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【ゴルフ野性塾】Vol.1726「教わり上手、真似上手が上達する」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

今日3月15日、火曜日。

起きてから3時間、ドボルザークの新世界ばかりを聴いて過す。女房が呆れた。
「他に聴く曲はないの? 同じ曲聴くんだったら私達が眠っている時か、自分の部屋で聴いて貰えば有難いんですけどネ」
「どんな曲がいいんだ?」
「何でもいいわ。クラシックでも演歌でも何でもOKよ」
そのOKがアテにならぬのだ。
私は同じ曲ばかり聴いて来た。本も同じ本ばかりを読んで来た。
高校1年から30歳頃迄はルソー、ゲーテ、老子を読んだ。2年間は同じ本から離れなかった。その後、新田次郎と北方謙三を読んだ。今は読売新聞だけを読む。
聴くのはクラシック。そして松山千春と細川たかしを聴く。
CD1時間は女房も我慢する。だが繰り返すと文句が出る。特にこの2年間はだ。窮屈です。
私の部屋と居間じゃ音が違う。やっぱり10倍の値段差は正直だ。
今日も晴れ。霞みの空、雲はない。春が来た。
赤坂けやき通り3丁目の桜の花が咲き始めた。15階我が住いのベランダの河津桜は散った。
今日の最高気温21度。
体調良好です。

眼の癖を修正する方法をいつか伝える。

55歳を過ぎたころから老眼が一気に進み、パッティングラインが読めなくなってきました。グリーン全体の大きな傾斜はわかりますが、細かい傾斜や微妙な傾斜が見えにくくなったため、ワンピンのパットが自信を持って打てなくなりました。打ってみてから、「あれ、逆に切れたぞ」ということがしばしば起こります。今後さらに老眼が進むなか、どう対処すればいいでしょうか。(愛知県・斎藤弘幸・59歳・ゴルフ歴30年・HC12)


己の過去と今を分析して気付いた事が一つあります。
傾斜への対応でした。
ティーグラウンドも平らではない。
削って作ったティーであればフラットなれど、土や砂を盛って作ったティーだと、沈む部分は出て来るものだ。
フラットティーを目指してもティーのどこかは沈む。
土か砂を盛る前の基礎が頑丈であっても、盛り土は均等なティーを作らず時と共に沈んで行く。だから盛ったティーはデコボコである。
眼は視力だけを持つものではないと思う。
眼は勘を生む。
遠くを眺め、近くを眺め、そして勘を持つが、パッティング巧者はこの勘を強く持つ方であろう。
私は勘弱き者だった。
だから鈍感に過して来た。

ジュニア塾生の最初のコースラウンド時、1番ティーに塾生を集めた。
私は問うた。
平成5年8月開塾の熊本塾、6年開塾の札幌塾、8年開塾の福岡塾、10年開塾の東海塾、11年開塾の神戸塾、そして13年開塾の船橋塾の一期生全員に問うた。
「今、お前達の立っているのをティーと言うが、ゴルフはここから始まる。練習場の打席は平らだが、コースのティーは必ずしも平らではない。このティー、平らか平らでないかを教えてくれ」
熊本塾、入塾して3カ月過ぎた一期生14名は真剣な表情で自分の立つティーを眺めた。
平らです、と言う子がいた。
デコボコしてます、と言う子もいた。
ここは平らでここはヘコんでます、と言う子がいた。
私はパターは教えなかった。
私のスウィング理論を子供達に教えるコーチは3人いた。
笠清也と伊藤龍志と堀田宏樹だ。3人共、ハンディゼロだったがパット下手だった。
私は彼等よりも下手だったから、塾生は最初からパット抜きのゴルフを教わった様なものである。
コースラウンド3回終えた後、私は指示した。
「パットとアプローチはお前達の工夫に任す。上手い人の打ち方を盗め。そして教われ。頭を下げて困る事のないのがゴルフだ。上手くなるかならんかは頭を下げた数で決まる。下手が頭を下げる事をしなかったらいつ迄も下手のままだ。ゴルフは教わり上手、真似上手が早く上達するゲームだからな」

私は24歳でゴルフを始め、27歳でプロテストに通ったが、研修生生活3年と11カ月の間、私のパットは強く打つだけだった。
ゴルフ始めた時から傾斜は見えなかった。
だから強く打った。
3パットは多かった。
しかし、研修生にしてはバーディの数、多かったと思う。
「君のパット見てると怖いよ。そこ迄、強く打たなきゃいけないのかネ? パーオンしたら全部バーディ取るつもりになっているのかな」と研修会で一緒に回った人の指摘、幾度も受けた。
傾斜が分らず真っ直ぐ強く打っていた。
フックかスライスは傾斜が教えるし、速いか遅いかも傾斜が教えるものなれど、読んでも分らないのであれば曲る前に入れてしまえとの発想は起きる。
プロになればキャディさんの付く試合に出られる。
それ迄は己でバッグ担いで己のラインは己で読むゴルフなれど、プロになればパット巧者になれると思って強く打っていた。
3パットの怖れはなかった。
5メートルを外してバーディ取れないゴルフを怖れた。
そしてテストに通った。
私のプロテスト合格の同期は3人いたが、私は2位の合格者を4打離してトップ合格した。
36ホールのテスト、2イーグル、3バーディ、1トリプルボギー、4ボギーのパープレーだった。4ボギーは3パットボギーである。
そして、ツアー参戦した。
グリーン上に怖れが出た。
3パットを怖れた。
キャディさんに助けて貰おうと思ったが、3パットを怖れれば強く打てなかった。
そして、予選通るか通らぬかのゴルフが続き、グリーン上の怖れと疲れは増えた。

塾一期生、傾斜の見える者と見えない者はいた。
見える者はプロになった。
昨年迄の塾出身のプロテスト合格者は95名。
塾生以外に指導した者15名もプロテストに通っており、私のスウィング理論でプロになった者の数は110名。塾出身者でシード取りし者は男1人の女12人の13名。やっぱりパターは下手との声を聞く。

貴兄は傾斜が見えている人だ。
私も老眼持ちだが、老眼になっても傾斜読めぬゴルフは続いていた。
貴兄が羨ましい。
大きな傾斜読めるだけでも幸せではないか。
私なんぞ、ボール側から見れば右曲りのスライス、ならばカップ側から見てみると、これが何と同じ右曲りのスライスに見える事、幾度もあった。
スライスラインは反対側から見ればフックとなるが普通。
それがどっちから見てもスライスとなるのだから己の勘への不信、強まるも当然だった。
貴兄の読みの狂い、老眼なのかは分らない。
眼は癖を持つと思う。
その癖の修正の手段は見つけた。私が71歳の時、3年前だ。
ただ、文章では難しくなり過ぎる。イラストが要る。
ショットは文章で説明出来るがパットだけは図解が要る。
3年前、傾斜の読めぬ者の47年過ぎて知ったパッティング理論でありました。
機会あればお伝えする。
ただ、今はその時ではない。
まずは神戸塾生と大手前大学ゴルフ部員に教えたい。
そして、その指導の中で新たな方法論と出会えるのではと思う次第です。
コロナでその時は延びている。
貴兄の勘は変化している。
今少しの時間を戴きたい。
以上です。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2022年4月5日号より