【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.39「ヒッコリーシャフトで打ってみてわかったこと」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO / Masaaki Nishimoto
新しいことに出合ったり、挑戦するのは、ワクワクします。僕が52歳からギターを弾き始めて、シニア仲間とバンドを組んだのも、そういう感じやったのです。
先日の植村(啓太)さんとの対談も、新しい出会いやから、やっぱりワクワクしました。彼が「最近のスウィングは、フックグリップで握って、フェースも閉じて、まるでランニングアプローチの延長でフルスウィングもやるようになった。シャフトとボールとヘッドで、そのほうが飛ぶし、曲がらないようになった。むかしのクラブとボールでは、そうはいかない。それだけ技術がいらなくなりました」と言うておりました。
やっぱりクラブメーカーの人もワクワクしながら新しいことに取り組んできたんやろうな。おかげでプレーヤーに技がいらんようになったのは、皮肉というか、寂しいような気もします。
この前、たまたまヒッコリーシャフトのドライバーを手に入れて、グリップが傷んでいたから、わざわざ修理してもらって、コースに持っていったんです。
ほんまにちっちゃなヘッドです。打ってみたら190ヤードぐらいしか飛ばんのです。もちろん、むかしのガッタパーチャボールなんか手に入りませんから、いまのボールです。
こういう100年ぐらい前のクラブでボールを打ってみたら、何か自分のためになるヒントが見つかるんやないか、という期待もありました。
結論から言うと、何のためにもなりませんでした。植村さんが言うていた最新の打ち方とは、真逆の打ち方をせな、タイミングがぜんぜん合わんのです。
ヒッコリーシャフトの打感は、ボヨヨーンとめちゃ軟らかいんです。100年前のゴルファーは、これをどう使いこなすかという技術を磨いておったんやな、ということはわかりました。
せやけど、現代のゴルフをやっておる僕にとって、まったく必要のない技術なんです。
何の役にも立たなかったとは言っても、ヒッコリーシャフトのドライバーを打つというのは、僕にとっては初体験。やっぱり、それはそれでワクワクすることだったのは、間違いありません。
「新しい出会いや挑戦に歳は関係ありません」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2021年7月13日号より