Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • 週刊GD
  • 【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.882「時代によってレッスンは変化しているようですが根幹は変わらないのでは?」

【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.882「時代によってレッスンは変化しているようですが根幹は変わらないのでは?」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

>>前回のお話はこちら


昔はコーチが頭を抑えた状態でスウィングする練習をやらされたものですが、今では見かけなくなりました。頭の位置を動かさないのは基本だと思いますが、この教え方は古くて間違っているのでしょうか?(匿名希望・51歳・HC2)


日本でゴルフのレッスン理論という言葉が広まったキッカケとなったのは、おそらくベン・ホーガンの『モダン・ゴルフ』(1957年)だと思います。

アドレスでボールと首を結んだ線にガラスの板を立てかけてあると想定するスウィングは、そのガラス板の表面を滑るようにクラブを動かせばいいという、いまでは当たり前のように使われているスウィングプレーンの考え方をベン・ホーガンが初めて提唱したものです(※スウィングプレーンの解釈については他見解あり)。

といっても、かつての名選手のなかには、特徴ある個性的なスウィングの持ち主も珍しくありませんでした。

身に付けた独自の技術は、誰かに教えてもらったものではなく練習を積み重ねて培われたものだったからかもしれません。

1980年代以降、科学的なトレーニング法が導入されるようになってから、特にこの10年間の進化には驚かされます。


アナログ的な指導や練習方法が、今では動画解析などを駆使したデジタル化に進んでいます。

腕立て伏せや腹筋などの体力づくりは、マシンを使ったウェイトトレーニングが多くを占め、とにかく球を打ち込む練習から今は弾道やボールスピン量、ヘッドの入射角などの軌道ほかのデータ計測をすることが珍しいことではなくなってきています。

最新のスウィング理論や練習法を取り入れているジュニア選手たちは、一般的にいわれるような理にかなったフォームで、みんな真っすぐ遠くに飛ばすゴルフを目指して練習しています。

ボールを操るという意識が希薄なところは少し残念な気持ちがありますし、個性的なスウィングはこれからあまり見かけなくなるかもしれませんね。

それに伴いティーチングプロの実態も時代とともに大きく変化したといえます。

PGAやLPGAがティーチング部門の拡充に力を入れてきたことが大きな後押しとなり、昔に比べてはるかに気軽に安心してゴルフの技術を学びやすくなった点はあります。

教わる生徒さんが上達しなければレッスンの競争に負けてしまうため、そしてゴルファーのレベルを問わず効果が期待できる効率的な練習メソッドがあれば望ましいため、スウィング解析などのデジタルを駆使した練習法が台頭してきたとも思います。

たくさんのスウィングデータをもとに診断して適正な数値へと改良されれば上手くなる……そう思うことは当然かと思いますが、コーチングは数値を良くすることが本来の目的ではないことを根本に据えていてほしいと思います。

トッププロが使うクラブが売れるように、理論や練習法にも流行というものがあります。

古くはボブ・トスキや日本では小松原三夫さん、林由郎さん、近年ですとレッドベターにブッチ・ハーモン、ハンク・ヘイニーなど多くのティーチングプロがいました。

しかし、教えることはその都度変わってきたようにも見えますが“ほんとう”にそうでしょうか?

ゴルフのコツを伝えるとき新しい言葉を使いたがるものです。

でも言わんとする内容は基本的には同じでは? というのがわたしの正直な気持ちです。

昔はコーチが教える人の頭を手で押さえて指導する姿がよく見受けられたといいますが、頭を動かさないことはいまも基本は同じですよね。

確かに相手の体を触らないようになったとすれば、昨今のコンプライアンス意識が高まったせいかもしれません。

教え方は、時代に沿って変遷し言葉も変わるでしょう。

でも、ゴルフの本質や上達の道は今も変わらない。わたしはそう思うし、そうであってほしいと思っています。

「数値で管理してもスウィングに個性があるのはオモシロイですよね」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2025年11月4日号より