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ゴルフのカスハラ問題<後編>「前の組が遅い!」コースのせいに…ネットの書き込みパターンも増加

先月、参議院本会議でカスタマーハラスメント(カスハラ)の対策法案(通称:カスハラ対策法)が可決・成立した。具体的な内容は厚労省が今後、指針を示す予定という。「カスハラ」といえば、一般的に飲食店や鉄道でのケースが思い浮かぶが、ゴルフ業界ももちろん無縁ではない。

ILLUST/Koki Hashimoto

>>前編はこちら

地方自治体や企業が続々条例や対策方針を発表

ゴルフ界のカスハラと聞くと、客がキャディやフロントスタッフなどに言いがかりをつけるケースが多いが、前編でも紹介した通り、内容は多岐に渡る。

「最近ではネット上でのカスハラも多いです」と前出の菊地氏。

「たとえば、口コミサイトに事実とは違うような悪い内容を書き込んで評価を下げたり、たまたま遭遇した不運を全部コースのせいにしたりなど。自分たちが2サムで回っていて、前の組が4サムだったら追い付くのも当然だと思うんですが『前の組が遅い!』『スロープレーを放置している!』などとクレームを入れたり書き込みをしたり……。大手の予約サイトの場合、悪質な書き込みについては、削除などに応じてくれるケースもあるんですが、そもそも、その手続きをする人手が足りないコースもあり、大変です。それでなくても、ゴルフ場は人手不足。特に若い人がなかなか集まらないのが現状です。サービス業全般に言えることなのですが、お客対応業務は敬遠される傾向にあり、背景にはこういったカスハラがあります」

上記にもある通り、日本各地でさまざまなカスハラが発生し、企業や地方自治体も対処に苦慮している。しかし、最近では各地方自治体が「カスハラ防止条例」を制定し、施行している。東京都は全国でいち早く、今年の4月から「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」を施行した。「まったく欠陥がない商品を新しい商品に交換するよう就業者に要求する」「就業者に物を投げつける、唾を吐くなどの行為」「就業者に声を荒らげる、にらむ、話しながら物を叩くなどの言動」「就業者を名指しした中傷をSNS等において行う」など具体例を多く挙げながら「何人も、あらゆる場において、カスタマー・ハラスメントを行ってはならない」と規定。事業者に対しては「カスハラの防止に主体的かつ積極的に取り組むとともに、都が実施するカスハラ防止施策に協力するよう努めなければならない」「その事業に関して就業者がカスハラを受けた場合には、速やかに就業者の安全を確保するとともに、当該行為を行った顧客等に対し、その中止の申入れその他の必要かつ適切な措置を講ずるよう努めなければならない」としている。

こうした流れのなか、ゴルフ業界にも変化が。


「コース内に『カスハラは許しません』といったポスターが張られているのを見たことがある人も少なくないでしょう。また、まだ数は多くはないですが、予約するときの約款にカスハラに関する項目が追加されていることも。これは、現場のスタッフにとってもすごくいいことだと思います。カスハラを受けた際『約款にもあります通り……』と説明できますから。カスハラの対応を現場スタッフに丸投げしてしまうコースは良くないですね。『若いスタッフがすぐ辞める』とこぼす経営者もいますが、彼らをきちんと守れる仕組みやマニュアル作りも大切です」(菊地氏)。

ちなみに、業界大手のアコーディア・ゴルフの基本方針は下記の通りで、これは今年の1月8日に策定・公開された。

もしもコースでカスハラしている客を目撃してしまったら……。良かれと思って、その場で「ちょっと、あなた」と割り込むと、ことが大きくなってしまう危険性も。「すぐにほかのスタッフに声をかけ、『あのスタッフが困っているようだ』と教えるのがいいと思います」(菊地氏)とのことだ。

アコーディア・ゴルフのカスタマーハラスメント対応基本方針(一部抜粋)
従業員は日々お客様からのご意見やご指摘に真摯に耳を傾け、誠実に対応することを心がけ、サービス向上に努めております。一方で、カスタマーハラスメントに対しては、従業員の人権や就業環境を守るべく、組織として毅然とした対応を行ってまいります。
<適用範囲>
●お客様または取引先など第三者からの優越的な立場を利用した言動であること
●不法行為に該当する行為や社会通念上不当な要求行為であること
●従業員の就業環境が害される恐れがあること
<対象となる主な行為例>
●暴言、侮辱、差別発言、誹謗中傷など
●暴行、器物損壊、その他粗暴な言動など
●業務に支障を及ぼす行為(長時間拘束、クレームの継続など)
●業務スペースへの立ち入り
●従業員を欺く行為
●会社・従業員の信用を棄損させる行為
●過剰な謝罪要求や従業員への処罰の要求
●わいせつな行為や卑わいな言動などセクシャルハラスメント行為
●プライバシーの侵害
●SNSやインターネット上での誹謗中傷 など

コースのスタッフだけじゃない!
ゴルフを“教える側”もカスハラを受けている

●ほかの生徒のレッスンができない
神奈川の名門倶楽部の会員さんでしたが、私のレッスンに来ているのに、ほかのプロやYouTubeなどで仕入れたうんちくを延々と語るんです。少人数のグループレッスンなこともあり、ほかの生徒さんのレッスン妨害にもなっていました。(50代インストラクター)

●「教え方が古い」などと周囲に吹聴
さまざまなプロのレッスンをハシゴしていている人がいて、「あのプロはこう言ってた」「あの教え方は古い」などと、陰口のようにほかのレッスン生に言うため、グループ全体の雰囲気が悪くなってしまい、困りました。結局、聞かされていたほうのレッスン生が嫌になったようでやめてしまいました。(40代インストラクター)

●SNSで否定的なコメントをつける
レッスンのPRもかねてインスタグラムをやっていますが、レッスンに否定的な内容やファッションや容姿についてまでコメントを残すお客さんがいます。それでいて私の誕生日には派手なプレゼントを持ってきたり……。レッスン中はずっと動画を撮っていますし、最近、怖くなっています。(30代インストラクター)

●無料の貸しクラブを破損する
インドアスタジオを経営。無料で使える貸しクラブを置いているのですが、破損が多く修理にお金がかかります。「あの人の仕業かな」という人はいるのですが証拠がない。防犯カメラを付けたいのですが反発がありそうで怖いです。(50代男性インストラクター)

週刊ゴルフダイジェスト2025年8月5日号より