Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • コース・プレー
  • オールドコースにカーヌスティ…12日間でリンクスを10ラウンドした66歳のスコットランド旅日記

オールドコースにカーヌスティ…12日間でリンクスを10ラウンドした66歳のスコットランド旅日記

今年の9月初旬に、「ただひたすらスコットランドのリンクスコースでプレーを楽しみたい!」と思い、かの地に向かった読者から、旅先での思い出をつづった旅日記が送られてきた。ゴルフ中心の第2の人生を楽しむと決意した66歳の12日間の物語。

PHOTO/本人提供、小誌写真部

玉井尚治さん(66)

たまいしょうじ。ゴルフ歴は約35年。退職後は世界ゴルフ旅をしたいと思い、還暦を機に真剣に英語の勉強を開始。今年7月に英検1級に合格。有馬CC所属(JGA/USGAハンディキャップインデックス9.1)

Day2~Day3●スコットランド西海岸

エディンバラ空港到着は9月3日22時頃。日本時間は4日の午前6時。時差ボケで頭がボーッとしている。この日の宿は空港からほど近いホテル。寝酒にビールとウイスキーのオンザロックを飲み、スコットランド1日目が過ぎていった。

初めてのリンクス地面と風に四苦八苦

2日目は朝8時半にホテルを出発。レンタカーで西海岸を目指す。交通事情は日本同様、車は左側通行なので運転しやすい。スコットランドでの初ラウンドは今年7月に古江彩佳プロが米女子ツアーで初優勝を飾った「ダンドナルドリンクス」。昼前にゴルフ場に着いたが、実に素晴らしいゴルフ場だった。

初めてのリンクス。まずは豪華なクラブハウスに驚かされる。練習場は広く、芝から打てるのもさすが本場といったところ。コースはフェアウェイもグリーンも硬くて速い。グリーンに着弾しても落とし所が悪いと30ヤードも転がり、グリーン外へ弾き出される。ラフは30センチほどの深さで、打ち込んだら簡単にロストになる。ポットバンカーも避けて打ちたいが、蟻地獄のように吸い込まれる始末。ボロボロになったが、天気は快晴、楽しいし爽快な気分だ。

3日目は全英オープン開催コースのロイヤルトゥルーンオールドコースを午前中にプレー。こちらもコースはひざまである深いラフと、たこつぼのようなポットバンカー、そして、硬いフェアウェイとグリーン。

「凄い」の一言しかなく、ただただ感動した。この日も素晴らしい快晴だったが、体感では常時10〜15mくらいの強風が吹き荒れ、翻弄された。ポットバンカーから出すまで5回叩くなど、スルーで4時間半もかかった。ラウンド後、重厚感溢れるクラブハウスで昼食を食べ、午後は併設のポートランドコースを回ったが、オールドコースよりやさしく感じた。すべて歩きで、万歩計の数字は4万5000歩。帰りは疲労困憊して倒れそうだった。ホテルに戻り美味しいシーフードを満喫して、ビールをしこたま飲んで、ベッドに倒れ込むように寝た。

(左)深く小さいバンカーはプレーヤーを悩ませる。海風とバンカーに向かって傾斜するフェアウェイにより、勝手に転がり込んでしまうのが難点/(右上)日本のコースにはない、ひざまであるラフは入ったらロスト確実で、見つけられてもフェアウェイに出すのが精いっぱい/(右下)プレー後にメンバー同士が必ず談笑するのが本場のゴルフ。基本的にどのクラブハウスにもバーカウンターがあり、アルコールが提供される

Day4~Day5●セントアンドリュース Part1

4日目はトゥルーンからセントアンドリュースまでレンタカーで移動。セントアンドリュースのオールドコースは今年、第150回全英オープンが開催された“ゴルフの聖地”。今回の旅の最大の目的地でもある。

オールドコースでの洗礼。スタートまで13時間待ち

オールドコースでプレーするために今回は(1)プレー日の2日前に行われる抽選に応募、(2)早朝から並ぶ、の2つにトライ。まず抽選だが2日前の14時に締め切られ、17時過ぎに結果発表されるという。当選すれば翌々日にプレーができるので、早速申し込んだが、結果は残念ながら落選。翌日は早朝から並ぶつもりで、早々に就寝。5日目は2時に起床。急いで身支度を済ませてオールドコースへ。3時に到着したので一番乗りかと思っていたが、なんと19番目。先頭の人は前夜19時から並んでいたらしい。待っている間に10人くらいと雑談したが、スコットランド人はいなかった。6時半に受け付けが始まり、スタートは7時から10分間隔で、最終スタートは16時10分。1組4人だが、2サムや3サムで予約している組に順番待ち1番から入れて貰う。6時半の段階で予約表には合計12人の空きスペースがあり、順番待ちの12番まではプレーできそうだが、その後は、キャンセルがあればということで、私の19番目は微妙らしい。

スタート小屋で待っていても仕方ないので練習場へ。広いドライビングレンジ、グリーンが5つあるアプローチ練習場、ショートコース、パッティンググリーンがあり、素晴らしい環境だ。13時に戻り、受付で聞くと17番までが既にスタートしており、19番の私と20番の友人はプレーできそうだと意気込んだ。

しかし、それ以降キャンセルがピタッと止まってしまった。受付にどうなっているか聞くと、「最終の16時10分スタートは3人組だが、3人で回りたいと言っているので入れない。ほかは全て4人で難しそう」と言われた。もう駄目かと諦めかけたときに、「15時50分のスタートに1人空きができたが、どちらがプレーしますか」と聞いてきた。友人と相談して、コインをトスして表か裏かで決めることにした。私は表、友人は裏で、結果は裏。喜んで出て行く友人を茫然と見送った。

友人がプレーしている間、4時間も何をして時間をつぶそうかと考えていると、受付が「せめて景色だけでも見たいだろうから、友人に付いて回っても良いですよ」と声をかけてくれた。友人を追いかけて1番グリーンにたどり着くと、突然、スターターがカートで追いかけて来て、「お前、プレーできるぞ、俺のカートに乗れ!」と叫んでいる。何が何だかわからないが、カートに飛び乗り、1番ティーイングエリアに戻った。最終組の3人に「午前3時から待っていたかわいそうな人がいるけど、やはり入れませんか?」と聞いてくれて、快諾してもらったという。3人にお礼を言い、慌ただしくティーショットを打った。この現実がまだ信じられなかったが、感動しながらラウンドが始まった。

スタートする時にキャディを頼んだが、間に合わず、1番グリーンに着く頃にキャディのネルソンさんが追いついた。フェアウェイがどこにあるのかもわからないホールが多く、初めてのラウンドにはキャディは絶対に必要だ。2番のティーショットを打って歩き出した時に、自分は本当に、ここでプレーしているのだと実感して、感動の余り不覚にも目頭が熱くなった。一緒に回る3人組は地元の若者で気持ちのいいゴルファーだった。

この日も体感では10m以上の風が吹き荒れている。巨大バンカー、硬いフェアウェイ、入ったらボールが見つからない深いブッシュ、「凄い!」の言葉しか出ないが楽しい。18ホール、ずっと感動が続いた。17番では、オールドコースホテル越えのナイスショットが打てた。18番ではお約束のスウィルカンブリッジの上で記念撮影。

セントアンドリュースオールドコースでプレーできたのは、奇跡としか考えられない。神様が与えてくれた奇跡だ。神様と受付の女性、スターター、一緒にラウンドしてくれた地元の3人組に感謝の気持ちでいっぱいだ。

【16:10】
最終組で念願のラウンド!

Day6~Day9●セントアンドリュース Part2

セントアンドリュースにある7コースはすべてパブリック。そのため、オールドコースでもビジターに開放するために、抽選と真夜中から並べばプレーすることができる公平なシステム。ちなみに、オールドコース以外は比較的簡単にプレーできるのが嬉しい。

なんと抽選に当たって並ばずにオールドコース2R目!

6日目は午後にキャッスルコースを予約。2008年にできたセントアンドリュースの最新コースだ。午前中はショートコースで練習し、オールドコースの抽選に申し込んでからコースへ。海沿いの断崖絶壁の上にあるゴルフ場は、海越えのパー3と風が強いことで知られている。ラフが深く、グリーンは起伏が激しく、猛烈な風が吹き荒れてヘトヘトになった。

7日目の朝起きてメールをチェックすると、なんと明日の11時50分スタートで抽選に当選! 聞いた話では抽選に当たる確率は10%程度ということだったので、また奇跡が! 今日はセントアンドリュース市街地にあるコースのうち、最も海に近いジュビリーコースを2ラウンド。強烈な風で体感的には15m以上かもしれない。タフなコースだが、平坦な地形なので、それほどの疲れはなかった。

8日目は再びオールドコースでプレー。前夜9時から並んだという米国から来た2人組とのラウンドになった。彼らの順番待ちは6番目だったそうで、ここには本当にたくさんの愛すべきゴルフバカがいる。2回目の今回は落ち着いて、オールドコースを味わいながらプレーすることができた。

同伴競技者と17番ホールのティーイングエリアで記念撮影。彼らは初めてオールドコースでプレーするとのことで大興奮。我々は「僕たちは一昨日もプレーしたんだよ」と言って、先輩風を吹かせてみました(笑)。こういう出会いも4人1組でやるゴルフの楽しみですね

9日目はセントアンドリュースから少し南に位置するキングスバーンズゴルフリンクスでプレー。海岸に面したコースで素晴らしく美しいコースだった。プレーの後、セントアンドリュース城跡などを観光し、聖地での最後の一日を楽しんだ。

Day10~Day12●カーヌスティ~エディンバラ

10日目。セントアンドリュースの街並みに後ろ髪を引かれつつ、北海を挟んで20キロ北にあるカーヌスティへ。全英オープン開催コースとして知られるカーヌスティゴルフリンクスでのラウンドだ。

強風のカーヌスティとエディンバラ観光

カーヌスティゴルフリンクスは全英オープン開催コースのなかでも屈指の難コースとして知られるが、私もその洗礼を受けた。風速は今回の旅で感じたことがないほどで、おそらく20m近くあったように思う。正直、立っているのが難しいほどで、ゴルフにならず、あまりの難しさに、お手上げだった。この日で最後のラウンドとなったが、リンクスで10回もラウンドできたのは本当に嬉しいことだった。クラブハウスで昼食を取り、エディンバラに向かった。

11日目。明日は帰国なので、この日はエディンバラ観光。エディンバラ城や旧市街、ウイスキー博物館などを見て回った。市街観光中に8日目に一緒にラウンドした米国人のダニーさんと偶然再会。こういう巡り合わせも旅の楽しさのひとつだ。この日は、ちょうどエリザベス女王の棺の移送日だったので、市街観光もほどほどにエリザベス女王が眠るエディンバラのセント・ジャイルズ大聖堂の前で2時間ほど待って見た。幾重にもおよぶ沿道の人垣に、女王は国民に非常に愛されていたことを強く感じさせられた。

12日目。ついに最終日。6時10分発なので、4時にエディンバラ空港着。コロナ禍のため空港職員が少なく、チェックインまで長蛇の列。まったく進まず、出発時間10分前に、搭乗。あっと言う間に終わってしまったが、実に楽しい12日間のゴルフ旅だった。

週刊ゴルフダイジェスト2022年11月15日号より