カーヌスティもセントアンドリュースも…スコットランドの名門リンクスに迫る水没の危機
スコットランドのリンクスコースにとって、温暖化と気候変動は非常に深刻な問題だ。
先の11月中旬から下旬にかけてスコットランド北東部を襲った集中豪雨で、全英オープンのローテーションコースであるカーヌスティゴルフリンクスが水没した話を耳にした人もいることだろう。
この豪雨は同コースだけでなく、たとえばファイフにあるグレンローセスGCではクラブのヘッドプロがゴルフコースで泳いでいる写真を掲載。サン紙は「プロショップは時間を短縮してオープンし、スイミングレッスンの受け付けをしている」というヘッドプロのジョークを紹介している。
ファイフといえばセントアンドリュースはじめ多くの名門コースが軒を連ねるが、水没しないまでもダメージを受けた所は少なからずあったようだ。
ただ、異常気象と温暖化の問題はジョークでは済まされない。かねてからこの地域は水没危機にさらされているといわれ、これは前兆に過ぎないという見方もある。
セントアンドリュースから車で北へ1時間ほどの海岸線にあるモントローズGLでは、海岸線の侵食によってコースが失われつつある。同クラブの元会長ジョン・アダムズ氏によれば、「70年代には年間1メートルほどだった侵食スピードは現在2~3倍になった」とし、大潮や強風が重なればモントローズの街自体が水に沈むと危惧している。
にもかかわらず、1万3000マイルの海岸線をもつスコットランドで防波ブロックや岩を敷設するには、コストがかかりすぎるので難しいというのだ。
英国の研究グループが昨年発表したところによれば、早くて2050年には海面上昇の影響により、セントアンドリュースもカーヌスティも、そしてモントローズも水没する可能性があるという。
このまま何もしなければ全英オープンをセントアンドリュースで開催できなくなる可能性だってあるのだ。
週刊ゴルフダイジェスト2022年12月20日号より