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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.848「練習中、1球ごと真剣に考えて打てていますか?」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M. Matsumoto

前回のお話はこちら


プロは打つ前に何を考えているのでしょうか。ライを確認してさまざまな状況を判断、球筋をイメージして後は振るだけだといわれますが、スウィングのことだけ考えていてはダメなのでしょうか。(匿名希望・39歳・歴5年)


ボールを前にしてプレーヤーは何を考えているか?

改めて考えるとわたし自身も正直わかりません。

ただ、ボールのライの状態を確認して、ターゲット地点の地形、そこまでの距離や風向、風力などさまざまな条件から攻略法を考え、どんな球筋で攻めていくかをイメージするのは確かです。

それを考えている状態かどうかというとどうでしょうか?

考えているというよりは、自分のボールと目標方向の風景が目に入った瞬間、反射的に頭の中にイメージが湧くといったほうが的確な気がします。

いろいろ考えているうちに答えが導き出されるというのではなくて、いくつか材料がそろったところでポンと回答が出る感じでしょうか。

ですから、試合中も全ショット思案を重ねて打っているわけではなく、瞬発的に攻略法が浮かび選択していることが多いです。


もちろん、今まで出合ったことのない特殊なシチュエーションなどは、さすがに時間をかけるケースもありますが、すべては経験です。

大事なことは、考えることと悩むことは別だということ。それを知っておいてほしいです。

「悩むな、考えろ」

これまで何度もお話ししてきましたよね。

ゴルフの上達は、たとえ真面目に日々の練習を一生懸命休まずに続けていたとしても、右肩上がりの一直線で進んでいくものではありません。

超一流選手でも大なり小なりスランプがあるように、スキルというのは徐々に向上するものです。

技術は上昇期と停滞期を繰り返しながら、らせん状に向上していくような気がします。

停滞期にぶつかると落胆したり怒ったりヤケになったり、人によってはやめてしまうこともあるでしょう。

思うような成果が出せず原因を探しても分からない。

考えれば考えるほど練習は苦痛の連続となって悩みや迷いが深くなり、努力を続けることの不信につながれば自暴自棄にもなりかねません。

わたしはこれまで若い選手がスランプに陥るのを何度も見てきましたが、その要因は具体的な目標がない「ないものねだり」が多いと思います。

何を求めるのかビジョンがないまま、ただ悩み迷っている。

それでは、どのような練習が有効なのかもアドバイスできません。

まずは目指すところを明確に設定することです。

たとえば、「精度の高いドローボールを手に入れる」という目標を立てたとしましょう。

いままでは5ヤードの曲がり幅だったのを2~3ヤード以内の幅で安定して打てるようになるまで練習するとか。

練習では完璧を求めても、本番ではある程度ミスを許容しないとミスで立ち直れなくなる恐れもあるので気持ちを切り替えてほしいです。

やるべきことをやり目標を達成するためには、悩んでいる時間はありません。

私はいつも思うんです。

「一球入魂」は練習でこそ必要だと。

考えるのは本番でなく練習中です。

練習がしんどくないとすれば、それは頭を使っていないことだと思います。

練習でのショット成功率を限りなく100%に近づけることが目標の達成ですが、本番でのミスは付きもの。

トーナメントで失敗したからといって悩んでも意味はありません。

ミスをしても素早く切り替えるメンタルも求められる。

目指すところがはっきりとしていればこそ諦めずに練習を続ける。

大切なのは「考える練習」ですよ。

「つらいと思えるほど練習を重ねている選手は、きっと本番を楽しめるはずです」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2025年2月4日号より

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