【イザワの法則】Vol.49 プロにとっての“いいコース”は「予測の範囲を超えてくる」こと
人によって「いいコース」の基準は変わるが、プロの目線で見ればその絶対的基準はあるのだろうか。
プロでも「面白い」と思うコースは、どんなコースなのだろうか?
TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura PHOTO/Hiroyuki Okazawa THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)
いいコースの基準は
ゴルファーの数だけあると言っていい
今でも、メンバーの同伴や紹介がないと回れないコースはありますが、大抵のコースはビジターだけでプレーできるのが今の時代です。ただ、そうなると逆に、どのコースに行けばいいのか悩んでしまうという人も多いんじゃないでしょうか。「〇〇カントリーって、いいコースですか?」なんて、質問されることもときどきありますが、いいコースの定義というのはゴルファーによって変わりますので、これはなかなか答えるのが難しいところではあります。
たとえば、回数を多くプレーしたいという人であれば、自宅から近くてプレーフィーの安いコースが「いいコース」かもしれませんし、プロトーナメントが開催されるような、いわゆる「名門コース」で回りたいという人であれば、それが「いいコース」の基準になるわけです。ほかにも、コースのメンテナンスがいいとか、景色が素晴らしいとか、食事が美味しいなんていうのも、人によってはいいコースの条件かもしれません。
それから、コースの「難易度」がいいコースの基準という人もいるでしょう。その中には、やさしくていいスコアが出るほうがいい人と、逆に難しくて挑戦しがいがあるほうがいい人、その中間の人がいるんだと思います。
どうプレーすべきか考えさせられるのが
「難しい」コース
では、私たちプロにとって「いいコース」はどんなコースかと考えたときに、ひと言で言い表すとするなら、「予測の範囲を超えてくるコース」になるのかもしれません。たとえば、「このコースは4日間回ったら20アンダーくらい出る」という予測に対して、実際にやってみたら優勝スコアが「10アンダー」だったとすると、何か「不確定要素」があることになります。
もちろん、天候が一番大きいですが、いわゆる「設計家のワナ」とか、グリーンキーパーのメンテナンス技術による場合もあって、そういう、一筋縄ではいかない要素があると、プロ目線で見たときに「面白い」となるわけです。
海外のメジャーが行われるコースなんかは、基本的にはどのコースも難しいですが、難しさの種類は違うような気がします。たとえば、マスターズと全米オープンを比べると、求められるプレーのスタイルが違うわけです。オーガスタ(マスターズが開催される「オーガスタナショナルGC」)の場合は、優勝スコアがほぼ必ずアンダーパーになりますから、バーディを取るプレーが求められますが、これだけクラブとボールがよくなって、PGAツアーでほとんどの人が300ヤードヒッターになっているにもかかわらず、実際の優勝スコアは昔とあまり変わりません。これは、コースが改修で長くなったことよりも、元々の設計が優れているんだと思います。12番のパー3なんかは、その代表例です。
これが、全米オープンの場合、優勝は大抵イーブンパー近辺になりますから、展開が「我慢比べ」になって、オーガスタとはまったく別のゴルフになります。どちらにも対応できないとメジャーチャンプにはなれない。ゴルフというのは実に奥が深いものです。
「グリーンが大きいと
安全に乗せるのは簡単でも
2パットで上がるのが難しくなる」
自分にとっての“いいコース”を見つけよう
コース(あるいはホール)の難易度によって、ティーショットを打ち分けられると攻略はやさしくなる。狙い打ちする場合は狭めのスタンスでトップはコンパクトに、飛距離を出す場合は広めスタンスで大きく振る。どちらもフィニッシュは最後まで回る
伊澤利光
1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中
月刊ゴルフダイジェスト2024年12月号より