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まもなく開幕! オーガスタを制するのは? マスターたちの“ボール”戦略

硬くて速いグリーン、気まぐれな風。オーガスタを制するためには、ボールが重要なカギを握る。マスターたちはどのボールで挑むのか。選んだ理由を本人たちに語ってもらうとともに、そのボールでオーガスタをどう攻略していくかをレックス倉本が補足解説。

Masters’ Ball #1
キャロウェイ『クロム ソフト X/X LS』

「彼らが求めたのはぶっちぎりの高初速!」

2019年に欧州ツアーの年間王者に輝き、米ツアーではこれまで5勝、昨年7月には自身初の世界ランク1位に上り詰めたジョン・ラーム。今年から新たにキャロウェイのスタッフプレーヤーとなり、「エピック スピード」ドライバーやオデッセイの「2ボール テン」パターを使っているが、契約発表時に「クラブ以上にボールに感銘を受けた」と、「クロム ソフト X」が契約のポイントになったと明かしている。

キャロウェイのツアーチームによると、ボールをテストしていたラームはドライバーでの初速もさることながら、100ヤード以内の打ち出し角の低さに驚いていたという。

「信じられないほど万能なボールだ。ドライバーでは飛距離も出て、ミスをしても真っすぐ飛ぶし、風のなかでも安定している。さらにショートゲームでもとてもいい」と「クロム ソフト X」を絶賛するラーム。これまでマスターズには4回出場しており、2018年からは4位、9位、昨年は7位と3年連続トップ10入りと相性もいい。メジャー初優勝をマスターズで飾れるか?

「フェードヒッターのラームにとって、ドローが有利といわれるオーガスタは決してやさしくはありません。左ドッグレッグの2番や13番ではドライバーではなく3Wを使ってドローを打つ場面も出てくるでしょう」とPGAツアー解説でおなじみのレックス倉本。

「それでも、ここ数年、上位に来られる理由はアイアンの切れのよさにあります。しっかりとスピンが入るので、硬くて速いオーガスタのグリーンでも、確実に止められる。感覚を大切にしている選手なので、自分のイメージと合い始めたら、それこそ手が付けられないほどの快進撃を見せるかもしれません」

「ボールは、テスト段階から本当に素晴らしいと思わせてくれた」とラーム。高初速&強弾道の「エピック スピード」ドライバーとの好相性はもちろん、アイアンやショートゲームでもいい結果が残せるという

2019年のマスターズで、優勝したタイガー・ウッズと1打差の2位に入ったザンダー・シャウフェレもラームと同じ「クロム ソフトX」と「エピック スピード」を使う。

「このボールの性能は信じられない。飛距離もコントロール性能もまさに自分が求めていたものだ」と絶大な信頼を寄せる。さらに「この初速は他のドライバーでは出せない。明らかに設計が違う。なんといっても飛距離が安定している」とボールとドライバーの相性のよさも挙げる。

距離が長く高低差のあるフェアウェイと、アンジュレーションがきつく、硬くて速いグリーンを、飛んで止まるボールで攻略し、マスターズ初制覇を狙う。

クロム ソフト X
クロム ソフト X LS

直径、体積を大幅にアップしたコアと、極薄ながら強い反発力を持つウレタンカバーを採用することで、スピン性能の高さはそのままに、これまで以上に高いボール初速を生む「クロム ソフト X」。ロングショットでは、より低スピン&強弾道の「クロム ソフト X LS」が威力を発揮する


Masters’ Ball #2
テーラーメイド『TP5/TP5x』

「空気抵抗を抑え初速&スピン量アップ」

終わってみれば5打差の圧勝だった昨秋のマスターズ。秋開催となり、フェアウェイが軟らかくランが出ないことから、開幕前から飛距離の重要性が取り沙汰された。トーナメントレコードとなる20アンダーを叩き出したダスティン・ジョンソンの強さは、言うまでもなく圧倒的な飛距離。だが、「弱点といわれたショートゲームも、パッティングも磨いてきた」と本人が語ったように、パワーだけでオーガスタをねじ伏せたわけではなかった。それは最終日のバック9、13番と15番のパー5できっちりと刻んでバーディを奪ったところにも表れている。

例年どおりの春開催となる今大会、誰も成し遂げたことのない秋春連覇の前に立ちはだかるのは、オーガスタ本来の硬くて超高速のグリーンと厳しいセッティング。

「飛距離を生かしてグリーン近くまでボールを運べるので、肝になってくるのがショートゲーム。残り100ヤード以内のアプローチで、いかにグリーンに止められるかがポイントになるでしょう」とレックス倉本。その強い味方がボールだという。

「D・Jが使用する『TP5x 』はしっかりとした打感で飛距離が出る半面、ヘッドスピードが速いとしっかりとスピンが入ってくれるので、意外と柔らかいアプローチができる。オーガスタの起伏のあるグリーンには、足を使ったランニングアプローチも有効でしょう」

一方、昨秋がマスターズ初出場だったコリン・モリカワ。2月のWGCワークデイ選手権では昨年の全米プロ選手権以来の米ツアー4勝目を挙げ、上り調子で2度目のマスターズを迎える。

「オーガスタは飛距離があるほうが圧倒的に有利なのは、確かに事実。しかし過去にはマイク・ウィアやザック・ジョンソンなど、それほど飛ばなくても確実なショットと堅実なプレーでオーガスタを制した選手もいます。モリカワの持ち味は正確なショット力。優勝したWGCでも悪天候のなか、卓越したボールストライキングと柔らかな打球でグリーンにボールを止めスコアを伸ばしました」(レックス)

彼のショットメイクを支えているのが新しい「TP5」。ソフトな打感と高いスピン性能はそのままに、ドライバーでは初速がアップし、ショートアイアンではスピン量と弾道の精度がさらに上がったという。

「彼がマスターズで優勝争いをするのなら、飛距離より確実性を重視して、アイアンやアプローチ勝負になると思います。オーガスタはドッグレッグが多く、飛距離の出る選手ほどボールを曲げて攻めていきますが、反面、真っすぐなホールでスコアを崩すことも多い。3番、7番などストレートなホールで、どれだけスコアを作っていけるかがカギになるでしょう」(レックス倉本)

TP5/TP5x

従来よりも浅くした新設計のディンプルパターンを採用した新しい「TP5」と「TP5x」。空気抵抗を抑え、最高到達点までの減速が緩やかになるとともに、ディンプルの壁の角度を急にすることにより落下時の揚力を増加させ、より遠くへのキャリーを実現。D・ジョンソン、R・マキロイ、T・フリートウッドらは、より高初速・高弾道の「TP5x」。C・モリカワはよりソフトでスピンの多い「TP5」を選択


Masters’ Ball #3
タイトリスト『プロV1/V1x』

「ガラスのグリーンでも止められる!」

マスターズの前哨戦、“第5のメジャー”と呼ばれるザ・プレーヤーズ選手権を制したジャスティン・トーマス。最終日の11番パー5で4番アイアンを手にしたトーマスが打った第2打は高く、そして真っすぐにグリーンに向かって飛んでいき、ピンそば6メートルに止まった。これを沈めてイーグルとし、逆転優勝へとつなげていった。

実はトーマスが今季の課題としていたのは、ロングアイアンでしっかりとグリーンにボールを止めるということ。それを大きな試合のここいちばんで見事に成し遂げたのだ。そのパフォーマンスを支えたのが、5試合前から使い始めた新しい「プロV1x」。

「新しい『プロV1x』はボールを止めることが困難な硬いグリーンやロングアイアンでも、イメージどおりにしっかりと止まってくれる」とトーマス。それを実感したのはボールテストのときだった。

タイトリストのボールフィッティングは「Green to Tee」と呼ばれ、グリーンから行われ、ティーイングエリアへとさかのぼっていく。ウェッジ、アイアンでの打感、最適なスピン量、風のなかでのコントロール性能。そのすべてに見合うボールを求め、最後にウッドやドライバーの飛距離についてもバランスを取っていくという。そして、新しい「プロV1x」はすべてにおいて満足のいく結果で、さらにロングアイアンでは、スピン量は前と同じなのに打ち出しが高くなった。弾道が高くなると最高到達点が高くなり、着弾する角度が大きくなってボールが止まる。スピンではなく高さでボールを止める。これこそ求めていたものだった。

「打った後にボールを見上げると、理想の高弾道で飛んでいき、グリーンでは思いどおりに止まってくれる。まさに望みどおりだった」とトーマス。

「彼はボールストライキングにも秀でているオールラウンダー。正確なショットだけでなく、ウェッジの技術もピカイチ。とくに50〜60ヤードの中途半端な距離が上手く、柔らかい弾道でピタッと止めてくる。オーガスタの硬いグリーンでも確実に止めてくるでしょう」(レックス)

メジャー初制覇に向けて死角はない。

「新しい『プロV1x』は、僕が求めていた少し高めの弾道を実現してくれた。とくに硬めのグリーンや、ロングアイアンで、グリーンの狙った場所に、より正確にボールを運べる」(トーマス)

マスターズの歴代優勝者であるアダム・スコット、ジョーダン・スピースのボールも「プロV1x」だが、ドライバーは昨年のマスターズ使用率1位の「TSiシリーズ」を使う。スコットはこの組み合わせで劇的に飛距離が伸び、2017年の全英オープン以来、優勝から遠ざかっているスピースは、今年に入って何度も優勝争いに絡んできている。マスターズ2勝目を狙うふたりにも注目だ。

プロV1/プロV1x

「プロV1」は、よりソフトな打感で、ロングゲームではより低スピン。風に負けない強い弾道で飛距離性能を最大限に引き出すとウェブ・シンプソンをはじめ多くのプロが使用。「プロV1x」は、さらなる飛距離性能と理想的な高めの弾道を実現。ロングゲームでは低スピンで、グリーン周りでのより優れたスピンコントロール性能とさらにソフトな打感を兼ね備えている


Masters’ Ball #4
スリクソン『Zスター/ZスターXV』

初速が速い! スピン性能も申し分ない」

昨秋からスリクソン「ZX」シリーズのドライバーを使っている松山英樹。今年2月のジェネシス招待から、ボールも新しい「ZスターXV」に4年ぶりにチェンジした。これほど長く前々モデルを使い続けてきたのは、ボールを替えるとドライバーの打感からアイアンの距離感、ウェッジのスピン量まで、すべてが変わってしまうからだ。とくに松山がこだわっているのがパッティングの音だという。

「10年前にアマチュアで初めてマスターズに出たときに使っていたボールが、すごく硬いボールだったんです。パッティングのときに“パチン”と硬い音がして、それがすごく好きだった」と松山。そのせいか、新しいボールをテストするときは必ずパッティングから入り、打音に納得しない限りボールを打つことすらしないという。

「松山選手の根本にはやっぱりマスターズがあって、オーガスタをイメージしてギアも選んでいるんだと思います。ツアー担当者に聞いたのですが、新しい『ZスターXV』に替えてアイアンのスピン量が増えたそうです。やはり硬くて速いオーガスタのグリーンでボールを止めるためには、スピンがしっかり入るボールが必要。彼が選んだのだから間違いないと思います」(レックス)

代々ドライバーの飛距離を追求してきた「ZスターXV」。これまで以上に反発性能を上げることに成功しボールスピードがアップ。ロングショットのスピンを抑え、さらに飛距離性能が向上

松山自身も「新しい『ZスターXV』は、自分が重視しているパッティングの音やフィーリングもイメージどおり。しかもドライバーの初速が速く、それでいてアプローチショットのスピン量も十分」とこのボールに期待を寄せる。では悲願の日本人初のグリーンジャケット獲得を目指す松山に、あと必要なものは?

「新しい『ZX』ドライバーはつかまりがよく、替えてから飛距離も出ているので、総合力が高まっていると思います。あとの課題はパッティングとアプローチ。今シーズンはもったいない凡ミスが多いイメージなので、そこさえマスターズまでに修正できれば勝負になると思います。もうひとつ、オーガスタでの松山選手の鬼門は1番ホール。ここをパーでしのいでスタートできるかが勝負の分かれ目だと思います。節目となる10回目のマスターズ、期待したいですね」(レックス)

松山と同じ「ZスターXV」を使うキャメロン・チャンプ。「ドライバーでのスピン量が前作から抑えられ、アゲンストでの飛距離ロスがさらに少なくなった。自分の飛距離アドバンテージをさらに生かせるボールだ」と語る

Zスター/ZスターXV

反発性能をさらに高めボールスピードがアップした「ZスターXV」。ロングショットのスピンを抑え、飛距離性能が向上。ソフトな打感の「Zスター」はスピン性能と打感がさらによくなった


Masters’ Ball #5
ブリヂストン『ツアーB X/XS』

400Y時代の扉を開くボール

3月のアーノルド・パーマー招待の最終日では左ドッグレッグの6番パー5で377ヤードの湖越えを成功させ軽々とバーディを奪い、昨年9月の全米オープン以来の今季2勝目を挙げたデシャンボー。

「彼は2本のドライバーを使い分け、重いほうはスピン量3000回転くらいでキャリーは出るが曲がりも大きい。軽いほうは2000回転くらいで重いほうほどキャリーが出ないがコントロールしやすいと、クラブでスピンコントロールをしているので、いつでも常に同じように安定しているボールが欠かせないんです」(レックス)

「ブリヂストンのボールが、いちばん精度に優れていた」とボールを選んだ理由を語っていたデシャンボー。「アゲンストでもドライバーの弾道が強く、期待どおりの飛距離が出せる。アイアンでも高い弾道を維持しながら、緩やかにキャリーして、着地がソフト」と「ツアーB X」に絶大な信頼を寄せている。

「彼の球は高弾道ですが、スピンが少なく吹き上がらないので、風にも強い。ドッグレッグの多いオーガスタでも、林の上を越えていく、今まで見たことのない攻め方が見られるでしょう」(レックス)

今年から契約フリーで戦っているジェイソン・デイが、新たに選んだボールはタイガーと同じ「ツアーB XS」。これはふたりが親友であることから、デイがタイガーのボールに興味を示し、テストした結果がよかったためだという。そのタイガーは出場することができないが、一日も早い復活が待たれる

ツアーB X/ツアーB XS

デシャンボーが選んだ「ツアーB X」は芯を感じるしっかりした打感で、風に強い弾道と高い飛距離性能を持つ。タイガーやデイが使う「ツアーB XS」はフェースに吸い付くソフトな打感で、ショートゲームで安定した高いスピン性能を発揮する

週刊ゴルフダイジェスト2021年4月20日号より