【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.837「ゴルフの基本? “エチケット&マナー”ですよ」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
大学でゴルフを始め、部活で打ちまくる叩き上げでやってきたためか、基本を教わったようで備わってないような気がしています。そこで、岡本さんに改めて「全ゴルファーにとっての基本とは何か」をお聞きしたいです。(匿名希望・48歳・HC4)
大学のゴルフ部でみっちり練習を積んできたキャリアがあるのでシングルハンディの境地にも達して、
今は競技ゴルフにもチャレンジしている。
でも基本が何かについて、いま改めて考え始めたということなのでしょうね。
ゴルフの楽しみ方は人それぞれだと思います。体格、年齢、性別、職業が違えば経験や技術レベルも違い、100人いたら100通りのスウィングがあるとも言われるように、極端に言ってしまえばゴルフの基本も一様ではないと言えなくもありません。
スウィングの基本について、どんなゴルファーにも共通する鉄則のようなものを答えとして期待しているのかもしれませんが、申し訳ありませんがそういうハウツー的な技術的基本と言われても、わたしにはすぐに頭に浮かんではきません。
基本を教えてくれなければいつまでたっても上手くなれないと言われそうですが、ある程度ゴルフの経験があるゴルファーに対して、全ゴルファーにとっての基本を簡単に言うことは難しくもあります。
いま現在、スウィングやショットの症状や傾向にいかなる課題を抱え、どのような練習をしているのかという現況を詳しく知ることができれば、その問題点についてある程度参考になるアドバイスぐらいはしてあげることができるかもしれませんが……。
この質問に私なりに回答するのでしたら「マナーとエチケットを守る」とお答えいたします。
老若男女、上手い人やそうでない人、社長さんや会社員、どんなゴルファーにも共通しているのが、ルールブック冒頭に掲げられていたこの項目です。
思うのですが、このマナーとエチケットを守るという原則は、ゴルフにとどまらず社会生活一般、もっと言えば人生全般に通じるものなのではないでしょうか。
目の前にいるパートナーやほかのプレーヤーに対してはもちろん、コースやクラブハウス内に居合わせた人をはじめ、ゴルフ場のスタッフを含め、どんな相手にも迷惑をかけず、不快な思いをさせないように振る舞うこと。わがままに振る舞えば、自分自身にも害をなすことになる。
人生の基本ですよね。わたしは今までを振り返って、ゴルフというスポーツと職業を通して、そうした「基本」を学び、身に付けてきたように思うのです。
もちろん、人との対し方や礼儀だけでなく、インテンショナルの打ち方やクラブの扱い方など、ゴルフのさまざまな場面での細かいテクニックは、上手い人のやり方を見て学んできました。
いわゆる“見て盗め”ですね。
教えてくれないとわからないと言う人もいますが、教えられてもわからないことはたくさんある、そう思うのです。
教わる姿勢にもよりますが、教わる側が理解するには結局、教わるべき内容を自分でつかむほかありません。
そこには、教える側も手伝ってあげられない部分があるということです。
今の時代、ゴルフに関する情報もネットで簡単に入手できます。
その多種多様な情報のなかから、自分に合った有益なものを選んで取り入れることがレベルアップの近道なのでしょう。
実際の動きを見て盗む“眼”。
その眼力を鍛えなさいとアドバイスしたいと思います。
叩き上げというのはあまり耳にしなくなった言葉ですが、よく考えたらわたしも叩き上げです。
もしアドバイスをもらっても、違うと思ったら聞きませんよね(笑)。
自分のやってきたことに自負があるから、それが叩き上げとも言えるでしょう。
言い方を換えれば、自分なりの基本を持っているということではないかしら。
叩き上げは決して悪いことではなく、たぶんほとんどのプロゴルファーは叩き上げでいまの位置へ上って来るのだと、私は思っています。
要はたくさん練習をしているということです(笑)。
「胸を張って自分のことを“叩き上げ”と言えるくらい練習しましたか?」(PHOTO by Ayako Okamoto)
週刊ゴルフダイジェスト2024年11月12日号より