Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • 月刊GD
  • 【陳さんとまわろう!】Vol.227「スクエアグリップでゴルフが格段に進歩しましたよ」

【陳さんとまわろう!】Vol.227「スクエアグリップでゴルフが格段に進歩しましたよ」

日本ゴルフ界のレジェンド、陳清波さんが自身のゴルフ観を語る当連載。今回のお話は、松山英樹のマスターズ制覇について。

TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ

前回のお話はこちら

クラブフェースをきちんとターンさせられる握り方

――フックグリップだった陳さんがスクエアグリップに修正することによってダウンブローショットが打てるようになったという話。

陳さん はい。ダウンブローショットはインパクトゾーンでクラブフェースに閉じる動きを入れないと上手く打てないんですよ。ダウンスウィングで右を向いて下りてきたクラブフェースをインパクト後に左を向くようにターンさせるわけね。こうやると、アイアンの場合はボールにクラブヘッドが当たった後にボールの先のターフが削り取られて、きれいに抜けてくれるんだ。これでダウンブローショットが成立するわけよ。それを、クラブフェースをターンさせないで目標方向に向けたまま振ったらね、インパクトの先でクラブヘッドが突っかかるの。だから抜けが悪くなるし、これはダウンブローショットとは言わないんだねえ。

――その、クラブフェースをターンさせることができるのがスクェアグリップということなんですね。


陳さん そう。フックグリップでターンさせたらクラブフェースが返りすぎて引っかけボールが出るんだ。それでフックグリップにしていた淡水時代に苦労したんだよ。どうしてボールを引っかけるのか、それがわからないんだ。グリップのせいだって思わないから。技術書はないし、先輩プロもフックグリップでフックボールを打って悩んでいたし。(笑)それが川奈に来て陳清水さんや石井茂さんにスクエアグリップを教えてもらってダウンブローショットが上手くできるようになったわけよ。石井さんは面白いんだ。「スクエアグリップはベン・ホーガンより先に覚えた」って言うわけ。というのは戦後、進駐軍の将校たちが占領していた川奈でゴルフをやっていて、それがみんな上手いんだって。一緒に回りながら将校たちのスクエアグリップを覚えたということらしいよ。

――川奈で修業した成果がすぐ表れて、陳さんの師匠の陳金獅さんもずいぶん驚いたそうですね。

陳さん 半年でそんなに変わるものかってね。それで金獅さんもフックグリップからスクエアグリップに変えたんだ(笑)。というのは金獅さんのショットはゲーリー・プレーヤーの先生のボビー・ロック(全英オープン4回優勝)みたいに、右のフェアウェイに飛び出したボールが左のフェアウェイまで曲がるぐらいのフックボールを打っていたからね。

――スクエアグリップを身に付けてから陳さんのゴルフは格段に進歩。

陳さん 何をどうすればどういうボールが出るとかね、わかるようになりましたよ。たとえばボールを引っかけるようになったら下半身の動きが悪くなっているはずですから、ニーアクションを使って下半身の左へのスライドを強めるとか、ボールが右に飛ぶようになったら手の返しが少ないと思って左への返しを意識して入れるとかね。

――1954年と55年の2回にわたって川奈で修業して、陳さんはその成果を56年のカナダカップ(現ワールドカップ)で発揮しようとしてウェントワースに乗り込みましたが、結果は個人30位タイでした。

陳さん はい。スクエアグリップを身に付け、ダウンブローショットに磨きがかかったといっても、まだまだ不完全なものでしたからね。世界中から一流の選手が集まってきている中で、私の存在は本当に小さなものでね。優勝したベン・ホーガンのスコアが277、私は307だよ。30打も違っているんだもの。

陳清波

ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた

月刊ゴルフダイジェスト2022年8月号より