「ゴルフは『どこに止めるか』のゲーム」“飛ばないボール”への規制、賛成派&反対派の意見を一挙公開【ニッポンゴルフ実態調査】
日本のゴルファーの実態や実情をアンケート調査によって明らかにする「ニッポンゴルフ実態調査」。今回は、昨年末に正式発表されたボールの規制について、一般ゴルファーの意見を集めてみた。
2028年1月から施行されることが決定したボールの新たな規制について、一般ゴルファーにアンケートを行ったところ、意外にも賛成派が過半数を占める結果に。ここからは、反対派、賛成派、それぞれの意見を詳しく見ていこう。
>>前編はこちら
- 日本のゴルファーの実態や実情をアンケート調査によって明らかにする「ニッポンゴルフ実態調査」。今回は、昨年末に正式発表されたボールの規制について、一般ゴルファーの意見を集めてみた。 昨年末に、R&AとUSGAが、2028年1月からボールの規制を実施することを発表した。新しい規制のもとでは、PGAツアーレベルの選手で13~15ヤード、平均的なツアープロや男子の競……
“飛ばないボール”反対派の意見
「反対派」の意見で最も多かったのは、やはり「飛ばなくなること」へのゴルファーとしての悲哀。
●「ゴルフの楽しみの一つはドライバーの飛距離だから」
●「年齢とともに飛距離が落ちてきているなか、飛ばないボールでさらに飛距離が落ちると非常に厳しい。ゴルフに対するモチベーションが下がる」
●「飛ばすことの気持ちよさはゴルフの魅力の中でも最大ともいえるもの。アマチュアはプロのようにコース設計に影響を与えるほど飛距離が伸びているわけでもなく、たとえ数ヤードであっても飛距離を抑えるのは、ゴルファーの楽しみを奪うことになると思います」
●「プロはともかくアマチュアにも規制するのはどうかと思います。プロは飛距離も含む技術を努力して手に入れ、ギャラリーに披露してこそプロ。アマチュアはゴルフを楽しむのが醍醐味」
“飛ばないボール”の採用による、エンジョイゴルファーの飛距離ダウンは5ヤード以下とされているが、1ヤードでも遠くに飛ばすことを無上の喜びとする我々一般ゴルファーには、“飛ばない”を素直に受け入れられるだけの飛距離の余裕はないのだ。
また、プロの試合を観る上でも、「飛び」が楽しみのひとつだという意見も。
●「アマチュアは、気持ちよく飛ばしたい。プロの試合は、観客から感嘆の声が出るほどアマチュアとの差を見せてほしい。飛ばなくて良いなら、グラウンド・ゴルフになってしまう」
●「プロツアーを観に行ったときの爽快感が減るのは見応えに欠ける」
なかには商品の価格や性能についての私見を述べる人も。
●「規制強化で用具も入れ替えが必要になり『規制準拠』ボールの値上がりも容易に想像できる。ゴルフをつまらなくしてお金までかかるのは勘弁してほしい」
●「スコアに変化はないがボール価格上昇が心配」
●「レギュレーションのないアマチュアゴルファー界隈では旧規格と新規格が入り混じることになる。
そうなると飛ばないボールを選ぶ理由が見つからない。ボールは飛距離かスピンのどちらかを売りにすることがほとんどだが、これからどう差別化を図るのか疑問」
新しい規制はメーカーにとっても頭を悩ませる問題だが、2008年のクラブの高反発規制の際も、各メーカーは知恵を絞り、規制の範囲内で最大限のパフォーマンスを発揮するべくしのぎを削ってきた。ボールの規制もまた、新たな進化のための通過点となるのだろうか。
“飛ばないボール”賛成派の意見
続いて、全体の6割超を占めた賛成派の意見を見ていこう。
●「ゴルフ場の広さにも限度があり、これ以上の拡張は難しく、また名門コースのオリジナリティを損なう」
●「オーガスタも年々距離を延ばしているようですが、延ばし続けるにも限界があると思います。2008年にクラブの反発係数を抑えたこともありましたから、それが今度はボールにまで来たということでしょう。アマチュアにはそんなに影響はないと思いますし。仕方がないのかなと思います」
男子ツアーでは300ヤード超えが当たり前となり、フェアウェイバンカーがハザードとして機能しなくなっているホールも少なくない。ティーイングエリアを下げるのも限界があり、ゴルフコースの持続可能性を考えると、飛ばないボールもやむなし、とする意見が多かった。
また、プロの試合では飛ばし合いではなく技術で魅せてほしいという意見も多数寄せられた。
●「道具の進歩が著しくて現在のプロゴルファーの飛距離とゴルフ場のキャパが合致せず、ゴルフ本来の技術的な楽しみがなくなってきているように思います。ウェッジによるバーディ合戦やロングの2オンが当たり前でない試合を見たいものです」
●「コースあってのゴルフであり、コースマネジメントも技術のひとつ。このスポーツをその前提に添うものに戻すのであれば、ボールの規制強化には賛成する以外にない」
●「350Yがショートホールみたいになっちゃうのはつまらない」
●「本来は野球と同様にウッドクラブをプロは木製、アマチュアは木製又は金属とすべきだったと考えます。現代のボールを含めた道具の進化はゴルフゲームの技術の向上を妨げていると思います。よってボールによる規制に賛同します」
なかには次のような達観した意見も。
●「規制として全プレーヤーが平等に制限されるなら同じ条件だと思うから」
●「ゴルフはどこまで飛ばすかではなく、どこに止めるかのゲームだから」
「1ヤードでも先へ」ではなく、狙ったところにどれだけ正確に球を運べるかを競うゴルフゲームの本質を突いた回答だが、一般ゴルファーがこの境地に達するのはなかなか難しい……。ほかにも次のような意見が挙げられた。
●「必要だと思う。ただし、今あるボールの在庫をどうしましょう」
●「他の競技と同じく統一球に移行したほうがいい」
●「アマチュアも含めて飛ばないボールにすることに賛成です。40年ほど前にスモールボール(英国仕様)からラージボール(現行仕様)に切り替えた時にも特に問題を感じませんでした」
他のスポーツや商品開発でも言えることだが、何らかの規制が生じることで、新たな素材や技術の開発へとつながっていく。ゴルフの進化のため、ととらえれば、今回のボールの規制も前向きに考えられるだろう。
Q2. ボールを選ぶ際の基準は?
今回、“飛ばないボール”の是非を聞くにあたり、ゴルファーがボールに求める性能についても併せて調査した。ボールを選ぶ際、ゴルファーは何を重視しているのか。結果は以下のグラフの通り。
最も多かったのが、「打感が軟らかい」こと。実に半数近くの人が打感の軟らかさを重視していることが分かった。「飛距離が出る」こと(25.3%)や「アプローチでスピンが入りやすい」こと(19.2%)は二の次というのは意外だが、今回の“飛ばないボール”に反対派が少なかったことからも、ゴルファーはボールに対してそこまで飛距離性能を求めていないということがうかがえる。
いずれにせよ、2028年のボール規制後、ゴルフボールはどのような進化を遂げていくのか。期待とともに注視していきたい。