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【ゴルフ野性塾】Vol.1689「手の内を絞めるのが アプローチの極意」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

昨日6月9日、コロナワクチン

1回目の接種を終えた。
接種後、腕の痛み生じると聞いていたが、痛いと声に出す痛みもなく、腕も真上迄上った。
今日6月10日、腕を上げれば少しの痛み生じるが、ただそれだけの事。
2回目の接種は6月30日。
窓の外、薄晴れの空。
昼1時の気温は昨日も今日も28度。
福岡は5月と6月、10月と11月が最も過し易い月なれど、外出適かなわずの日が続く。
この日々にも慣れて来た。
2年でも3年でも続ける事の出来る日々だ。
大濠公園も博多駅も福岡空港も遠くなった。
1年365日。37年間、自宅で過す日は30日から50日とゆう日々は私の日であったかと思う。その日も遠くなって行く。
本稿、ファックス送稿した後、眠ります。
体調良好です。

杉板1枚。
ただ1点を叩く素振りを始めよ。

100を切るには、もっと寄せが上手くなくてはいけないと思いますが、練習場のマットとコースの芝ではあまりにライも感触も違っていて、練習になるような気がしません。かといって、芝から打てる環境もありません。マットでのアプローチ練習は、何に気をつけて、どんな練習をすればいいですか。クラブはSWでいいのでしょうか。(東京都・佐藤聖也・28歳・ゴルフ歴2年・ベストスコア104)

練習場は基本の動きと基本の型を得る場であり、コースラウンドは順応と対応の場であると思う。
基本は体が覚え、順応と対応は経験、知恵、知識を必要として行けばいいと思うが、まずは基本の動きと型を得るが上達に於ての手順その一と考える。
手順を間違えると前後手順の間違いとなり、将棋であれば相手の王を倒しに行く戦いが相手の飛車を追う戦いになり、我が陣の王を先に取られる事になると思う。
手順前後は怖い。
人の世も稽古事も修行事も継続事もだ。
失敗は手順の前後、価値への優先順位の順位付けの誤りから生じるものと思う。
遠回り、結果を回れば近回り、に手順前後の間違いはないし、遠回り、結果を見れば遠回り、は手順前後の間違い生じている事の証あかしである。
間違った時、運が悪かったで済めば良いが、そんな悠長な話、どこにでも転がっている訳ではない。
人、寛大さと厳しさを持つが、手順前後に寛大さは要らぬと思う。
厳しさが要る。
厳しさとは批判と否定と拒否であり、寛大さには賛同と肯定と許容の存在、要るのではと考える。
大きな話、小さな話、大きな器、小さな器、それぞれに在るが、ゴルフは遊びから生れ、趣味の域に達し、職業となって行った歴史を持つ。
遊びと趣味に必要なのは暇であろう。そして遊びと趣味、興じた時に遊びと趣味は一芸化し、職業ともなって行った。
一芸化に必要なのは厳しさである。
貴兄は今、妥協の時か、己への厳しさ必要とする時かの右へ行くか、左へ行くかの分れ岐(みち)に立っておられると思う。
練習場の球の位置でそれは決る。
今迄通り、球をグリーンマットの中央に置き、状況を想定してのアプローチ練習は妥協の打ち方と思う。
軟らかいグリーンマットから硬いゴム床に球を移し、インパクトの弾きの強いライで打つか、グリーンマットであっても球の位置を通路寄りぎりぎりの位置に移して、ダフれば球を叩かずマットの端を叩く位置で打つかは己の練習への厳しさだ。
貴兄に勧める。
横幅30センチ、縦幅60センチの杉板1枚を購入して貰いたい。
その板1枚で裸地と同様のライは作れる。
杉板1枚相手の素振りを始める。
球は要らぬ。大きいスウィングも要らぬ。
バックスウィング、アドレスから20センチ、フォロー、アドレスから20センチの大きさで板を叩く。
板はクラブヘッドを弾く。
弾かれる直前、クッと手の内を絞める。
手の内を緩めてはいけない。
絞めると緩めるではインパクトの音が異なる。
私は24歳で栃木県の鹿沼CCに入社した。
土曜、日曜、祭日は南コース1番のスターター勤務。
朝7時半から午後2時半迄、スタート小屋の中でスタート時間の調整とキャディさんへのスタート時間伝達が仕事だった。
暇だった。
小屋の中に杉板1枚を置いた。
板叩きを始めた。
サンドウェッジで叩いた。
私は変り者と言われた。
24歳で始めた研修生生活。それ迄のゴルフ経験は皆無。
松の木や松の木の枝にブラ下っての懸垂。太い丸太をスタート小屋の中に置いて、丸太を使った腕の屈伸運動。
何かと目立つ行為であったと思う。
24歳ならばすでにプロテスト受験していても遅い年齢。
それが、これからゴルフ始めます、それもゴルフ経験ゼロの研修生として。
1年持てばいい、2年で研修会に出場出来るレベルになれば後援会の一つも作ってやろうか、と鹿沼のメンバーは語っていたと聞く。
私はゴルフ始めて3年と11カ月でプロテストに通った。
そして、すぐのツアー参戦。
アプローチは上手かった。
パットはホールカップの土手にブッつけて行く、強く打つだけの単純なパット。
研修生の時はそれで良かった。
研修会、どこのコースも重いグリーンだったからだ。
ツアー参戦した。
最初の試合は嵐山の関東オープン。
グリーンの速さに驚いた。
練習ラウンド、ご一緒させて貰ったのが村上隆さんと河野高明さんのパッティング巧者。
上手さ、特に距離勘の秀逸さに驚いた。
前後のズレがなかった。
5メートルの距離、50センチオーバーで球は止っていた。
私の転がりは前後のズレがあった。
関東オープンは村上隆さんが勝った。私は予選落ちした。
「いい球打つネェ。これが初陣なんだ。注目してるから頑張りなよ」
練習ラウンド終えた時の村上隆さんの言葉だった。
二人は9ホールで練習ラウンド終えた。グリーンの速さと癖を知るには9ホールで充分とのラウンドだったと思う。
私は残り9ホール、一人でラウンドした。
その後のツアー生活、村上さんと河野さんと回る事はなかった。練習ラウンドでも試合でもだ。
グリーンの速さに順応出来ぬまま、ツアーの日は続いた。
37歳の時、ペンを持ち、なまくら二刀流の日々が始まった。
そしてアメリカシニアツアー予選会を3年やってクラブを置いた。
25年のツアー参戦、小さな試合6つ勝ったが、トロフィーのある優勝は1試合のみ、残る5試合は賞金だけの試合だった。
手の内を絞めるスウィングを覚えて貰いたい。
杉板叩きを勧める。
1点への集中と執着、根気が基本を作ると思う。
家で覚える事の出来る基本の動きと型である。
練習場では硬いゴム床で打つか、グリーンマットの端で打てばいい。
体の動きと型、崩れなければ叩き間違いは生じない筈だ。
集中必要と言っても集中力生むのは簡単ではない。
やはり行動が必要。
杉板の素振りを勧めます。
コツンとゆうインパクトの音。
球は叩かず、ただ1点を叩くアプローチ杉板の練習。
お試しあれ。

坂田信弘
昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2021年6月29日号より