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弾道を自在に操れる! パワーのある上級者向けのテーラーメイド『SIM2』ドライバー

多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はテーラーメイドの『SIM2』ドライバーを取り上げる。

世界のツアープロが即座に乗り換えた

ダスティン・ジョンソン、ローリー・マキロイといった契約プロが、ツアー支給開始後に即座にスイッチした最新作が『SIM2ドライバー』だ。

このドライバーのいちばんの驚きは「フォージドミルドアルミニウムリング」が紡ぐ新構造で、溶接なしに作られた点だ。比重の軽いアルミニウムを採用することにより、余剰重量を生み出し、高慣性モーメントを実現する「ヘビーバックウェイト」を搭載。飛距離だけでなく寛容性も大幅に向上した。

さて、クラブを計測していこう。数値はすべてクラブやヘッドを実測した値になっている。クラブ長さは45.375インチとやや長く、クラブ重量も309.6gとやや重く、スウィングウェートもD2.6とやや大きいので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ慣性モーメントが294万g・㎠と大きくなっている。この数値であれば本来はドライバーのヘッドスピードが47m/sくらいのゴルファーが、タイミングよく振れる設計だ。ただし、標準シャフトの『テンセイ シルバー TM50(Sフレックス)』は、適度なしっかり感がありながら軟らかめの設定で、ヘッドスピードが43m/sくらいのゴルファーでも十分に扱えそうだ。

Point.1 クラブ慣性モーメントが294万g・㎠と大きい
Point.2 ライ角が57.0度とフラット
Point.3 重心距離が41.1㎜と長い

インテンショナルに球を操りやすい

形状から確認していこう。前モデルの『SIM』と同じように、時計盤でいう1~2時方向の張り出しが大きく、かつ米国モデルらしく強いオープンフェース設計。さらにフラットなライ角度なのでアドレスでの見た目のつかまり感はなく、フェード系弾道をイメージさせる。

実際に試打したところ、やはり強いオープンフェースに目がいく。ヘッドの後方が高いハイバック形状と浅い重心深度設計により、インパクト付近でのアッパーブロー感はない。むしろレベルなスウィングで厚いインパクトができ、やや低めのティーアップでもしっかり打つことができる。

前モデル『SIM』と同様に、『MAX』モデルよりもヘッドの慣性モーメントが小さく、同時にネック軸周りの慣性モーメントも小さくなっている。よって、『MAX』よりもヘッドの操作性は良く、インテンショナルに弾道を操作しやすいだろう。さらにスイートスポット位置がフェース中央よりややトウ寄りにあるので、自然にフェード系弾道を打ちやすくなっている。打ってみた感触としては、適度なスピンが入り、やや高めの安定した弾道も打てた。

クラブ慣性モーメントがかなり大きいクラブなので、ヘッドの性能を引き出すには、ある程度のパワーが必要なクラブといえるだろう。

米国ブランドらしく、まったくフェースがかぶっていない顔。ライ角もフラットで左に行きすぎるイメージがわかない

テーラーメイド
SIM2

<試打モデルスペック>※メーカー公表値
●ヘッド素材/チタン製ミルドバックカップフェース(ボディ一体型)、グラファイト・コンポジット・クラウン&ソール、アルミニウムリング(鍛造)、ヘビーバックスチールウェート
●ロフト角/10.5度
●ライ角/56度
●長さ/45.75インチ
●シャフト/テンセイ シルバー TM50(S)
●総重量/約310g(S)
●価格/8万3600円

クラブ&ヘッドデータ(実測値)

クラブ長さ45.375インチ
クラブ重量309.6g
スウィングウェートD2.6
クラブ慣性モーメント294万g・㎠
ヘッド重量202.3g
ヘッド体積457㏄
リアルロフト角11.0度
ライ角57.0度
フェース角オープン1.5度
重心距離41.1㎜
重心深度36.9㎜
フェース高さ54.4㎜
スイートスポット高さ33.5㎜
低重心率61.6%
ヘッド慣性モーメント(左右方向)4691g・㎠
ネック軸周り慣性モーメント7510g・㎠


松尾好員
まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰


週刊ゴルフダイジェスト2021年4月20日号より