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【クラブ駆け込み寺】Vol.3「冬はアプローチのスピンが入らない。ウェッジを替えたほうがいい?」

“頑固オヤジ”が勇退し、あとを継いだのが練習場で小さな工房を営む通称“アニキ”。今回は「冬になるとアプローチでスピンが入らない」という相談が寄せられた。

ILLUST/Kochi Hajime

前回のお話はこちら

Q. 冬場になるとアプローチが止まらない
ロフトを増やしたほうがいい?


冬になるとアプローチの距離感が合いません。もっとスピン量を安定させるには、グルーブ(溝)が利いたウェッジに替えるか、ロフトを増やしたほうがいいでしょうか?


冬はスピンに頼らない

暖冬になりそうという予報でしたが、やはり冬のコースは寒いですね。先日のラウンドでは、早朝はグリーンに霜が降りていて、カチカチ。昼近くになるとそれが解けて湿った状態。2打目は手前から攻めるにしても、アプローチやパットの距離感はなかなか合いにくい。その対処法の相談も、この時期は結構多いです。

「アプローチはもっぱら58度のウェッジでこなしているんですけど、冬場はなかなか止められなくて。60度とかは難しそうだし、最新のグルーブ(溝)設計のウェッジとかに替えたら、スピンが増えてランを抑えられるようになりますかね?」

90を切る腕前ということで、打ち方は安定しているようですが、道具でスピン量を増やす発想は避けたほうがいいと思います。

「打球の止まり具合は、グリーンの硬軟だけでは決まりません。冬場はボールのライがペタペタだったり、枯れたラフだったりするわけです。バウンスの跳ね具合も含めて、スピンコントロールを期待するのは、難しいんです」

できれば転がしで寄せたいところですが、バンカー越えなどではそれも無理。ベターなのは、ランの少ないピッチ&ランを上手く打てるように工夫することです。

「なまじグルーブが利いてスピンがかかりすぎても、ショートするだけ。手で放るようなスピード感で高く上げられて、トン、トロトロと転がっていくようなスペックを考えてみてください」

逆にスピン量を抑えつつ、高さをやわらかく出すのならボールを見直すのも一手。

「どうせ寒さで打感も変わるので、ウレタンではない少し硬めのカバータイプのボールを試すのもいいです。コアがソフトな3ピース構造のディスタンス系がベターですね。冬場の飛距離ダウンも抑えやすくなります」

52度や54度で高さを調整

早速、今回の相談者さんとアプローチ練習場で試打することに。ウチの練習場は結構設備が充実していて、ほかにバンカー練習場と練習グリーンも併設されているんです。いくつかのボールを試していると、種類によって打感や打音はもちろん、高さの出方が違うことがわかります。

「少し高さが出すぎて、違和感があります。下を潜って、“ポッコン”を打っているような手応えだし……」

「その手応えでいいんですよ。打球のスピード感と高さで、ソフトに落とせます。ただ、頼りなくて距離感が出しにくいようなら、今度は違うロフトに替えてみましょう」

58度を使っている人は、大抵52度とセットにしていますよね。52度を少し開くと、バウンスも利いて抜けやすくなるし、高さの抑えも調整しやすくなります。

「フェースを開くのが苦手なら、ロフト54度前後のウェッジを加えるのもアリです。ただし56度は避けるのが無難。というのも、ウェッジの中で56度は52・54度に比べてバウンスの強いものが多く、冬場は跳ね過ぎやすいです。58度で慣れている人には、オススメはできませんね」

相談者さんは、愛用の52度を少し開くのがしっくり来たよう。ボールはブリヂストンの『スーパーストレート』が気に入ったようでした。

「2ピースは石コロみたいに硬いのがあるけど、3ピースはそれほどでもないんですね。食わず嫌いでしたけど、ほかのも試してみます」

以前“頑固オヤジ”さんに聞いた話です。永久シードの杉原輝雄プロはキャスコのサーリンカバー3ピースで勝利を重ねていましたが、アプローチで止まりにくいのでは、と尋ねられたときに「いずれ止まりますがな」と答えたそうです。

スピンが利かないと止められない、止められないと寄せられない、という発想の逆。球足(ラン)をコントロールする考え方は、冬場のグリーンでこそ生きてくると思います。グリーンが硬くなっても、アタマはやわらかく使ってみてください。

月刊ゴルフダイジェスト2024年2月号より