【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.200「運を呼び込む方法」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Masaaki Nishimoto
スポーツではよく、「運も実力のうち」ということが言われます。ゴルフでも、めっちゃいい球を打ってもディボットに入っててボギーになったり、そやかと思うとOBやと思った球がコーンと跳ね返ってきてバーディが獲れたり、そんな運、不運は、いっぱいあります。
うちの師匠の高松志門さんは、そんな運・不運の分かれ道を説明するんに、「クラブが抜けてたら木に当たってもセーフになる」と言うとりました。
要するに、林のなかに行っても、クラブを確信をもって振ってキュンと抜けたら、ボールも木の間を抜けるもんやということです。「そういうふうに思っとったら間違いないんとちゃうか」とも言うてましたね。
確かに、フェアウェイからのショットでも、「あ、詰まった!」と思ったボールは、結果的に変なところに行くことが多いもんです。そういう意味では、窮地に陥ったときでも、クラブを確信をもって振れるということが、「運も実力のうち」いう格言の裏付けになるような気もします。
運を呼び込むために、トイレ掃除などの善行をするという人がいます。もちろん、自分を変えたいためにやろうと思ったとか、本当に目についたらゴミ拾うようになったとか、普通にそれができるようになればいいんですよ。
でも、「成績上げるために今日はもうトイレをめっちゃ磨くで」とか、「スコアようなるように道の掃除するんやと」とか、そういうモチベーションでやったかて、そんなんで成績がよくなるわけないですやん。それで、道の掃除をし終わって、直後にその道にブワッと唾を吐くという笑い話みたいなことして、そんなもん何の意味があんねん、いう話です。
自分に集中力がないとか持続力がないとか、寒いときにトレーニングをするの嫌やとか、だからそのために何をするかということは、自分が1番ようわかっとることです。
もちろん、道を歩いてて目についたらゴミを拾うことは全然いい。それを、何か見返りを目論んでやることがあかんのです。そんなことするなら、うちの師匠が言うたように、林のなかから確信をもってクラブが抜けるショットを打つ練習をしたほうが、よっぽど運を招くことに通じると思います。
「見返りを目論んでやっても、意味も結果もありません」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2024年11月5日号より