今やいろんな理論が溢れてますが、僕もかつて「幽霊打法」なんていうのを実践してました
PHOTO / Masaaki Nishimoto
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
人に教えるというのは、難しくもあり、上手くいけば楽しくもありですな。
もう30年以上も前のことです。メンバーさんの女性にレッスンしておると、「奥田プロ、リー・トレビノさんは逆のこと言ってました」と反論されたことがありました。
「じゃあトレビノさんに教わってください」と言いましたけど、もちろん直接トレビノに習っていたわけではなく、トレビノのレッスンビデオを見ておったのです。
しばらくしたら、その女性、あばら骨を骨折しておりました。どんな練習をしていたのやろか、と不思議でした。
いまはユーチューブなんかで、もっと簡単に最新のゴルフ理論てんこ盛りのレッスンを見られますから、教える側も大変です。教えていて、頭でっかちの生徒さんに反論されて困っているレッスンプロもぎょうさんおるという話も聞こえてきます。
僕もそのトレビノのレッスンビデオを見ましたけど、面白かったです。
「シャンクする人は、ダウンスウィングで自分の右手をポケットに入れれば一発で直る」とか、「ザックリする人は、右手を最初からかぶせておけ。そうすればフェース面は変わらない」とか、まあ右手に悪さをさせない簡単なレッスンです。
僕もむかし「幽霊打法」なんていうのをつくって、ゴルフダイジェストに載せてもろうたことがありました。要は手のひらの向きが変わらんように、幽霊みたいに下に向けたままするということやったんです。
せやけど、これはただの思いつきではのうて、実戦でやってみて、上手いこといったので取材してもろうたんです。
当時の開幕戦、静岡オープンは、春先で芝つきの悪いライやから、まともに打つとザックリが多発するんです。で、右手も左手もグリップを上から握るようにしておけば、フェース面が変わらへんで上手くいったんです。
自粛で暇やったこのオフは、時間があったので、ゴルフレッスンのユーチューブをぎょうさん見ました。
「ようスウィングのメカニズムを研究しておるなぁ」と感心するものもありましたし、「それで何が言いたいのや?」というものもありました。玉石混淆です。まあ、訳のわからんものはパスすればええだけの話です。
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2021年5月25日号より