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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.883「スウィングの最終形は追い求めることに意味があると思っています」

KEYWORD 岡本綾子

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

>>前回のお話はこちら


クラブやボールなど道具が進化すれば、それにつれてスウィングも変化していくかとは思いますが、未来における「スウィングの最終形」があるとすれば、それはどのような形になるのでしょうか?(匿名希望・49歳・HC2)


ゴルフの進化はどこまで続き、その未来形はどんなものになるのでしょうか。

少し頭を巡らせてみましたが、今から10年後のゴルフコースがどんなふうに変化しているかはある程度想像できても、そのさらに30年後のルールがどうなっているかはイメージできません。

もしかすると、ゴルフはこれまでとは全然違う姿に変容しているかもしれませんが、反対に今とまったく変わりがないままにプレーされている可能性もゼロではないでしょう。

目まぐるしい進化と変遷の果てに、いわゆる一周回って元に戻っているかもしれません。

ゴルフの進化に伴うスウィングの最終形がどんなものになるかということですが、想像図をお示しすることはできません。


ただ、地面にあるボールをクラブで打って目標まで飛ばしてカップインさせる打数を競う基本形が変わってしまわない限り、スウィングの形は大きく変わらないと思います。

ゴルファーが100人いたら100通りのスウィングがあるとよく言われます。

それぞれの体格、体力、運動能力には差があり、体の動かし方やリズムの取り方にも個性がある限り、まったく同じスウィングはあり得ません。

スウィングの形はどれも個人的なものであって、特定のフォームを指すものではないと思います。

ある特定のスウィングがない、そのことこそが終わりのない理想のスウィングの追求なのだろうと思います。

誰でも初めはビギナーです。

クラブの握り方、構え方、振り方を教えてもらい、ボールを打ちながらどうやったら上手く当たり、思い通りの場所へ打てるかを確かめる。

人の打つ姿を見て自分と比較、どこがどうでどうすればどうなる。

何時間、何日、何千万球の試行錯誤の末に自分なりの形が見えてきます。

わたしも駆け出しのころ、自分のスウィングの連続写真を撮ってもらって、故セベ・バレステロス選手の写真と比べて細かいところまで綿密にチェックしたり、かなり執拗に形にはこだわりました。

良い時期もありますがカベと課題に当たることもある。

それは誰もが経験する自分の形に迷いを生じたときです。

そこでどれだけ形を極めようとしても具体的な形があるわけではないことに気付きます。

いま最善だと言われる理想の形はありますが、やはり最終形はわかりません。

ゴルファーはそれぞれが究極のスウィングを求め続けますが、その完成形はないというのが現実だと思います。

わたし自身もスウィングの理想を追求してきましたが、やるだけのことはやったという気持ちでいます。

とても完成形に近づけたなんて言えませんが、現状より少しでも上を目指すという向上心を持つのはアスリートの宿命です。

ですがスウィングの最終形を求めすぎるのは危険な落とし穴のように思えます。

完璧な形で自分の体を動かせたとしても、たとえば突風などの外的要因でミスすることもあります。

スウィングが完璧だとしても自然も必要条件を満たしてくれなければ、良い結果でないことが起こるのがゴルフです。

あと人間には老化という宿命があります。

体の変化に従って以前の形ではタイミングが遅れて思い通りのショットが打てなくなる時期がきます。

どんな最強と言われる名選手でもスウィングの完成形を求め続けている途上なのかもしれません。

だからこそゴルファーは、永遠にこの夢を追い続けられるのかもしれませんね。

「終わりがわからないことが魅力なのかもしれませんよね!」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2025年11月11日号より