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【ゴルフせんとや生まれけむ】春風亭一蔵<後編>「娘とのラウンド 夢が実現しました」

ゴルフをこよなく愛する著名人に、ゴルフとの出合いや現在のゴルフライフについて語ってもらうリレー連載「ゴルフせんとや生まれけむ」。今回の語り手は、前回に引き続き落語家の春風亭一蔵氏。

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  • ゴルフをこよなく愛する著名人に、ゴルフとの出合いや現在のゴルフライフについて語ってもらうリレー連載「ゴルフせんとや生まれけむ」。今回の語り手は、春風亭一蔵氏。 僕ら噺家は修業期間が結構厳しいんです。見習い、前座、二ツ目、真打と進んでいくなかで、見習い、前座の間は基本的に娯楽はNG。その間は師匠にくっついて、噺家としての作法を学びます。ですから、僕もゴルフはずっとやりたかったんですが……

噺家のゴルフを一言で言うと、とにかくうるさい(笑)。人が打つ直前までしゃべっているのが普通ですし、打った後もツッコミを忘れません。ティーショットでトップしてコロコロ転がっていく球を打つとすかさず「いよっ、銀座の花屋!」(=ランで稼いでいる)とか、アプローチで失敗すると「あーあ、噺家は寄せ(=寄席)が大事なのに」とかつまらないシャレばっかり。ストイックにゴルフに取り組んでいらっしゃる方は、噺家と行くのはあまりオススメしませんね(笑)。

ゴルフ好きな人、特に男性には超ウケる小話を1つご紹介しましょう。あるご夫婦がツーサムで回っていてパー5に来た時、奥さんのティーショットがカート道で跳ねて結構前まで距離を稼いだんですよ。で、第2打を打ったら今度はたまたま岩か何かに当たってまた跳ねてなんと2オンしちゃったんです。一方のご主人はなんとか5オン。グリーンに上がると、奥さんが「あなた、見て見て。ロングで2オンよ。これ入ったらイーグル。もう死んでもいいわ」と。喜ぶ奥さんにご主人が一言「じゃあOKです」。誰が考えたのか知らない話ですけど面白いですよね。僕も大好きです、これ。


前回、昔の師匠たちはゴルフをよくやっていたけど、今の若手の噺家はあんまりやらなくなったという話をしました。昭和の大スターだった古今亭志ん朝師匠も大のゴルフ好きでした。志ん朝師匠とお近づきになるにはゴルフが一番と、当時の若手がこぞってゴルフを始めたこともあって、師匠がコンペを主催されていたそうです。

その頃、師匠は神楽坂の矢来町に住んでいたことから当初は矢来コンペという名前だったのですが、志ん朝師匠が亡くなった後は、寄席の興行が1日から10日、11日から20日、21日から30日にあって31日が余るので、1日余ることからその日のことを「余一」と呼んでいることにちなんで「余一コンペ」と変えて今でも毎回その日にやっています。僕もできる限り参加するようにしているのですが、いかんせん若手の参加者が少ないのが残念で仕方がありません。

僕個人では最近嬉しいことがあるんです。一昨年、大学を卒業して社会人になった長女がゴルフを始めたんです。会社の社長さんが大のゴルフ好きらしく、新入社員にゴルフクラブとレッスン6時間分をプレゼントしてくれたんだそう。いや、僕が入社したいくらいのうらやましい会社です(笑)。前々から彼女がゴルフをやるようになったらいいなと思っていたので、今、娘と2人で回るのが誰とプレーするよりも気楽で楽しい。

彼女のプレーを見ていると、心が折れた瞬間とかプレー中の彼女の気持ちが手に取るようにわかりますよ。それに彼女は車の運転もできるから、彼女と一緒の時はランチの時もプレーの後も心置きなくお酒が飲めます。初心者だからスコア的にはまだまだ僕の敵ではありません(笑)。でも、それが悔しかったのか最近スクールに通い始めたんです。多分めきめき上達してあっという間に抜かれちゃうでしょうね。それはそれで僕は嬉しいんですよ。

春風亭一蔵

1981年東京生まれ。高校卒業後トラック運転手などを経て2007年、春風亭一朝に入門。12年二ツ目、22年に真打に昇進。ベストスコアは95

週刊ゴルフダイジェスト2025年4月1日号より