【ゴルフ野性塾】Vol.1705「7月、8月はスコットランドに住むのが願い」
古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。
今日10月14日、木曜日。
現在時、昼の12時34分。
20分前、バンコックに住む友人から電話が入った。
「プロ、聞いてくれ。大変な事をやり損ねたッ」
「何の話だ?」
「エージシュートだよ」
「誰のエージシュートだ?」
「俺だよ。この荒井晃様だ」
「自分を様呼ばわりする程、暑いのか、バンコックはッ。ところで幾つで回ったんだ?」
「75だ。74だったらエージシュートだったのに上り3ホール全部、球半分外れたッ」
「ハーフ内容は幾つだ?」
「39の36だった。上り3ホール、バーディ狙って行ったんだけど入らなかった。大きな魚、逃しちまったよ」
「お前さんのベストスコアは幾つだ?」
「3アンダーの69。チャンピオンティーの一つ前のティーで34年前に出したスコアだ」
「エージシュートのやり損ねた日はいつだ?」
「昨日10月13日の水曜日。ああ、悔いが残る」
「昨年今年の平均スコアは幾つだ?」
「80から90の間。70台は10回に一度も無い」
「それが一気に75か。立派なもんだ。ところでティーは赤か白か黄色か?」
「白に決ってるだろ? レギュラーティーだよ」
「それも立派。スコアに拘る者は短い距離に執着するもんだが、プライドは残ってたんだな。青マークではなく、白マークで出した75は立派だ」
「そんな褒め方あるんかいな。何だか俺、エージシュート逃しても嬉しくなって来たよ」
狙って取れないのがエージシュート。
「自分のショットに執着心持つ者はチャンピオンティーで打ちたがるもんだ。その者のスコアとショットの出来不出来への執着の比率は9対1ってとこだろう。それが74歳になってもレギュラーティーで打つゴルフは誇りのゴルフだ。お前さん、いつかはエージシュートやると思うぜ」
「何が欲しい?」
「何が欲しいって何の事だ?」
「エージシュート達成記念の祝い物だ。送るよ」
「お前な、やってから言って来い。やる前に引き出物聞いて来るとはエージシュート舐めてないか?」
「だって、そんな気にさせてくれたのはプロだ。この電話で次は出来るって気になって来たんだ。出来なかったらプロの責任だからな。しかし、人をその気にさせるのは天才的だな。その才能で塾生をプロにさせて来たのであれば納得出来るよ」
「プロになるのは本人の努力だ。周りがどれ程の太鼓叩いて三味線鳴らしてもやるのは本人だからな。だがエージシュートした後、何かくれると言うのなら、性の欲望が欲しい。5年前の欲望あれば世の中をもうちょっと色彩感抱いて眺める事、出来る様な気はするが今はなしだもんな。白黒で生れて、総天然色になって、また白黒に戻って人生終ると思うが、色付きの眼線、あと3年は欲しいと思っていた処だ。俺、まだ枯れたくはない」
「それは俺も同じだ。でもね、エージシュートやり損ねた夜、妙に寝苦しかったな。それって欲望の復活だったのかな」
「かも知れんぞ。試してみたらどうだ?」
「どこで誰と?」
「そんな事、俺に聞くな。俺は穂落ちの枯れすすきなんだからッ」
「よしッ。今度の土曜日曜、ロイヤルの老人会に出る予定だが、若い連中と回る。そしてエージシュート狙って行く」
「狙って取れるもんじゃない。これから打つショットに最善を傾けて、あとは転がり込んで来るのを待てばいい。それがゴルフだ」
「俺に昨日の幸運、訪れるかな?」
「訪れる。お前さんは助平だから大丈夫だ」
「そうか。助平であればエージシュート出来るのか」
「エージシュートは生命力だ。80切れん奴が75で回ったんだ。他に何がある。助平以外には何もないだろうがッ」
「当ってる。プロ程ではないが俺も助平だ。プロ、会いたいな」
「今年は無理だろう。タイのコロナ、減少してないと聞くぞ」
「1日1万人が世評だ。そしてワクチン代は2500バーツ。総て自費だ」
「8000円か。高いな」
「それも中国製の値段だ。うちの従業員350人、5日後に2回目の接種をする」
「効くの? 中国製」
「分らん。でも打たんよりは打った方がいいと思う。だから受けて貰う」
「日本は公費の接種だ。アメリカもだ」
「日本は恵まれてるよ。腹が立つ程に恵まれた国だと思う。海外で1年過しゃ分る。日本がどれ程、恵まれているかが。ただ、対応は早くても行動遅いのは確かだ。そこだな、日本のアキレス腱はッ」
「遅いのか?」
「遅い。それが中国に置いて行かれた理由と思う。国が攻められてるのに国会の承認を得ての行動なんて国、どこにあるとゆうのだ」
「国防か?」
「そうだ。政治家の危機への意識の低さ、日本は世界5本の指に入ると思うな」
「上からか?」
「下からだ。優先順位の付け方、なってないのが日本だ」
「お前、エージシュートやり損ねた割には随分と手厳しいじゃないか。エージシュート一つで国防迄行くのか」
「俺、ストレス溜め込んでた。それがエージシュートで発散出来ると思ったのに余分なストレス生んじまったんだ。それで頭と腹に溜ったもん、出さなきゃなんなくなって日本の政治家批判になってしまった。謝る。坂田プロには政治の友達、多かったもんな」
「批判には感謝、それが政治家の基本姿勢と思う。批判に楯と矛は許されぬ資質だ。楯と矛は独裁を生むからな」
「やっぱりエージシュートやりたかった。あと1ストロークなんてチャンス、本当に訪れるのだろうか?」
「間違いなく来る。助平でありゃいい。ゴルフは生命力の戦いだ。枯れたら終る。若い頃みたいに仕事としてゴルフして麻雀して酒飲んで嫁さんのオッパイ触ってる時が一番の幸せじゃなかったのか。枯れるな、バンコックの助平爺ィ。エージシュート目指して生きて行け」
奴は14本の松茸を送って来た。
出身地、長野の上田に住む友人に頼んで送って来た。
その友人が自分の山に入って取って来た松茸だった。
タイに行きたいと思う。
7月と8月はスコットランド、12月と1月はタイに住むのが私のこれから先の願いである。
月曜から金曜迄はゴルフして過す。
土曜と日曜はホテルの部屋かラウンジで過すか、公園のベンチで過すか、海を眺めて過すを理想とする。
そして原稿執筆は週に4本。これは現在と変らずの日々だ。
贅沢が待つ。
コロナ終息すればその贅沢の日々に入りたい。
4月はアメリカのマスターズ観戦、残りの日々は日本で過す。
これより大濠公園に行く。
ベンチに座り、スターバックスのコーヒー飲みながら夕焼け空を眺めて過す。
毎日、少しの外出が出来る様になった。
昨年の2月下旬から部屋の窓から外を眺めるだけの日々に変化が起き始めている。それは大きな幸せだ。
1年と8カ月、仕事での外出は10日間だけだった。
長男雅樹は昨日は麻生飯塚GCで、今日は玄海GCでラウンドしている。女房は35分前、銀行に出掛けた。
体調良好です。
それでは来週。
坂田信弘
昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格
週刊ゴルフダイジェスト2021年11月2日号より