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「コースで最も雄弁」メキシコ人写真家がバンカーだけを撮り続けた理由とは?

異色のフォトグラファーの手になるゴルフ場の写真が話題になっている。

被写体はゴルフ場のバンカーに特化。四季折々のバンカーの“表情”を、しかもモノクロで表現し、アートというべき作品に仕上がっている。

作品の詳細は後述するとして、まずはそのフォトグラファーのプロフィールを──。名はファン・カルロス・ピント。メキシコ人である。1980年生まれ、サカテカス自治大学で文学と言語学を学び、メキシコ国立自治大学でスペイン文学の修士号を取得(ちなみに同大学は同国一のエリート校である)し、現在は母校で芸術、文学、コミュニケーション学を教えている。2011年に日本女性との結婚のため、日本に移住。15年に写真撮影を開始し、テンプル大学日本校で日本語に磨きをかけ、アートとデジタル写真技術を学ぶ。以来、英国、日本でコンテスト入賞。母国文化庁で公募した「光の孤独な軌跡」の個展を開催し、活躍の幅を広げている。

1年間をかけて撮影されたゴルフ場は、太平洋クラブ御殿場C。同コースは米国の名匠リース・ジョーンズが改修し、特にバンカーの造形には細心の注意を払ったという。

日本のあるクリエイティブプロデューサーの仲介で同コースを撮影することになったというが、なぜバンカーだけをモノクロで? その撮影意図をファン・カルロスは次のように話す。「コースの中でいちばん雄弁と感じたのがバンカーです。その表面には四季折々に、たとえば積もった雪、動物の足跡、そしてプレーヤーの格闘などの痕跡が残ります。その痕跡の声を聴いた一瞬を切り取ろうと思ったのです」

またモノクロで撮った理由を「白い砂を光と陰だけで表現したいと思いました。バンカーの縁の造形もカラーだと、情報が多すぎて色に目が奪われ、邪魔だと感じました」と話す。

近く展示する予定があるとのことで、乞うご期待というところだ。

“リースバンカー”に特化した写真作品集(写真提供:太平洋クラブ)

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月21日号より