【ゴルフ野性塾】Vol.1709「趣味は仕事。ゴルフは仕事の一つ」
古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。
長男雅樹の日々が忙しく
なって来た。
一昨日の11月9日夜、神戸から帰って来た。
そして昨日、佐賀県のゴルフ場に行き、今日11月11日、午前11時45分のJAL便で東京に向った。
12日に帰宅。
13日、熊本へ向い、その後も日本国内の旅が続く様だ。
2020年2月迄の私の行動を雅樹が踏襲している様に思う。
干渉はしない。
親子二代の旅の多さは有難き事である。
44歳、独身。我等夫婦と福岡市中央区赤坂の15階のマンションで同居中。
早く結婚しろと女房は言っていたが、最近は諦めたのか、言うのが面倒になったのか、言わなくなっている。
身長185センチ、体重は77キロ。
収入も不明。
顔はブス男。
どこから眺めても端正な顔付きじゃない。
185センチの体に私の顔が乗っかってる様な風体である。
たまにゴルフ雑誌の特集企画に付き合ってる様だが、好きではなさそうだ。
自分から望んでのメディアとの付き合いじゃないと聞く。
強要はしない。
アドバイスもしない。
父は父、子は子だ。
今月中、神戸塾生の指導に行くつもりです。
その時は雅樹にも行って貰う。
問題は雅樹のスケジュールである。
コロナはどこに潜んでいる。
今の平和、長く続く事を期待する。
窓の外、秋の空。
雲、白さを強めて来た。
体調良好です。
ガンが怖けりゃ煙草止めりゃいい。
酒とタバコとゴルフが大好きで、飲む打つ買う、を実行してきたわがままな男です。酒を控えろ、タバコをやめろと、女房子供にどんなに言われても一切無視。ところが先日、従兄弟が病気になり、自分も健康のためにタバコだけでもやめようかと考えています。塾長は何かを断った経験はありますか。どうすれば大好きなものを断つことができるでしょうか。(広島県・匿名希望・63歳・ゴルフ歴・8年)
断たなきゃなんない事は多くあったし、今もある。
そして、断った経験は少ない。
長男雅樹が問うて来た。
「お父さんの趣味は何? 僕が小さい頃はよく本を読んでいたと思うけど、今は読まないよネ。音楽も聴いてた様に記憶するけど今は聴かないでしょ。趣味は何?」
考えた。
考えても答え出ない時は、逆に同じ質問を相手に返すと答えが見つかる時は多い。
「お前の趣味は何だ?」
「僕の趣味? ゴルフだネ」
「ゴルフか。趣味と仕事が一致している訳だ。それって最高の幸せだろう」
「そう思うな。趣味と仕事が同じ人って少ない様な気はするよ」
「俺の趣味か。考えても思い浮ばんとゆう事は趣味なし人間か、それとも仕事が趣味になっている人間かの二つに一つかも知れんな。そう、俺の趣味は仕事だ。振り返ればいつも仕事と趣味は一緒だったと思う。アルバイトしている時はその仕事が楽しかったし、損得抜きで仕事していた様に思う。イヤな仕事と思った事は一度もなかったな。確かにプロになって予選落ち続いた時は苦しかったけど、ゴルフは好きだった。今迄、経験した仕事の中で嫌いだった仕事は一つもない。全部、好きだった。その成績成果は別にしてだ」
「仕事が趣味か。親子揃って幸運だったんだな。お父さんがゴルフ始めたのは24歳の時だよネ。今、74歳だから50年間、趣味と仕事が一緒とゆう訳だ」
「ツアー参戦したのはプロテスト通った翌年からだけど、途中でペンを持ち、テレビマイクを持ち、ジュニア塾を開き、大手前大学ゴルフ部も作ったが、やっぱり仕事の中心にいるのはゴルフだ。ただ、お前と違ってゴルフが趣味じゃないぞ。仕事が趣味だったんだ。そして仕事の多くがゴルフに関連する仕事だったとゆうだけだ」
「そうか。僕とは違うのか。僕はゴルフが趣味で仕事もゴルフ。お父さんは仕事が趣味でゴルフは仕事の中の一つか」
「物書きを仕事と思う事はなかった。でも、その距離の取り方が幸運だったような気はする。考えてみれば趣味だったのかも知れない。そして今、その趣味で日々を過している。やっぱし趣味は仕事だ」
「仕事が趣味とすれば幾つもの趣味の持ち主だった訳だ。恵まれてたんだ」
「ああ、恵まれていた。アルバイトしていた時、他にやりたい事はなかった。自衛隊に2年いたが、その2年は楽しかったし、その後の研修生生活も楽しかったな。そりゃ少しのイヤな事あったと思うが、全部忘れた。好き嫌いに鈍感であれば仕事は趣味になるし、趣味が仕事になると思うぞ。俺、今から日本一の鈍感を目指そうかな」
「これ以上の鈍感は要らないよ。お父さんは本当に鈍感人間で無頓着人間だからさ。子供の僕がハラハラする時、多いんだぜ」
「どんな時だ?」
「初めて会う人にお前、幾つの時に女を抱いた? と聞くよネ。そりゃ相手はお父さんよりも若い人間だから素直に答えるけど、あれって結構マズいんじゃないの。そして不思議と質問に答えてるから面白いとは思うけどさ」
「長く生きてると自分の持つストレートボールのスピードとコントロールが上るんだよ。体力勝負、運動能力勝負の野球は年取る程にスピード落ちるものだが、個性の持つスピードは上って行くんだ。だから年取るのが楽しくなって行く。お前はまだ若い。あと30年過ぎれば楽しさ分ると思うぞ」
一昨日の雅樹との会話はここで終った。
雅樹は安田祐香の指導の為に神戸へ向い、私は昼寝に入った。
そして今日の貴兄の質問だ。
断ったものあるかと思う。
私は女好きだった。
色、型、大きさ善しの立派なもの持っていたが今は枯れた。
麻雀も好きだったが腰痛生じて止めた。好きが高じて趣味となるは先人の教えなれど、麻雀も将棋も好きの領分で終った。
将棋はアマ五段、麻雀もそのレベルだった。
ペンを持ち、窓の外を眺めながら考える。
断ったもの、何かあったか、と。
ない。
目標は定めても右へ揺れ、左へ揺れる日々だった。
何かを得るが為に犠牲必要なんて気持ち、持つ事もなく、然り気なく気儘に過して来た日々だった。
人が右と言えば、ハイ、右ですか、と素直に従い、左と言われれば素直に左を向く適当さで過せし社会人生活だった。
人様の命に従うのに抵抗を覚えぬ性分だったと思う。
そんな適当な人間である。
一を得るに一を捨てるなんて私にとっては離れ技だった。
一を得て、一を捨てなければ二になるじゃないか。
捨てるなんて勿体ない話だ。
断つのも勿体ない話だ。
ガンが怖けりゃ煙草やめりゃいい。怖くなけりゃ吸い続けりゃいい。
この世、一つの覚悟ありゃ生きて行けると思う。
人様に迷惑と心配掛けぬ覚悟だ。煙草が迷惑掛けてると思えば止めりゃいい。
愛想なしで失礼しました。
坂田信弘
昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格
週刊ゴルフダイジェスト2021年11月30日号より