【大人ゴルフの歩き方】Vol.17「歩きラウンドはつらいよ~」
スコアだけがゴルフじゃない! コラムニスト・木村和久が独自の視点から現代の正しいゴルフの在り方を指南。
ILLUST/Shinichi Hoshi
第17講 歩きラウンドはつらいよ~
①ゴルフは歩きが基本だよね~
②でも年を取ると歩きが辛いな
名門コースは歩きという掟
ゴルフ発祥の地、英国がもたらしたゴルフのラウンドスタイルは歩きです。これが1950年代あたりから、アメリカで乗用カートが発明され、こりゃ楽だとなりました。英国から見れば、神が造ったコースをクルマで移動するとは何事だ。ゴルフに対する冒涜と憤慨しています。
そして日本のゴルフ界ですが、まずは英国の思想を引き継ぎます。日本初のゴルフ場が明治時代、英国人主導で開業しました。当然乗用カートなんてない時代、歩きが当然のラウンドスタイルでした。
現在は乗用カート全盛ですが、今でもかたくなに歩き文化なのが超名門クラブです。何も知らないで呼ばれたゲストは、3万円も払ったのに乗用カートがないと憤慨です。それって屋根のないオープンカーが高額なのと、一緒の考えかも。庶民にとっては理解しがたいですね。
建前はそうですが、最近は本音もチラリ。歩行が難しいプレーヤーに乗用カートを認めないのはいかがなものかという意見もあります。だから状況次第で乗用カートを認める事例が増えています。小学校の運動会が近隣騒音とみなされ、縮小になる昨今。何が常識かわからない時代になりました。
●こりゃ楽
アメリカは太めの方が多いですから、凄く助かります。コーラとハンバーガーの国です
●オープンカー
オープンカーは屋根がない分、剛性をしっかりしてるから高いのよね~
●常識
都心周辺の住宅池を占有する、名門倶楽部の存在はどうなの?という考えはある。だから名門は地域開放デーなどをして、近隣住民との友好を試みている
●超名門クラブ
入会時1000万円以上払って歩き。払ったお金は何に使われるんですかね。しかも入会金、預託金が払いっきりのところも。もはや「金持ち歩こう会」という団体かも
乗用カート無双時代の到来
平成になって開業したコースでも、歩きプレーのみにしている倶楽部があります。以前、連れてってもらい唖然としました。クラブハウスになんぼ金かけてんの。だったら乗用カート導入だろうと思いますけどね。
いかに乗用カートが偉大か、まだよくわかってない方がいるので説明したいと思います。日本のコースは丘陵と山岳コースが8割、アップダウンがそこそこあって当たり前です。そこに導入されたのが乗用カートです。
きつい上りやインターバルが長いコースにとっては、神風が吹きました。「山登り」といわれていたようなコースが、一夜にして「多彩なショットを要求される、趣のあるテクニカルコース」に早変わりしたのです。
日本のゴルフ場の8割を救った乗用カート、その後、とんでもない発展を遂げます。まず、ナビゲーションパネルの普及です。正確な距離がわかるし、OBや池などレイアウトも一目瞭然。キャディに聞くより、パネルを見たほうが早いのです。しかも、スコアも記入できる優れものです。
安全面では前の組の位置も教えてくれます。これで打ち込んだりするのは、ただの嫌がらせでしょう。
結果的にキャディがいらなくなったのです。さらに乗用カートは、突然の雨にも強いし、真夏の暑さ、冬の寒さにも強い。荷物も満載できるし、言うことなし。
正直言えば、時々歩いてラウンドしたい気持ちもありますが、乗用カートで育った世代はもやしっ子です。1ラウンド歩きのプレーをしたら、もうヘロヘロで翌日、起きられないのです。だから乗用カートに乗りつつ、時々歩くのがよろしいでしょう。
ちなみにスマホの万歩計を利用している方、スマホを乗用カートに載せたまま、プレーしていると全然仕事をしませんよ。スマホはウェアのポケットかポーチに入れて、持ち歩くようにしましょう。
●クラブハウス
英国の倶楽部はクラブハウスも質素で慎ましい。日本は高級外車で来て、クラブハウスが豪華で、飯も豪華で風呂も立派。夜も豪華だしさ。矛盾してないか
●いらなくなった
最近はピンを立てたままパターを打つので、ボールを拭いたり、バンカーならしたりするだけのキャディ業務になりつつある
●ヘロヘロ
歩きラウンドした時の帰りは眠い。結局、名門倶楽部のゴルファーは、運転手に送ってもらってるからね
●仕事をしませんよ
スマホの万歩計を乗用カートに載せておいては、いけません。あらぬ疑いをかけられます
●趣のある
登りコースが乗用カート導入で、「14本のクラブすべてを駆使するダイナミックなコース」「大自然の景観に包まれた戦略性豊かな18ホール」に変身。ものは言いようだ
今月のまとめ
金持ちは金かけてダイエットし、貧乏人ほど太る時代。
貧乏人は乗用カートに乗り金持ちは本来の歩きゴルフを楽しむ。
清貧は金持ちの特権か、パラドックスやね
教える人/木村和久
ゴルフ歴32年のコラムニスト。ベストスコア75、2001年鶴舞CCキャプテン杯優勝。『89ビジョン』など新しいゴルフの楽しみ方を様々提案する自称「ゴルフ生活評論家」
月刊ゴルフダイジェスト2022年8月号より