これは新旧の違いがはっきりしている。契約プロが即座にスイッチして成績を残している理由がわかりました」と後藤プロ。
「『Z785』はツアープロならともかく、アマチュアが使うには難しすぎます。球は上がらないし、つかまらない。それが『ZX7』は、ぜんぜん違いますね。同じメーカーが作っているとは思えないほど。これはもう“進化”というより“革新”です。そのなかでも『ZX7』と前モデルのいちばんの違いはミスへの強さ。国産ブランドの1Wにありがちな操作性に特化したモデルではなく、操作性と寛容性を兼ね備えた外国ブランドに近い。まだ買い替えていない人は損していますよ!」
Z785(10.5度) ZX7(10.5度)
Z785 ZX7
「『Z785』よりもカーボン感が強くなり、かつ投影面積が大きくなったので、構えやすく安心して打てます。とはいえ、上級者が好む操作性もしっかり確保していて、メーカーの意気込みがうかがえる力作です」
<計測結果>
「『前作より10Y飛ぶ』を地でいくクラブ」
Z785 | ZX7 | |
---|---|---|
HS | 43.2㎧ | 43.6㎧ |
初速 | 62.6㎧ | 62.7㎧ |
打ち出し角 | 9.9度 | 9.1度 |
スピン量 | 2647rpm | 2394rpm |
キャリー | 214Y | 224Y |
総飛距離 | 245Y | 252Y |
「『前作より10ヤードアップ!』と、よく宣伝で使われますが、これはそれを地でいっています。スリクソンユーザーだけでなく、他ブランドを使っている中上級者にも試してほしい」
週刊ゴルフダイジェスト2021年4月20日号より