Myゴルフダイジェスト

会員登録
  • ホーム
  • 月刊GD
  • 【イ・ボミのスマイル日和】Vol.7「レインウェアを乾燥機に、レストランではキャップを…韓国との違いに驚きました」

【イ・ボミのスマイル日和】Vol.7「レインウェアを乾燥機に、レストランではキャップを…韓国との違いに驚きました」

2年連続賞金女王など輝かしい実績を残し、2023年に惜しまれつつも日本ツアーを引退したイ・ボミ。これまであまり語られてこなかった生い立ちや現役時代の秘話など、あらいざらい語り尽くす!

TEXT/Kim Myung Wook PHOTO/Takanori Miki

イ・ボミ 1988年生まれ。15、16年賞金女王。日本ツアー21勝のレジェンド

>>前回のお話はこちら

  • 2年連続賞金女王など輝かしい実績を残し、2023年に惜しまれつつも日本ツアーを引退したイ・ボミ。これまであまり語られてこなかった生い立ちや現役時代の秘話など、あらいざらい語り尽くす! TEXT/Kim Myung Wook PHOTO/Takanori Miki イ・ボミ 1988年生まれ。15、16年賞金女王。日本ツアー21勝のレジェンド >>前回……

日本ツアーに適応するのに必死でした

日本ツアーに初めて参戦した2011年は、韓国と両ツアーを行き来していたことは先月お話ししましたが、日本と韓国を行ったり来たりの生活はとてもハードでした。そんな中でも、日本のコースを覚えることを目標に頑張っていました。当時は試合が終わった翌日の月曜日にはコースに入ってラウンドしていましたし、翌年からは完全にツアーに適応するとの気持ちでしたから、成績よりもコースを覚えることが優先。とにかく毎週必死でした。

その甲斐があったのか、1年目から賞金ランキング40位でなんとかシードを獲得できました。韓国のメインスポンサーとの契約も11年が最後の年だったので、12年からは日本ツアー一本に絞ることができました。1年目で驚いたのは、日本ツアーの会場にはクラブを細かく調整できるサービスカー(ツアーバン)がたくさんいること。この時に初めてシャフトやグリップを替えたりする楽しみを覚えました。ただ、選手と仲良くなるとか、そんな余裕はまったくなかったですね。 


試合会場に行くと練習をしてコースを覚えての繰り返し。それに日本のゴルフ場はドライバーからアプローチ、パターの練習がすべてそこで完結できることもすごく新鮮で楽しかった。韓国ツアーはゴルフ場に練習場があるところもありますが、日本ほど多くはなくて、周辺にある練習場を使って会場入りすることもあるんですよ。

日本語はほぼ話せなかったのですが、(有村)智恵さんは気にかけてくれていましたし、高校時代にナショナルチームで試合をしたことがあった(藤本)麻子は私のことを覚えていてくれて、たくさん話しかけてくれました。

韓国と日本ではコースのスタイルも違っていました。どちらかといえば韓国はフェアウェイが広く、グリーンも大きい。日本は比較的フェアウェイが狭く、両サイドには木がたくさんあるのでショットの際はすごくプレッシャーを感じていましたね。

日本人選手の第一印象は、正確なショットを打つ選手が多く、韓国人選手とはまた違う球質を持っているなということ。韓国人選手は弾道がそれほど高くはなく、スライスやフックとボールを曲げて攻めるのがスタンダードですが、日本人選手は高い弾道で真っすぐ攻めていく印象がありましたし、ショートゲームがとてもうまい。特にグリーン周りからしっかり寄せていく感覚の良さは日本特有のものだと感じました。

プレースタイル以外でも日本と韓国の違いを感じました。例えば、試合が悪天候で一時中断した時、選手はクラブハウスに一旦戻ります。選手たちはレインウェアを着ているからもちろん濡れているのですが、韓国の場合は雨水を拭いてレインウェアのまま試合開始を待つのが通常でした。でも日本ツアーでは、クラブハウスに戻ってくると選手全員がレインウェアを脱いで乾燥機の中に入れるんです。日本での1年目はそんなルールがあるとは知らなかったので、周囲から言われて初めて気づきました。

もうひとつ、韓国ツアーではクラブハウスのレストランでキャップを脱がなくてもよかったのですが、日本に来てからは脱ぐことが大切なマナーと教わりました。韓国人選手がレストランでキャップを脱がないのは、髪形が崩れているのを見られるのが恥ずかしいからというのがほとんど。でも、今では韓国でキャップを脱がない人がいたら、あれ? と思うくらいです。あとはファンの応援マナーを見ても、選手への気遣いや配慮が素晴らしいと感じていました。

韓国には「ローマに行けばローマ法に従え」ということわざがあります。日本では「郷に入っては郷に従え」と言うそうですが、2011年は日本の生活に適応していくための学びや準備にも忙しい1年でした。

月刊ゴルフダイジェスト2025年7月号より