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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.871「練習した球筋をイメージしてラウンドするとショット力は上がってきます」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

>>前回のお話はこちら


岡本プロはショットを打つときボールが飛んでいく弾道をどのようにイメージしているのでしょうか。そうした弾道のイメージは必要なのでしょうか。(匿名希望・41歳・HC7)


どんな球筋で目標に向かってどんな弾道で飛んでいってほしいのか。

打つ前にしっかりと明確なイメージを持つことは確かに大事なことです。

わたし自身の流れで言うと――自分のボールの後方に立ってピンまでの残り距離と風の影響、ライの状態やスタンス周辺の傾きなどさまざまな情報を総合して目標を定めながらアドレスに入り、これから打っていくショットのイメージを頭に思い浮かべることで、セットアップを完了する、といった感じでしょうか。

たとえば、ピン位置が右手前に切ってあり、グリーン横右手前から右奥にかけてバンカーがある場合どう打つか。

なんとなくグリーンセンターを狙ってグリーンに乗ればOKと思って打つのと、やや高めの弾道でグリーンセンターに打ち出し、落ち際に軽く右へ切れるフェード系の球筋を描き打つのとでは結果は違ってきますし、そこまでイメージして打つことで今後のレベルアップにも確実につながってきます。

ただ、ここで言う球筋のイメージはゴルファーのレベルによってかなり異なっていることに留意する必要があります。


自分の力量をはるかに超える球筋とは違います。

打つ前のイメージを実現できるだけの技術を備え持っているゴルファーでなければ、明確に球筋をイメージしてから打ったとしても、上手くいかないことが予想されます。

今後のスキルアップには少なからず役立つと思うので、悪いことではありませんけどね。

そう考えると、ゴルファーがショットを打つ前に頭に浮かべるイメージとは、「これまでに自分が経験したショットの成功例の弾道映像」と言ってもいいかもしれません。

わたしの場合、どんな映像が浮かんでいるかというと……基本的には、打ち出されたボールが糸を引いて空中へ舞い上がり、最高点に達してからゆっくりとピンに向かって下降していく感じですね。

その飛んでいく打球をドローンで追跡しているようなシーンを描き想像していると表現すればいいでしょうか。

このときわたしの頭の中では、これまで目にしてきたドローン映像の部分部分を組み合わせてイメージを瞬間的に作り上げているのだと思います。

また打球が飛んでいくシーンとは別に、インパクトでボールとフェースの衝突を高速度撮影した映像が見えることもあります。

たとえばアイアンショットなら、ボールとフェースの間に数枚の芝の葉先が挟まるのも見えることがあるので、打った後のボールがどれだけ、そしてどんな回転になるのか本能的に分かることもあります。

こうした高速の瞬間が切り取って見えるのは、体験と知識が混ざり合って映像として出てくるのかもしれません。

でも、物理的には高速すぎて本当は見えていないのかもしれませんが、見えている私がいる。

そう考えると人間の脳ってすごいな〜と思いますね(笑)。

話を戻しますが、飛んでいく球筋のイメージは、無謀なイメージなのか、成功率の高いイメージなのかは、本人がそのために費やしてきた準備と練習量にかかっています。

コースの中である状況に遭遇したとき、成功したとかしないとかではなく、練習の中でやったことがあるショットがイメージとして湧き、それに近いショットが打てるのだと思います。

体験や挑戦をしてきたイメージは実現することが可能であり、その逆も言えるということです。

ですから、経験や体験をもとにして積み上げてきた明確なイメージは、ショット力を付けていく大切なルーティンとも言えます。

都合のいいイメージで上手く打とうとするのではなく、豊富な練習量によって培われたイメージを持ち、描くことを日ごろからやっている選手は、さらにレベルアップする可能性があると思います。

「練習はいろいろな球を打つことが大切です」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2025年8月12日号より