【ゴルフせんとや生まれけむ】マギー審司<前編>「バーチャルではすぐに100を切ったのに…」
ゴルフをこよなく愛する著名人に、ゴルフとの出合いや現在のゴルフライフについて語ってもらうリレー連載「ゴルフせんとや生まれけむ」。今回の語り手は、マジシャンのマギー審司氏。
ゴルフの話題ともなると、人に「マジシャンって手先が器用だから、審司さんもゴルフが上手いんでしょう?」ってよく聞かれるんです。でも、決してそんなことはないんですよ。何しろマギー一門は、手先よりも口先とビジュアル重視ですから(笑)。
そもそもマジシャンというのは基本的にオタクなので、ずっと家にこもってマジックの勉強ばっかりやっている、日に当たらない種族なんですよ。運動神経も皆無な人たちですから(笑)、マジシャンでゴルフをやる人なんて聞いたことがないし、マジシャンのコンペなんて絶対にありえません。ですから、その意味でいうと僕はマジシャンらしからぬ例外的な人間かもしれないですね。
僕がゴルフを始めたのは今から13、4年前にスポーツクラブに通い出したときです。そこにゴルフの練習ができる鳥かごがあって、ちょうど「やってみたいなあ」と思っていたので、渡りに船でした。
もちろん最初はまったく当たりませんでしたが、少しずつ当たるようになってくると、そこのスポーツクラブの先生というのがものすごい褒め上手で、僕が打つたび「うわー、ナイスショット、いいですねえ」「今のはプロみたいなすごい当たりでしたよ」と褒めてくれるんです。僕は褒められるとどんどん調子に乗ってしまうタイプですから(笑)、すっかりその気になってしまい、ゴルフが面白くなっていきました。
そうこうしているうちに、自宅の近所にバーチャルゴルフを楽しむことのできるバーがオープンしたんです。そこでは実際にコースを回っているような、かなりリアルな体験ができるので、レッスンと並行してその店にもマメに通い始めました。すると、すぐに100を切ったので「俺ってひょっとするとゴルフの才能があるのかも」と思ってしまいました。バーチャルなのに(笑)。
それで、いよいよ満を持してのコースデビューの日を迎えました。正確な日付とか、どこのゴルフ場だったかなどはすっかり忘れてしまいましたが、体操の池谷幸雄さんや彼の友人と一緒だったことは覚えています。スポーツクラブの先生がいつもあんなに褒めてくれていることだし、バーチャルゴルフのスコアもあれだけいいんだからと気持ち的には余裕しゃくしゃくでした。もしかして、初ラウンドで100を切っちゃうのかなぐらいの勢いでしたね。
ところがいざコースへ出てみると大違い。何と170も叩いてしまったんです。「僕はゴルフをなめていた!」と心の底から反省しました。でも、嫌いになることはなくて、その後、2回3回とコースを回ってスコアは120前後でしたが、どんどんゴルフ好きになっていきましたね。
下手は下手なりの楽しみがあるんですよ(笑)。一発でもいいからドライバーが気持ちよく当たったり、5メートル以上もあるロングパットが入ったり。すると、嬉しくなってスコアは二の次。「また来よう!」と思うんですよね。バンカーから出なかったり池ポチャしたことは全部忘れて、いいことだけを覚えているというのは“ゴルフ初心者あるある”かもしれないですね。
マギー審司
73年宮城県生まれ。高校卒業後アメリカに留学し、帰国後94年にマギー司郎に弟子入り。師匠譲りの軽妙なトークとマジックで人気を博す。ゴルフのベストスコア94、ボウリングのベストスコア279
週刊ゴルフダイジェスト2021年9月28日号より