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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.886「上達する人は必ず“目標設定”をしています」

KEYWORD 岡本綾子

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

>>前回のお話はこちら


ゴルフはどうしてがんばっても上手くいかないのでしょうか? ゴルフの「がんばる」は、他競技と比べて少し静かな気がしますが、がんばり方をほかとは変えなければいけないのかどうかご教示ください。(匿名希望・47歳・ベスト87)


今ではそんなこともなくなりましたが、男の子のほとんどが遊びといえば野球をするくらいしかなかった時代がありました。

もちろん水泳や陸上競技、サッカーや柔剣道といった他競技に夢中になる子もいましたが、やはり野球が一番という時代が長く続いていたように思います。

その頃に育った世代の男性は、後に大人になってゴルフと出合い、止まっているボールと格闘し始めるとよくこんなことを漏らしてボヤいたものでした。

「動かない球がなんで上手く打てない?」

地面に止まっているボールを打てないことに驚き戸惑い、腹を立てては頭を抱えてもいました。

向かってくるボールは打てるのに動かない球が打てない……。

理解を超えたこの謎にイライラを募らせた人は多くいると思います。


ゴルフにおける「がんばる」は、他のスポーツのがんばると比べると少し静かな気がするというのも、ラウンド中のプレーが雑音のない穏やかな雰囲気の中で進行し、プレーヤーの動きはそれほど激しくもないなどからも、ゴルフはそれほどがんばらなくてもやってやれないものではないとの先入観があったかもしれませんね。

ゴルフってそんなに甘いものではないのですよ(笑)。

止まっているボールが打てないはずがないという発想は、ゴルフの本質を知らないから出てくる言葉だと思います。

そして、なぜゴルフだけが他のスポーツとは違ってがんばっても上手くいかないと感じるのでしょうか。

やはりゴルフは止まっているボールを打つということからも、他のスポーツより簡単そうだという偏見があるのかもしれませんね。

もし野球をやっていたのだったら、ボールを投げる、捕る、打つという動作の難しさや楽しさを実感し興奮したと思いますが、その素直な感覚をゴルフにも抱いてほしいと思います。

どんなスポーツや仕事でも未知の分野があり、その分野独特のケースとその一つ一つに対応した技術があります。

ゴルフも謙虚にその基本を身につけ経験を積んで対処法を学んでいくしかないのです。

経験したこともないことを最初から処理できる天才は存在しないのですから。

確かにゴルフの上達は静かなものに思えるかもしれません。

練習場で打ち込みを続け、毎日何百球と積み重ねたある日、昨日まで打てなかったボールが今日は打てるようになる。

大成功ではないけれども打ち方の呼吸がいつの間にか自分の中でのみ込めているのが分かる、そんな進化が実感できるはずです。

何かを上達したいと思い立ったなら、ゴルフでも仕事でも目標を立てると思います。

そして、その目標達成のためのノルマを設定すると思います。

あとはその手順を謙虚に律義に根気よく着実に積み重ねていくだけ。近道や特別な方法はありません。

その道を進む者には、節目節目で自分だけに味わえる喜びがあります。

進化がわずか1ミリ程度のものであったとしても、あなたにしか実感できない充実感、達成感のような喜びが味わえるはずです。

それがうれしくて待ち遠しくてわたしは毎日の練習がやめられなかったのを覚えています。

ケガをしてカサブタになった部分が剥がれて治っていくような感じかな?

ほんとうに当時はそんな思いでゴルフと向き合っていました。

がんばっても上手くいかないと言うけど、死に物狂いで練習しましたか?

真剣にチャレンジしてみて難しさを知れば、もっと真剣に取り組みたくなるはずです。

それがあなたの求めている「ほんとうの出合い」だとわたしは思いますよ。

「コツコツ練習する楽しさが分かる瞬間は謙虚に取り組んでいる人には必ず訪れます」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2025年12月2日号より