【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.256「これは勝てる!」と思った瞬間に人が変わってしまうんです
奥田靖己「ゴルフはつづくよどこまでも」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Tadashi Anezaki
>>前回のお話はこちら
- 高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。 PHOTO/Tadashi Anezaki >>前回のお話はこちら 先週この場所で、僕らの若い時代は、先輩たちの「お前らまだ早い」といった無言の圧力みたいなもんがあって、なかなか若手は勝てんかったけど、今はそれが……
今シーズンの男子ツアーを振り返って、印象に残った試合の一つが日本オープンでした。3日目を終わってトップと7打差を最終日にひっくり返した片岡尚之くんはこの優勝で来年のマスターズの出場権を手にしました。嬉しかったでしょう。
悔しい思いをしたのが、最終日にトップでスタートした清水大成くんでした。3日目は7アンダーですごくええプレーをしましたけど、多分、そんなに調子はよくなかったと僕は思って見ておりました。
彼は飛距離もけっこう持ってるから、少し飛距離を落とし気味に調整しながら回っていたら、パッティングもよくてスコアになってきて、「お、これは勝てるんやないか」となったんやないか思います。そしたら話が変わってくるんですわ。
勝てるんちゃうかと思った瞬間に、もう人が変わるんです。上位5人に入ったらもう最高やと思って回っていたら多分、彼が優勝してますよ。でもなんとか勝ち切りたいとなってきて目の色変わると、やっぱり体が硬くなる。そうするとクラブが走らないから、最終日の清水くんのショットはもうめちゃくちゃ曲がってましたよね。
あんだけ曲がったら次のアプローチでも、なんとかなんかできません。日光CCは林からなかなかグリーンを狙えないですから、普通のコースと舞台が違います。
僕は93年の日本オープンで勝てましたけど、当時は日本オープンも全日空オープンも同じ感覚でやっておりました。もう毎試合必死でやっていたから、日本オープンに勝とうなんてそんなことは何も思ってない。ただただクラブを感じて振るだけ、それだけを守っていたら勝てたという感じでした。
ところが勝った後ですよ。メジャーの重みが自分にのしかかってきたんは。その後、毎年日本オープンに出て練習ラウンドをやるたびに、フェアウェイはごっつ狭くて曲げたら深いラフが待っている、こんな強烈なセッティングで僕はよく勝ったなあと思って回っていました。
それで、97年の福岡の古賀GCでの日本オープンのときに、今回の清水くんみたいに優勝争いをして、「勝ちたい」と思った瞬間に人が変わるという経験を僕自身が体験したんです。この話は次回します。

今年の日本オープン3日目の清水。「“これは勝てる”と思った瞬間から人が変わってしまうんです。僕にも経験があります」

奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2025年12月30日号より


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