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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.182「教える側と教わる側の心得」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Shinji Osawa

前回のお話はこちら

今年のオフにプロコーチの増田哲仁さんからアドバイスをもらい、僕のゴルフに少し変化が出てきまして、イイ感じになりつつあります。

これまでに、いろんなレッスンの方と話をしましたけど、増田さんは今までにないタイプでして。「知るは言わず、言うは知らず」。まあ、そんな感じの人ですわ。

僕は、ゆるゆるグリップで今までやってきました。ゆるゆるでドライバーで150ヤードをポーンと打ったり、220ヤードを転がしたり、そういうんは得意です。ところが、ゆるゆるで270ヤード打てと言われたら、飛ばそう思うから手に力が入るんです。


ゆるいまま速く振るというんがなかなかできない。そのうち調子悪くなって、またゆるゆるに戻し、また飛ばそうとして力が入る。今日まで、こういうことを何千回も繰り返しておるんです。

でも増田さんと話しをしていると、ゆるいまんまで飛ばす方法をちゃんと言ってくれます。

たとえば、僕なんかはアマチュアの人に教えるんに、「グリップがゆるかったらヘッドが仕事します」とかは言えますが、それ止まり。それではダメなんですわ。アマチュアの人がドライバーをゆるゆるにして、ヘッドが仕事するように動かして飛距離を出させなあきません。

そのへんのことを増田さんは、「ゆるゆるでドライバーは構えられる。でもクラブを上げていくとなったら、あ、また力入ったってなる。それじゃ振れません。そしたら、ちょっと体を動かしてみようかってなるわけです」ということをきちんと言える人です。

でも、彼の言うことを理解するんに、たとえば「頭の位置を止めて」とか、「体を軸として下半身を踏ん張って捻れ」とか、そういう聞く側の頭のなかの知識が邪魔するんです。それを取り去ることも必要です。

だからゴルフって、教える側が10倍、100倍のゴルフに関する頭脳を持っていないとなかなか教えられない。そして、習うほうもそれについていこうと必死にならなんとね。お互いのキャッチボールですから。

この人に付いていってゴルフが上手なりたい、と思うんであれば、とことんいかないと。間に合わせは所詮間に合わせですから。そりゃあ間に合いませんわ。

「教える側の知識と習うほうの必死さ。両方必要です」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2024年6月25日号より