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【ゴルフ野性塾】Vol.1698 「パットはたかが、の突破力」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

福岡は中央区赤坂けやき通り

15階の部屋から出ぬ日々、1年と6カ月が過ぎた。
我が家族の住むマンションは高台のマンション故、視界を妨げる建物は少ない。
飛行機の離着陸も見える。
「福岡空港迄、車で25分。新幹線博多駅迄15分。市の中央ビル群迄7分。だけど住んでる人が悪過ぎるわ」
ん、俺の事か。
「頑固なのは我慢出来る。我儘も慣れてしまえばどうって事ない。でも最近、人の言う事、耳の遠い振りして無視するのは許せない。それとも本当に耳が遠くなったのかしら。だったら耳鼻科に行って貰いたいわ。叫ばなきゃ返事してくれない会話は疲れます」
テレビを見ていた。
顔はテレビに向いていたが、頭の中は無意識状態。
眠っていたのかも知れない。
女房殿、5メートル離れた台所から何を食べるの? と聞いていたらしい。
私の姿勢はいい。ソファに座っていても背筋は伸びている。
だから眠っているとは思わなかったのだろう。
今迄、眠る時は横になっていたからかも知れない。
ただ、耳、遠くなったかなと思う時がある。
自分の部屋の空調、以前は切る時、入れる時の音、はっきり聞えていた。それがこの1週間、聞えなくなっている。
自動スイッチ、壊れたかと思ったが、作動していた。オン、オフの音が聞えなくなっていただけだった。今朝は聞えた。
そして、女房殿の怒りの声である。
耳、遠くなったのかと思う。
コロナで我が身変りし事一つ。
耳だ。
新聞読むにしても遠くを眺めるにしても、眼鏡要らずの眼だから視力に問題はない。
耳だけである。
確かに遠くなったとの想いは持つ。
体重は87キロ。身長は177センチ。昨年2月より5キロ落ちている。減量努力皆無なのに5キロの減。
体調良好です。

1メートルは順目も逆目も無視せよ。

先日、キャディさんが、富士山から順目なので下りだけど逆目とか、上りだけど順目とか言っていました。その日のパットは、傾斜なのか芝目なのか、距離感がまったく合いませんでした。また、順目は白く見えて、逆目は黒く見えると聞きましたが、目を凝らしても見えませんでした。我々アマチュアは、ベントグリーンでどのくらい芝目の影響を考えればいいですか。(東京都・佐藤享佑・32歳・ゴルフ歴3年・ベストスコア98)

コースラウンド時の固定観念、先入観、素直過ぎる従順さは順応力と対応力を削ぐと思う。
やはり、少しの疑問は持った方がいい。
キャディさんの言う通りと信じて己の勘に封印するラウンドは、己無しの18ホールとなる可能性は高い。
私の経験で申すが、ここは150ヤードですが、打ち上げですから165ヤード打って下さいのアドバイス受けて165ヤード打ちに行った時の結果、満足行く事はなかった。
150ヤード+15ヤードはキャディさんの知識だったが、8アイアンを7アイアンに持ち替えての第2打、いい事はなかった。
それよりも8アイアンのフルショットで打って行った時の方が善き結果を生んでいた。
ラウンド時の善き結果とはベタピンではなく、ミスなきショットであった。
150ヤードなれど165ヤードで打って下さいとのアドバイスを受けた時のショットにはミスが生じた。
ミスは連鎖を生む。
連鎖を生まぬ手段は己の持ち球の駆使であろうが、冷静さありても勇気なければ連鎖を止めるは困難だ。
智勇は要らぬ。蛮勇が要る。
結果を想定するは智勇、結果を恐れずに打つは蛮勇なれど、ゴルフには智勇と蛮勇の二つが要る。
賢いゴルフとは智勇と蛮勇の使い分けの出来るゴルフであり、智勇の使い方が分っていないゴルフは智勇と蛮勇の使い分けの出来ていないラウンドを指すと思う。
シングルハンディの方は使い分けを知る方だと思う。
人は体・技・心を持つが、智勇と蛮勇は心に属するものと考えて来た。
そして今もその考えは変ってはいない。
己の智勇、己の蛮勇の認識と把握は必要なものと思う。

私は友を持つが、成功した者は多い。
成功せし者は皆、智勇と蛮勇を使い分けて来た者ばかりである。
生き行く時、何が大切かと考える。
智勇と蛮勇、明確に認識する事出来れば大きな失敗ない様に思う。
小さな失敗、大きな失敗、小さな成功、大きな成功の繰り返しあれど、己の智勇と蛮勇、知るは己を知るに通じるものであろう。
私は蛮勇少なき者であった。
智勇の量は人並みなれど、蛮勇の量が少な過ぎた。
だから智勇に頼るゴルフをやり続けて来た。
気持ちの括り方、覚悟の持ち様を知らぬ人間だったと思う。

私は平成5年8月から現在迄、土曜日夕刻4時55分から5時迄のテレビ熊本の5分間番組「坂田信弘のゴルフ理論」を持つが、テレビカメラに語り掛けながら打つショット、いつも上手く打てていた。
しかし、語りを止めてアドレスの仕切り直しに入って打つと、5球に1球のミスが生じた。
この時、吸う息、吐く息の存在を知った。
今から25年前の事である。
そしてどの程度の声の強さでマイクに語り掛ければミスなき球打てるのかが分った。
ここ迄は智勇の領域だった。
次へ行くには蛮勇の領域への踏み込み必要としたが踏み込めなかった。
己への語り掛け生じる有言実行は吐く息の領域であり、蛮勇の領域でもある。
私は吐く息よりも智勇の領域である吸う息を大切にしていた。
今は己の愚かさが分る。
60歳過ぎて分った。
ジュニア塾生にも大手前大学ゴルフ部員にも言って来た。
4分の智勇、6分の蛮勇を己のものとせよ、と。
私は8分の智勇、2分の蛮勇のゴルファーだった。
3分の蛮勇の球叩きで三流、4分の蛮勇で二流、5分の蛮勇で一流、6分の蛮勇あれば超一流のプロになれる。
その事、知りたるはやはり60歳過ぎし時。
総てが遅過ぎた。
智勇は固定観念、先入観を生むと思う。

貴兄は智勇の人か。
ならば蛮勇のゴルフを目指せ。
1メートルを外そうが10メートルを入れようが誰かの命を貰う訳じゃない。己の命を差し出す訳でもない。
たかが1メートル、たかが10メートルじゃありませんか。
たかが1メートル、然れど1メートルは智勇の考え、たかが1メートル、たかが10メートルは蛮勇の考え。
1メートルも10メートルも入る時は入るの腹の括り様が蛮勇思考と思う。
気にしなさんな。
1メートルは1メートルだ。順目も逆目も無視するが一番。
1メートルは1メートルで打って行きゃいいのです。
逆目だ順目だと思うからゴルフは難しくなるのです。
見えないものを見ようとする気持ちと努力、要りません。
グリーンの色から判断する順目と逆目、そんなもん無視すりゃいい。
見えないものは見えないのだから仕方ないと思うが最善。
貴兄は素直過ぎる。
惚れた女を己のものとする時、周りの意見や思惑、聞いてたんじゃ何も出来やしない。

乗っかってから考えりゃいい事だ。
乗っかる前に考えるのが智勇。
乗っかってから考えるのが蛮勇だ。
打つ前に考えるな。
打ってから考えよ。
以上です。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月14日号より