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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.885「やるべきことに集中していれば“焦り”という感情は生まれません」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

>>前回のお話はこちら


今年のプロテストは2次予選で落ちました。ジュニアでは同レベルだった同年代、下級生の子たちがプロになって活躍しているのを見ると焦ります。心が折れそうになるのを、どう乗り越えればいいでしょうか。(匿名希望・22歳)


先日トーナメント解説のお仕事で訪れていたステップ・アップ・ツアー会場でのことです。

クラブハウスのレストランで周りを見渡した時、一人の選手の姿が目に留まりました。

多くの選手たちが各テーブルで談笑しながらスマホの画面をのぞき込んでいましたが、彼女だけが本を読んでいたからです。

気になり近づいて声をかけてみました。

愛知県出身の彼女は、今の自分にこれといった自信があるわけでもなく、どんなチャンスが巡ってくるのか確信も持ててないけど、今はどんなことでも吸収したくてアンテナを張り巡らしていたいと話してくれました。

実はわたし、ステップ・アップ・ツアーの試合を訪れるたび少しガッカリすることが多くありました。

ホールアウト後に練習している選手があまりにも少ないからです。

レギュラーツアーより少ないとはどういうことなのか、これでは……と思っていました。


でも今回彼女に会って、なかには向上意欲に燃えている選手もいると気づかされました。

そういう読書はすごくためになるはずと励ましながら、その本に書いてあった今の彼女にとって参考になりそうな部分を私なりにアドバイスしました。

もともと人間は弱いもので、目標に向かって努力を続けている毎日は、先が見えず、とても心もとないものです。

ほんとうに今のままでいいのか、自分のやっていることに間違いはないのか、信じたいけれど自信が揺らぎ迷いも生まれやすいもの。

周囲の雑音に悩まされ不安にさいなまれることはよくあります。

隣の芝は青く見えるとはよく言ったものです。

人は他人をうらやみ自らを哀れみ、そして陥るのが焦りです。焦りは誰もが必ず経験する苦しみの一つと言っていいかもしれません。

ですが、焦りというのは自分で作り上げてしまう場合も多いのです。

自分より先にプロになった後輩をうらやましく感じるのもその一例かもしれません。

どうすれば心が折れそうにならないで済むかと問われれば、他人のことを気にしないことです。

なぜなら、他人はあなたのことを、思っている以上に気にしていないからです。

それでも気になるという人は、自分がほんとうに気にするべき課題の解決法や練習に集中できていない人です。

今すべきことを横に差し置いて周囲や他人事のほうに意識を向けていませんか?

昔は今より焦りのもとになる雑音が少なかったかもしれません。

今はスマホを手に取れば、知らなくてもいい情報まで簡単に受け取れるため、焦りのもとが入りやすくなっています。

そういう意味では今は多難な時代と言えるかもしれませんね。

努力しているつもりでも、ちょっとしたことで自信が揺らぎ毎日の練習に迷いを感じた時に他人の動きが光って見えたりするものです。

でも、集中すべきことは自分の中にあるのです。

自分と向き合い、自分の課題に取り組むべきではないでしょうか?

自分に向き合えなければ、今の自分がどこに立っているかが分からないし、目標設定も明確にすることはできません。

その一つの方法として一冊の本を読むことは、アナタの助けになると思います。

読書をすることで自分に集中することができれば、ひょっとして余計な焦りが入り込むスキがなくなるかもしれません。

そして焦りをどう乗り越えるのか……それは、あなたが自分で決めた夢や目標のことに集中すればいいのです。

「“目標”を作ることは頑張り続ける大切なキーワードです」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2025年11月25日号より