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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.888「リストターンはやるものではなくリズム&テンポよく振るなかで自然と起こる動きです」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

>>前回のお話はこちら


YouTubeで「フェースを返さず体のターンで打て」と教えているのを見ましたが、ヘッドの走らせ方も知らない人がフェースを返さないでボールはつかまえられないと思うのですが、これについてどのように思われますか。(匿名希望・47歳・HC1)


ゴルフスウィングでボディターン理論が登場したのは、今から30年以上も前でしたね。

90年代に新しいセオリーを提唱するレッスン書『ザ・アスレチックスウィング』が大きな話題になったのを覚えています。

著者はデビッド・レッドベター氏でニック・ファルド選手を指導して1987年の全英オープンでのメジャー初優勝に導いたコーチでした。

レッドベターの理論は90年代以降、世界のゴルフ界をリードしてきたと言ってもいいでしょう。

ボディターン理論を端的に言えば、腕の力で振るのではなく、腕と体の動きを同調させて打つことでスウィングの再現性を高めることができる――という感じでしょうか。

リストなど余計な動きをせずシンプルなスウィングを推奨しているとわたしは思います。

ただ腕の動きを抑えようとする点が「手は使わずに体の回転だけで打て」と言っていると勘違いを生む面もあります。


腕や手首にまったく力を入れず返さないままではスムーズにクラブを振ることはできません。

レッドベターの理論に限らず、ゴルフスウィングにおいてボディターンと一口に言う言葉の中身には、手首を返すリストターンや前腕の回旋するアームローテーション、体重移動などのウェイトシフトをどのタイミングで行うかという要素が含まれていると考えるべきです。

こうした細かい複雑な動きが入り組み、絡み合い、腕と上半身が同調して効率的なスウィングになるというのがボディターン理論なのだと思います。

では、ヘッドの走らせ方も知らない人が、フェースを返さないでボールはつかまえられないのではないかということですが、確かにヘッドスピードの加速は望めません。

スウィングのある時点で手首が返ることで、ヘッドが加速して手元の支点を追い抜いていきます。

ビデオが手軽に利用できなかった当時、ゴルフ雑誌に掲載されたプロのスウィングを穴が開くほど眺めて、その手首が返る瞬間がどこにあるか探したものです。

しかし、しばらくして手首を返すポイントにはこだわらなくなりました。

スウィング中に、ここで手首を返すと意識していればいるほどスムーズにクラブを振れなくなることに気が付いたし、そんなことは考えずリズムよく振り抜いたほうが結果的に手応えのある当たりと球筋が得られることが分かったからです。

手応えのある当たりや狙ったところへボールが飛んでいく感覚を、ボールがつかまると言い換えてもいいでしょう。

リストターンは意識して行うのではなく、むしろ後から付いてくるものです。

リズム&テンポよく振り抜くスウィングのなかで起こる自然現象と考えたほうがいいと思います。

しかし、手だけで振っているようないわゆる手打ちでは、ヘッドスピードが上がらず、飛距離は出ず、ミスショットになる可能性は高いです。

反対に手を働かせまいと体を過度に回転させるのも、同じく飛距離もナイスショットも望めません。

要は、手や腕のターンと上半身の動きをいかにタイミングよく自然に同調しながら連動するか。

その理想的な統一を目指すことが、体の回転で打つボディターンということなのだと思います。

手首を返すポイントを意識しすぎるのはもちろん、返さないで打とうなどと勘違いしないようにしてくださいね。

「形とは流れのなかで作られていくものだと思います」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2025年12月16日号より