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【林家正蔵の曇りのち晴れ】Vol.280「還暦ゴルフコンペの巻」

僕も12月でとうとう還暦を迎えてしまいます。一般的なサラリーマンの方は定年退職に向けていろいろなセカンドライフを思い浮かべながら過ごしているのではないでしょうか。まあ僕の場合は、話せなくなるまで仕事は続くのですが……。そんななか、還暦を集めたコンペが先日行われました。やっぱりゴルフはいいですね

ILLUST/アオシマチュウジ

前回のお話はこちら

定年前に退職した友人がアフターライフを楽しむ

今年で還暦を迎える。昭和37年、1962年の12月生まれ。寅年である。自分でも自分の年齢が信じられない。会社員の友人は、定年があるので勤務を終えたら第二の人生をどのように過ごすのかを考えるのであろうが、芸人なんぞを生業(なりわい)としていると、しゃべれる間は現役だから実にのんきに世の中を渡っている。

ゴルフ仲間の友人は、60歳になる前に早期退社に応じて、満期の勤めよりもよい退職金を受け取った。そして都内のマンションも値よく売りさばき、実家のある埼玉県の川越に戻って駅前のタワーマンションの高層階で奥さんと2人、悠々自適の暮らしをしている。

川越近くのコースのメンバーにもなり、多いときは、月に20回ものゴルフ三昧。それまでは、90を切ったこともないのに、近頃は80を切るまでの腕前になった。

もう年だから飛距離はそこそこだが、レッスンと実戦のおかげで、曲がらない。今までは右や左やダフリやトップだと、7番アイアンを持って林の中へと駆け込んでいた。

いわゆるお荷物さんを自認していた友人が、先日も78で回ってきた。ちなみに私は88。勝ち誇ったような笑顔で「いやいや、のんびり暮らしているとゴルフくらいしかやることないし、ワハハハ」と言ってきた。

帰りにマンション近くのレンタル畑で収穫したトマトときゅうりをたくさんくれた。ゴルフ以外の日は、野菜作りに余念がないという。以前は池袋のもつ焼きだ、渋谷の焼肉だ、新宿のもつ煮込みだと、肉しか食べなかった野郎が、とんだ変身をとげたものだ。


還暦コンぺのお誘いに心躍る

そのうえ、駅前のタワマンも価値が下がることもなく、いずれそこも売って超高級養護ホームに入ると、ちゃんと人生設計を立てていやがる。「お前も先をちゃんと見据えて進め。ゴルフも人生もリスクと先を読む。トラブルに備えるのも大事なことだ」とお説教のおまけがついてきたのだ。

その友人から、先日「還暦コンペ」のお誘いのメールが来た。彼のメンバーコースでのコンペ。「その日は私に任せて、できれば車ではなく、電車で来てくれ。バッグはコースに送っておいてほしい」とのことだった。

早朝、私とゴルフ仲間は、午前7時に川越駅に集合した。1組のパーティー。しかも全員が今年で還暦を迎える同い年。その一番手が今日のゴルフを主催した友人であった。仲間が調べたら、彼の誕生日の翌日。つまり60歳になりたてのホヤホヤだ。

ワゴンタクシーが到着して、そのままコースへ向かった。車寄せには、赤いポロシャツ姿の友人が出迎えてくれていた。

早速着替えてラウンド。いいコースである。東京の下町の我が家からドアトゥドアで約1時間20分で着いた。川越はとても便がいい。コースも歴史があり、芝のメンテナンスも抜群であった。

我々はのんべえなので、昼食から生ビールをグイグイ。梅雨の中休みの貴重な晴れ間、気分のいいご機嫌なゴルフだ。私も以前のように飛ばそうなんて考えは毛頭なく、パー5でギャンブルの2オンなんて考えもしない。バンカーも池も避け、刻むところはちゃんと刻む。

長いパー4なら無理せずに3オン、ワンパットを心がける安全運転である。ところが川越に住まいを持つ還暦くんは、やたら冒険するのだ。パー5でも手前のバンカーなんてものともせず、残り230Yをスプーンで挑む。こいつがまた2オンするのだからびっくりしてしまう。「お前、飛距離伸びただろ」と尋ねると、日焼けした両腕をぐいと曲げて、モリモリの筋肉を見せつけてきた。

「いま、週に5回はジムに通って筋トレ。ゴルフに必要な筋トレメニューを作ってもらって、トレーニングの日々よ。おかげで2番手は飛距離が伸びたかな」と白い歯を見せながらにやりと笑ってみせた。「お前、歯も白くなったろ」と聞くと、ピカピカの歯を見せつけながら「月に1度は歯医者でホワイトニングよ」と言ってきた。

以前の友人は、白くてぶくぶくして歯は長きの喫煙がたたり、茶色っぽかったのに。おまけにその日、友人は「68」で回ってきたのだ。「すげーな」と驚くと、「まあいずれはエージシューターを目指そうかな」などと話していた。

友人のおごりに頭が下がる

風呂からあがって、近所のイタリアンでのディナー。オーナーシェフの腕がよく、地元埼玉産のロゼ色のローストポークをイタリアンワインで。勘定は友人がすべて出してくれた。「還暦って60歳になる人が振る舞うもので、人からお祝いされるものじゃないんだって」と言う。ゴルフからディナーまで、すべて彼のごちそうで頭が下がる。

帰り道、次に60歳になる友人が「俺のときは中華だったら日高屋でいいか」と小声で言う。「お前とゴルフができるならバーミヤンでも餃子の王将でも、どこでもいい」と皆笑っていた。人生いろいろ、でも楽し。

還暦の イケイケゴルフに 舌を巻く

月刊ゴルフダイジェスト2022年8月号より