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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.920「呼吸や温度を感じる距離で直接教えてもらうと、気づきや発見が起きやすくなると思います」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

>>前回のお話はこちら


ゴルフのスクールは目移りするほどたくさんあり、雑誌やSNSでは有名無名のコーチを交えてレッスン動画があふれています。何が正しいのかも見当がつきません。最適なレッスン環境とはどういうものでしょうか。(匿名希望)


わたしがプロゴルファーになることを思い立って練習を始めたときに比べると、時代は天と地ほど移り変わっています。

プロトーナメントは男女ともそれ以前から行われてはいましたが、男子競技にツアー制度が導入されたのは1973年度。

わたしがプロ入りしたのはその2年後ですが、現行の女子ツアーが正式に始まったのは、それから13年も後のことです。

70年代以前、ゴルフはまだ「特権階級が嗜む高級娯楽」といったイメージが強く、若者からは敬遠されていた時代。

ゴルフの手ほどきをするのは親か兄弟、職場の先輩というのが一般社会の常道だったようで、よほどのセレブでもなければ専門のプロから指導を受けられなかったのではないでしょうか。

時代が変われば変わるもので、ゴルフは90年代以降すっかり身近なカジュアルスポーツとなりました。

レッスンスクールはたくさんあり、どれが有益で自分に合っているのか選択の基準も分からない時代だったかもしれません。

そのようなこともあり、日本プロゴルフ協会、日本女子プロゴルフ協会などがインストラクターやティーチングプロを育成してきました。

さらに協会とは別に一般にはゴルフのプロコーチを養成または認可する団体がいくつかあるようですが、それだけゴルフを教えてくれる人を求める需要があるということなのでしょう。

しかし、いくら「このコーチは確かにわが団体の認可を受けてます」とお墨付きがあったとしても最高の先生かどうかを確約してくれるわけではないのです。


十数年前なら、商店街のあるような街に行けばたいていゴルフ練習場があり、専属のレッスンプロがいてワンポイントでスウィングを見てもらったり指導を受けることもできました。

しかし大型施設は市中から次々に姿を消し、今は室内ネットの鳥かごで個人指導を受けるシミュレーションゴルフが大勢を占めています。

形は変わっても人が人を教えるコーチングは、師弟の間の信頼関係が基本です。

コンプライアンス重視の時代、乱暴な指導は論外ですが、高度なITシステムを使ってスウィング分析やゴルフ理論を言葉や数字でけむに巻くような指導者もいる。

これでほんとうに親身になって教えてくれるのか不審を抱く向きも少なくないかしら。

生徒の前で「こう打つんだよ」とやって見せるコーチが減っているような気がします。 短時間で手軽に上達したいからレッスンの効率を考えるように、教える側も効率良く生徒をさばきたい。

目指すところは似ていても両者の合理性は必ずしも一致せず、不幸にして教わる側の信頼感が薄れてしまうということがあっても不思議ではないでしょうね。

理想的な師匠に出会えるかどうかは運のようなもので、失敗しないコツはありません。

ただ大勢いるコーチはそれぞれ指導者としてのカリキュラムを研修して、それなりの教育を受けているはずです。

間違ったことを教えない限り、コーチが常軌を逸することは考えにくいので、教わる側がコーチに何を求めるかだと思います。

すべて期待するわけにはいかない以上、自分が成長できるかどうかは自分の教わり方、レッスンの役立て方にかかっていると心得るべきです。

変な話、生徒がトッププロに成長したことで名伯楽として有名になったプロもいます。

昔は研修生としてゴルフ場に所属、そこのヘッドプロの教え子としてデビューするのが普通でしたから、実際は何も教えてもらってない師匠がたくさんいました、ほんとの話。

今の時代、人に教わるのではなくネットで独学という人もいるでしょう。

ただ情報だけ言葉だけで身に付くレッスンはほとんどないとわたしは思います。

その一方、ほんの一言であっても人から自分にかけられたアドバイスで「これか!」と大事なことに気づかされることがあります。

結局ゴルフの上達環境も人との幸運な出会い次第と言うほかないのかもしれませんね。

「運をつかむにはまずは行動することですよ!」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2026年8月18・25日合併号より