【頑固オヤジ】Vol.169「新調したアイアンのPWが飛びすぎてしまう。単品ウェッジを買うべき?」
東京下町でゴルフ工房を営む店主がギアに関する悩みに答える連載「頑固オヤジのクラブ工房」。オヤジさんもそろそろ体力的に厳しくなってきたということで、その後を引き継ぐ“アニキ”が初登場!
ILLUST/Kochi Hajime
Q. 買い替えたアイアンのPWが飛びすぎる
ロフトを寝かす? 単品ウェッジを入れる?
買い替えたアイアンセットのPWのロフトが45度。これでは飛びすぎるので、ロフトを寝かすか、単品の46度のウェッジを買うか迷っています。両方のメリット、デメリットを教えてください。(44歳・HC8自営業)
たった1度でも飛距離は変わる
9月に入ったのに、まだ暑い。今日は練習場の工房に来てるんだけど、打席のほうに出る気にはならねえな(笑)。
「オヤジさん、読者からの質問、持ってきましたよ」
担当さん、オイラがこの練習場に通うようになってから、こちらに顔を出すのは2度目。
「ああ、ちょっと待ってな、ここの“アニキ”も呼ぶから」
担当さん、編集長と話し合って、当面オイラと練習場の工房の店主に、読者の質問をぶつけることにしたんだと。ああ“アニキ”てのは店主のことな。もう40過ぎだけど、オイラのとこに教わりに来ていたころの印象が強くてね。昔からそう呼んでるんだ。
「今回はシングルさんから。買い替えたアイアンのPWが飛びすぎるので、ロフトを寝かすか、流行りの単品ウェッジに取り替えたほうがいいか、という相談です」
「前に使っていたのが46度で、新しいのが45度、か。で、飛びすぎるからチューンしたい、と」
「実際、ロフト1度でそんなに変わるものですかね?」
「ヘッド重心位置とかバウンスの違いで、ロフト差以上に飛距離が変わることもあるよ。だからロフトを寝かすだけじゃなく、バウンスを削る必要もあるかもな」
「オヤジさん、ウェッジの飛距離はハンドファーストの度合いとか、打ち方でも結構変わりますよ。実際に打つところを見てみないと、正しいチューンはできないと思うんですけど」
おっと、ここで“アニキ”が登場。練習場で、打たせてチェックするチューンを生業にしているから“机上の空論”は許さない、て感じかな。至極まっとうだよな。
ウェッジとアイアンの違い
担当さん、口を挟んできたよ。
「それなら、単品ウェッジに取り替える、という選択は? 最初からロフトにこだわらず、打ちたい距離用に購入できるのでは?」
「ウーン、それはそうなんだけど、使い方のイメージが違うからなあ……。ですよね、オヤジさん」
「そうだな、PWをアイアンのように使いたいか、ウェッジのように使いたいか。そこが明確になっていないと、な」
アイアンは基本的にフルショットが基準。ヘッド形状もバウンスも、スクエアに構えて使うようにできている。コントロールショットにしても、フェースの開閉ではなく、持つ長さを変えたり、振り幅の加減で行う。
ウェッジの場合は、フェースの開閉での加減が基準。同じ振り幅でも弾道の高低やスピン量を変えてコントロールする。
当然ヘッドは、アイアンはリーディングエッジがストレートでシルエットは角張っており、ウェッジは開いても違和感のない丸みを帯びたシルエットが主流。
「相談者は、飛びすぎを嫌っているんだから、フルショット基準で考えているはず。だったら、アイアン形状のPWのほうがいいはずだと思うんだよ、オイラは」
「もちろん、単品ウェッジでもいいと思うんですけど、コースではついフェースを開いて構えたりして右に外したり、ショートするミスの傾向が出やすくなると思うんです。だから、安易にはオススメできないんですよね」
まったく“アニキ”の言うとおりだよ。
「では、PWのロフトを寝かせるチューンを、試打で確認しながら行うのがベター、ということで」
「ま、そうなんだけど、もっとカンタンなのは前のPWをそのまま使うことさ、それがベストだろうな」
「オヤジさん、それは言っちゃダメでしょ(笑)。まあ、シングルさんのスコア作りの生命線はウェッジとパターだから、新調は慎重に、ってことですよね」
オイ、ダジャレはやめろよ(笑)。
月刊ゴルフダイジェスト2023年11月号より